それからも、そのワイルドなおじさんは延泊していた。キャンプ場としても、満場ではないから断る理由はなかった。それから私は、そのおじさんと会話をするようになっていた。
そのおじさんは自分の事を「田中」とありふれた日本の苗字を名乗った。
そのおじさんは、私を『七奈さん』と呼び、私は『田中さん』と呼んでいた。
田中さんはいつも落ち着いていて、口数は多くなかったが、物知りで色々な事に詳しかった。特にアウトドアや、サバイバル技術に長けていて、手先が物凄く器用だった。
火打石からの着火の方法や、水をろ過する方法などを私にも教えてくれて、まるで先生のようだった。
その日も、一人で夜の見回りに出た時に田中さんがランタンを灯し、お酒を飲んでいたので声をかけた。
「田中さん!明日もまだキャンプ場にいますか?」
私は最近田中さんに延泊をするかどうかを聞くのが日課になっていた。
田中さんは、ゆっくりお酒を飲みながら私に返事をした。
「いるよ」 そう一言告げると、私用の椅子を出してくれた。
「田中さん、帰らなくて大丈夫なんですか?仕事とか家族とか待っていないんですか?」
私が聞くと、田中さんはタンブラーに入れた氷を少しならしながら、私に静かに言った。
「仕事は長い休暇中なんだ、家族は遠くに暮らしていて、一人で住んでいるから帰る理由がないんだよ。七奈さん、アイスティー飲む?」
田中さんは、そういってコップに氷を入れてアイスティーを作ってくれた。
「田中さんは、何の仕事をしてるんですか?冒険家?違う?バイク屋?」
私は絶対にサラリーマンではないと思って聞いてみた。
「僕の場合はね、仕事と言うか、それが生活みたいなものだから、仕事と言っていいのかわからないんだけどね」
「生活、、、趣味みたいなものですか?」
私が聞くと田中さんが首を振る。田中さんはとにかくミステリアスで不思議な雰囲気を持っている。けれど何故だか一緒にいると落ち着けて安心出来る、だから私は暇を見つけては、田中さんに会いにきていた。
「趣味と言うか、人生というかね?」
「全然わからないですよ。田中さんは謎過ぎるなぁ」
「七奈さんは?何かやりたい事があるんですか?」
そう聞かれて戸惑った。私は今、物語が書きたいと思っているが、具体的に何を書こうか悩んでいた。何となくイメージはあるが、それだけで書けるのかどうかわからなくて、怖くて書き始める事が出来ないでいた。
「私、、、物語を書きたいと思ってるんです。けど、ちゃんと最後まで書ききる事が出来るか不安で、まだ何も書けていないんですよ」
田中さんは、私の話しを聞いて意外そうな顔をしたが、少し微笑んで頷いた。
「そう、、、。七奈さんは、自分のうちに秘めた思いを伝える人になりたいんだね」
そのおじさんは自分の事を「田中」とありふれた日本の苗字を名乗った。
そのおじさんは、私を『七奈さん』と呼び、私は『田中さん』と呼んでいた。
田中さんはいつも落ち着いていて、口数は多くなかったが、物知りで色々な事に詳しかった。特にアウトドアや、サバイバル技術に長けていて、手先が物凄く器用だった。
火打石からの着火の方法や、水をろ過する方法などを私にも教えてくれて、まるで先生のようだった。
その日も、一人で夜の見回りに出た時に田中さんがランタンを灯し、お酒を飲んでいたので声をかけた。
「田中さん!明日もまだキャンプ場にいますか?」
私は最近田中さんに延泊をするかどうかを聞くのが日課になっていた。
田中さんは、ゆっくりお酒を飲みながら私に返事をした。
「いるよ」 そう一言告げると、私用の椅子を出してくれた。
「田中さん、帰らなくて大丈夫なんですか?仕事とか家族とか待っていないんですか?」
私が聞くと、田中さんはタンブラーに入れた氷を少しならしながら、私に静かに言った。
「仕事は長い休暇中なんだ、家族は遠くに暮らしていて、一人で住んでいるから帰る理由がないんだよ。七奈さん、アイスティー飲む?」
田中さんは、そういってコップに氷を入れてアイスティーを作ってくれた。
「田中さんは、何の仕事をしてるんですか?冒険家?違う?バイク屋?」
私は絶対にサラリーマンではないと思って聞いてみた。
「僕の場合はね、仕事と言うか、それが生活みたいなものだから、仕事と言っていいのかわからないんだけどね」
「生活、、、趣味みたいなものですか?」
私が聞くと田中さんが首を振る。田中さんはとにかくミステリアスで不思議な雰囲気を持っている。けれど何故だか一緒にいると落ち着けて安心出来る、だから私は暇を見つけては、田中さんに会いにきていた。
「趣味と言うか、人生というかね?」
「全然わからないですよ。田中さんは謎過ぎるなぁ」
「七奈さんは?何かやりたい事があるんですか?」
そう聞かれて戸惑った。私は今、物語が書きたいと思っているが、具体的に何を書こうか悩んでいた。何となくイメージはあるが、それだけで書けるのかどうかわからなくて、怖くて書き始める事が出来ないでいた。
「私、、、物語を書きたいと思ってるんです。けど、ちゃんと最後まで書ききる事が出来るか不安で、まだ何も書けていないんですよ」
田中さんは、私の話しを聞いて意外そうな顔をしたが、少し微笑んで頷いた。
「そう、、、。七奈さんは、自分のうちに秘めた思いを伝える人になりたいんだね」



