「うちに秘めた思い、、、?」
「だって、文章を書くと言う事は、そう言う事でしょう?何か伝えたい思いがあるから、書くんじゃないかな?」
そう言われると、自分にそんな大層な思いがあるのかどうか、私はわからなくなってしまう。
私が黙って悩んでいると、田中さんがおかしそうに笑って言った。
「そんな、真剣に悩まなくても大丈夫だよ。書き始めれば、後は勝手に話しが進んでいく」
「そうですか?そんな事ありますか?」
「書き始めるから、どんどんアイディアが出てくるんだよ。まずは、初めの一行を書いてごらん?」
「初めの一行かぁ、、、。わかりました!書いてみます!」
私は何となく、アドバイスをもらえた気がして、田中さんに話して良かったと思った。
「田中さん、もしかして作家さんなんですか?」
私が聞くと、田中さんは少し笑って「近からず遠からずってとこかな」と言った。
田中さんは、ゆっくりと氷を鳴らしながらお酒を飲んでいた。
その姿が様になっていて、私にはとてもかっこよく見えた。田中さんは雰囲気があって、若い頃にはだいぶモテたんじゃないんだろうかと思った。
「田中さんは、若い頃からバイクに乗って出かけていたんですか?」
「そうだね。丁度七奈さんくらいの時に、自分でアルバイトをしてお金を貯めて、バイクを買ってね。日本一周した」
「日本一周ですか!?凄い!」
「別に凄くはない。東京に生まれて、東京に育って、日本にいても行った事のない場所が死ぬほどあるだろう?そこへ、行って見たかった。
自分が産まれた国が、どんな国だか知りたかったんだ」
私はそんな事を一度も思った事はなかったので、田中さんの行動力に驚いた。
「で?どうだったんですか?日本一周した感想は」
「素晴らしかった。日本を出なくても、日本には素晴らしい自然や、自社仏閣、あらゆる物に神を宿し、大切にする風習があったし、困った事があればすぐに手を差し伸べてくれる、余裕がある人で溢れていた。この国に産まれて自分はラッキーだったと、心の底から思えた」
「若い田中さんには、自分の住んでいる国がそんなに素晴らしい世界に映ったんですね」
「そうだね、、、でもそうしたら次は、他の世界にも興味が出てきた、、、」
「他の世界?、、、海外って事ですか?」
田中さんが私を見てゆっくりと頷いた。
「他の国の人は一体どんな生活をして、どんな暮らしをしているのか、知りたくて仕方がなくなった。同じ地球上に生活していて、どんな世界があるかどんどん興味が湧いてね、いてもたってもいられなくなった。僕は探究心がとにかく強かった」
「それで海外へ行ったんですか?」
「行った。英語もろくに話せなかったけれど、行けばどうにかなるだろうという気持ちで、何も考えず欲望のまま行ったよ」
「凄いですね、、、その行動力、、、私には出来そうもないです。行って見たいと思っても、色々考えちゃって、絶対に私は行けないと思います」
私と同じくらいの年齢の田中さんはバイタリティに溢れたエネルギッシュな青年だったんだ。
「若いという事は、それだけで素晴らしい事でね、後先考えずに何でも出来るんだよ。失敗してもたかが知れている、何も考えずに突っ走る事が出来るのは人生の時間の中でも一瞬なんだ」
「一瞬、、、」
「だから、七奈さんもあまり頭で考えずに心のままに動いた方がいい。自分の心が動く方を選択していくんだ」
自分の心がより動く方へ、、、私は自分の胸に手を当ててみた。社会の型にハマる事や、将来の安定ばかりを考えて就活をしていたが、ずっと私はそんな自分に疑問を感じていた。
ただ安定した仕事に就く事が、私の生きたい人生ではないのかもしれない。
「田中さん!今度私もバイクに乗せてくれませんか?田中さんの話しを聞いていたら、なんだか急に乗ってみたくなりました」
私のお願いに、田中さんは心よく承諾してくれた。
「いいよ。何でも経験してみる事が大事だよ」
田中さんが私に向かって微笑んだ。その笑顔を見た時に、私はとても懐かしい暖かい気持ちになった。そして不思議な事を考えたが、ただの勘違いだと思いなおした。
「だって、文章を書くと言う事は、そう言う事でしょう?何か伝えたい思いがあるから、書くんじゃないかな?」
そう言われると、自分にそんな大層な思いがあるのかどうか、私はわからなくなってしまう。
私が黙って悩んでいると、田中さんがおかしそうに笑って言った。
「そんな、真剣に悩まなくても大丈夫だよ。書き始めれば、後は勝手に話しが進んでいく」
「そうですか?そんな事ありますか?」
「書き始めるから、どんどんアイディアが出てくるんだよ。まずは、初めの一行を書いてごらん?」
「初めの一行かぁ、、、。わかりました!書いてみます!」
私は何となく、アドバイスをもらえた気がして、田中さんに話して良かったと思った。
「田中さん、もしかして作家さんなんですか?」
私が聞くと、田中さんは少し笑って「近からず遠からずってとこかな」と言った。
田中さんは、ゆっくりと氷を鳴らしながらお酒を飲んでいた。
その姿が様になっていて、私にはとてもかっこよく見えた。田中さんは雰囲気があって、若い頃にはだいぶモテたんじゃないんだろうかと思った。
「田中さんは、若い頃からバイクに乗って出かけていたんですか?」
「そうだね。丁度七奈さんくらいの時に、自分でアルバイトをしてお金を貯めて、バイクを買ってね。日本一周した」
「日本一周ですか!?凄い!」
「別に凄くはない。東京に生まれて、東京に育って、日本にいても行った事のない場所が死ぬほどあるだろう?そこへ、行って見たかった。
自分が産まれた国が、どんな国だか知りたかったんだ」
私はそんな事を一度も思った事はなかったので、田中さんの行動力に驚いた。
「で?どうだったんですか?日本一周した感想は」
「素晴らしかった。日本を出なくても、日本には素晴らしい自然や、自社仏閣、あらゆる物に神を宿し、大切にする風習があったし、困った事があればすぐに手を差し伸べてくれる、余裕がある人で溢れていた。この国に産まれて自分はラッキーだったと、心の底から思えた」
「若い田中さんには、自分の住んでいる国がそんなに素晴らしい世界に映ったんですね」
「そうだね、、、でもそうしたら次は、他の世界にも興味が出てきた、、、」
「他の世界?、、、海外って事ですか?」
田中さんが私を見てゆっくりと頷いた。
「他の国の人は一体どんな生活をして、どんな暮らしをしているのか、知りたくて仕方がなくなった。同じ地球上に生活していて、どんな世界があるかどんどん興味が湧いてね、いてもたってもいられなくなった。僕は探究心がとにかく強かった」
「それで海外へ行ったんですか?」
「行った。英語もろくに話せなかったけれど、行けばどうにかなるだろうという気持ちで、何も考えず欲望のまま行ったよ」
「凄いですね、、、その行動力、、、私には出来そうもないです。行って見たいと思っても、色々考えちゃって、絶対に私は行けないと思います」
私と同じくらいの年齢の田中さんはバイタリティに溢れたエネルギッシュな青年だったんだ。
「若いという事は、それだけで素晴らしい事でね、後先考えずに何でも出来るんだよ。失敗してもたかが知れている、何も考えずに突っ走る事が出来るのは人生の時間の中でも一瞬なんだ」
「一瞬、、、」
「だから、七奈さんもあまり頭で考えずに心のままに動いた方がいい。自分の心が動く方を選択していくんだ」
自分の心がより動く方へ、、、私は自分の胸に手を当ててみた。社会の型にハマる事や、将来の安定ばかりを考えて就活をしていたが、ずっと私はそんな自分に疑問を感じていた。
ただ安定した仕事に就く事が、私の生きたい人生ではないのかもしれない。
「田中さん!今度私もバイクに乗せてくれませんか?田中さんの話しを聞いていたら、なんだか急に乗ってみたくなりました」
私のお願いに、田中さんは心よく承諾してくれた。
「いいよ。何でも経験してみる事が大事だよ」
田中さんが私に向かって微笑んだ。その笑顔を見た時に、私はとても懐かしい暖かい気持ちになった。そして不思議な事を考えたが、ただの勘違いだと思いなおした。



