私は暫く自分の部屋で窓を開けて外を眺めていた。外では、キャンパー達が思い思いに、キャンプの夜を楽しんでいる声が聞こえた。
私も、ここで働いてだいぶ前より元気になっていたはずだった。それなのに、、、少しの事で私の心はすぐに不健康になる。
どうしたら、もっと強い人間になれるんだろう。強くなくても良い、せめて皆んなと同じくらいの事をこなせるタフさが欲しかった。
そうすれば、さっきみたいなナンパにフラフラする事もなかっただろう。
外からは、楽しげな声が沢山のランタンの明かりの合間から聞こえているのに、私は泣きたいくらいに孤独だった。
見回りの時間になって、私は懐中電灯を持って外へ出た。一人で少し休んだらだいぶ気分は落ち着いていた。管理棟の外へ出たら、永斗君が待っていた。
「どうしたの、、、?」
永斗君は今日は休みだから、見回りする必要はないはずだ。
「心配で一人で行かせられないだろ。まだあの男いるんだし」
「大丈夫だって、もうついていかないよ。さっきだってちょっと揺れただけで、別に本当にどうこうなるつもりはなかったよ」
私が言うと、永斗君が私に近づいて怒った顔をしてきた。
「全然信用できません!!ほら!行こう!」
そう行って永斗君はどんどん歩きだしてしまった。私は前を歩く永斗君に話しかけた。
「ねぇねぇ!永斗君!」
私が話しかけても、永斗君は返事もせずに歩いていく。
「永斗君ってば!!」私が声を張って大きな声を出すと、流石に永斗君が振り返った。
「いや、声大きいって」
「永斗君がシカトするからじゃん。ねぇねぇ、怒ってるの?」
私が聞くと、永斗君は私の顔を見てまだ真顔で私に言った。
「怒ってるよ。めちゃくちゃ」
「ごめん。言い過ぎたね」私が謝ると永斗君は首を振って短いため息をついた。
「違うよ、俺が怒ってるのは、七奈ちゃんが自分の事を軽く見てるからだよ」
「軽く、、、?」
「七奈ちゃん、なんで人に選ばれる事ばっかり考えてるの。七奈ちゃんの人生だろ?七奈ちゃんが自分で選ぶんだよ。
仕事だって、恋愛だって、選ばれるのを待ってるんじゃなくて、自分から選んでいくんだよ」
私が選ぶ側、、、?私はそんな事、今まで考えた事がなかった。私を良いと、必要としてくれる会社があれば、そこで働ければいいと思っていた。
「自分を価値のない人間なんて言うなよ。ここで働いて、どれだけの人を笑顔にした?
皆んな『ありがとう』って楽しそうに帰って行ったじゃん。人を笑顔にして、めちゃくちゃ価値ありまくりじゃん。むしろ価値しかないじゃん!気づけよ、自分の価値に。自己肯定感が低いなら、そんなの俺がいくらでも上げてやるよ」
息が苦しかった、、、。
鼻の奥がツーンとして、視界がどんどん涙で滲んでいく。私の今にも泣き出しそうな顔を見て、永斗君が慌てていた。
悲しくて涙が溢れたわけじゃない。私は凄く嬉しかった。ただ幸福だった。
この人はどうして、私にこんな優しい言葉を投げかけ、幸せを与えてくれるんだろう。
私は自然と永斗君の身体に、吸い寄せられるように抱きついていた。
「え?、、、どうしたの七奈ちゃん、、、」
「ハグしたい気分だった。無性に、永斗君をハグしたい気分になった」
自分でもこんなに大胆な行動に出た事に驚いていた。ただ頭が司令したように、自然に私は永斗君をハグしていた。永斗君にハグをしていると、安心感しかなく、ずっとこのままでいたいと思うくらいだった。けれど永斗君は一人で慌てていた。
「でも、ちょっとまずくない?」
「友達でも嬉しい事があったら、ハグくらいするでしょ?全然まずくないよ」
「いや、、、でも外だし。お客さんいるし」
「、、、はい!じゃあ離してあげる!」
永斗君が困っていたので、私はそう言って永斗君からピッと離れた。
「ねぇねぇ、永斗君」 「何?」
「私と出会ってくれてありがとう。永斗君に出会えてよかった」
私の言葉に永斗君が一瞬止まって私を見た。けれど、直ぐにいつものくしゃくしゃの笑顔になった。
「こちらこそ、出会ってくれてありがとう」
その笑顔を見た時に、私はこの人の事がたまらなく好きだと思った。出会った時からいつもそうだった。私に笑いかけ、幸せを与え、幸せに気づかせてくれる。
私の心が強く言っている気がした。
この人の事が大切だって───────
でも、私はその気持ちを隠す事に決めた。永斗君に伝えた所で、永斗君には大切な人がいる。困らせるくらいなら、私は友達として永斗君の側にいたい。
ただ寄りそって明るい彼の側で、いつまでも彼の笑顔を見る事ができたら、それだけで私は幸せだと思っていた。
私も、ここで働いてだいぶ前より元気になっていたはずだった。それなのに、、、少しの事で私の心はすぐに不健康になる。
どうしたら、もっと強い人間になれるんだろう。強くなくても良い、せめて皆んなと同じくらいの事をこなせるタフさが欲しかった。
そうすれば、さっきみたいなナンパにフラフラする事もなかっただろう。
外からは、楽しげな声が沢山のランタンの明かりの合間から聞こえているのに、私は泣きたいくらいに孤独だった。
見回りの時間になって、私は懐中電灯を持って外へ出た。一人で少し休んだらだいぶ気分は落ち着いていた。管理棟の外へ出たら、永斗君が待っていた。
「どうしたの、、、?」
永斗君は今日は休みだから、見回りする必要はないはずだ。
「心配で一人で行かせられないだろ。まだあの男いるんだし」
「大丈夫だって、もうついていかないよ。さっきだってちょっと揺れただけで、別に本当にどうこうなるつもりはなかったよ」
私が言うと、永斗君が私に近づいて怒った顔をしてきた。
「全然信用できません!!ほら!行こう!」
そう行って永斗君はどんどん歩きだしてしまった。私は前を歩く永斗君に話しかけた。
「ねぇねぇ!永斗君!」
私が話しかけても、永斗君は返事もせずに歩いていく。
「永斗君ってば!!」私が声を張って大きな声を出すと、流石に永斗君が振り返った。
「いや、声大きいって」
「永斗君がシカトするからじゃん。ねぇねぇ、怒ってるの?」
私が聞くと、永斗君は私の顔を見てまだ真顔で私に言った。
「怒ってるよ。めちゃくちゃ」
「ごめん。言い過ぎたね」私が謝ると永斗君は首を振って短いため息をついた。
「違うよ、俺が怒ってるのは、七奈ちゃんが自分の事を軽く見てるからだよ」
「軽く、、、?」
「七奈ちゃん、なんで人に選ばれる事ばっかり考えてるの。七奈ちゃんの人生だろ?七奈ちゃんが自分で選ぶんだよ。
仕事だって、恋愛だって、選ばれるのを待ってるんじゃなくて、自分から選んでいくんだよ」
私が選ぶ側、、、?私はそんな事、今まで考えた事がなかった。私を良いと、必要としてくれる会社があれば、そこで働ければいいと思っていた。
「自分を価値のない人間なんて言うなよ。ここで働いて、どれだけの人を笑顔にした?
皆んな『ありがとう』って楽しそうに帰って行ったじゃん。人を笑顔にして、めちゃくちゃ価値ありまくりじゃん。むしろ価値しかないじゃん!気づけよ、自分の価値に。自己肯定感が低いなら、そんなの俺がいくらでも上げてやるよ」
息が苦しかった、、、。
鼻の奥がツーンとして、視界がどんどん涙で滲んでいく。私の今にも泣き出しそうな顔を見て、永斗君が慌てていた。
悲しくて涙が溢れたわけじゃない。私は凄く嬉しかった。ただ幸福だった。
この人はどうして、私にこんな優しい言葉を投げかけ、幸せを与えてくれるんだろう。
私は自然と永斗君の身体に、吸い寄せられるように抱きついていた。
「え?、、、どうしたの七奈ちゃん、、、」
「ハグしたい気分だった。無性に、永斗君をハグしたい気分になった」
自分でもこんなに大胆な行動に出た事に驚いていた。ただ頭が司令したように、自然に私は永斗君をハグしていた。永斗君にハグをしていると、安心感しかなく、ずっとこのままでいたいと思うくらいだった。けれど永斗君は一人で慌てていた。
「でも、ちょっとまずくない?」
「友達でも嬉しい事があったら、ハグくらいするでしょ?全然まずくないよ」
「いや、、、でも外だし。お客さんいるし」
「、、、はい!じゃあ離してあげる!」
永斗君が困っていたので、私はそう言って永斗君からピッと離れた。
「ねぇねぇ、永斗君」 「何?」
「私と出会ってくれてありがとう。永斗君に出会えてよかった」
私の言葉に永斗君が一瞬止まって私を見た。けれど、直ぐにいつものくしゃくしゃの笑顔になった。
「こちらこそ、出会ってくれてありがとう」
その笑顔を見た時に、私はこの人の事がたまらなく好きだと思った。出会った時からいつもそうだった。私に笑いかけ、幸せを与え、幸せに気づかせてくれる。
私の心が強く言っている気がした。
この人の事が大切だって───────
でも、私はその気持ちを隠す事に決めた。永斗君に伝えた所で、永斗君には大切な人がいる。困らせるくらいなら、私は友達として永斗君の側にいたい。
ただ寄りそって明るい彼の側で、いつまでも彼の笑顔を見る事ができたら、それだけで私は幸せだと思っていた。



