永斗君は今まで見た事がないような怖い顔をしていた。永斗君が怒った顔を初めて見た気がした。
永斗君は、私達の方へ歩いてくると私の肩にまわされた手を乱暴に振り解いた。
「汚い手どかせよ。うちの従業員に何してんだよ。注意事項みなかった?勧誘禁止、ナンパ禁止。破るんなら夜中でも警察呼んで外放りだすぞ」
私は永斗君の気迫にあっけにとられていた。
彼も余程びっくりしたのか、焚き火台を持って「冗談だよ」と一言いって管理棟から出ていった。
私は永斗君と二人で残されて、まだびっくりして何も言えなかった。ただ心臓が大きな音を立てて苦しいくらいだった。
永斗君が私の顔を見たが、まだ怒りに満ちた顔をしていた。
いつもにこにこ笑っている永斗君と、別人みたいだった。
「何やってんの、ナンパぐらいちゃんと拒絶しないとダメだろ。何簡単に触らしてんの」
私はそう言われて何も言えなかった。確かにさっきのは、私の一瞬の隙をつかれた気がした。
"七奈ちゃんがいい"
そんな簡単な言葉ですぐになびく私は、さっきの彼と変わらないくらい軽薄かもしれない。
「私を選んでくれた気がして、、、私が良いって言ってくれたから」
「そんなの、気を引く為に言っただけだろ?あんな軽そうなやつ、やりたいだけだろ」
永斗君が怒って吐き捨てるように言った。
けれど、私の気持ちは永斗君にはわからないと思った。自己肯定感の低い私には、そんなくだらない言葉ですら、なびいてしまうくらいに嬉しかったんだ。
「永斗君にはわからないよ。私は誰かに必要だって、そう言ってもらえたら、それだけで嬉しいんだよ。自己肯定感低過ぎて、馬鹿だと思うかもしれないけど、そうなんだから仕方ないじゃん」
永斗君が怒りから、何処か悲しげな表情に変わって私の目を見た。
「俺は、七奈ちゃんの事必要だと思ってるよ。
一緒にここで働いて、いいパートナーだと思ってるよ。だから、、、お願いだからもっと自分のこと大切にしなよ。あんなのについていっても傷つくだけだろ」
「そんなのわかってるよ。それでも良いって思ったんだよ。永斗君にはわからないよ、何十社って面接で『いらない、必要ない』って言われて、パワハラ、セクハラの質問に笑いながら必死に答えて、それでも内定もらえなくて、しまいには彼氏にも浮気されて、誰も私なんか必要としてないって、、、私は価値のない人間だって、そう思っちゃったんだよ」
こんなのは、完全に八つ当たりで言ってるだけで、やっぱり私はここまできても心が弱いんだという事実に、ほとほと嫌になった。
永斗君が何かを言いかけ時に、私は遮って言葉を重ねた。
「ごめん。私、夜の見回りまでちょっと休むね。今日、お客さん多くて疲れちゃった」
私はそう言って自分の部屋に入っていった。
ここへきて、私は少し変われた気がしていた。
就活が始まる前の自分に戻れた気がしていた。
けれど、根本は何も変わっていない。
私はやっぱり私で、人より心の弱い寂しいどうしようもない人間だった。
永斗君は、私達の方へ歩いてくると私の肩にまわされた手を乱暴に振り解いた。
「汚い手どかせよ。うちの従業員に何してんだよ。注意事項みなかった?勧誘禁止、ナンパ禁止。破るんなら夜中でも警察呼んで外放りだすぞ」
私は永斗君の気迫にあっけにとられていた。
彼も余程びっくりしたのか、焚き火台を持って「冗談だよ」と一言いって管理棟から出ていった。
私は永斗君と二人で残されて、まだびっくりして何も言えなかった。ただ心臓が大きな音を立てて苦しいくらいだった。
永斗君が私の顔を見たが、まだ怒りに満ちた顔をしていた。
いつもにこにこ笑っている永斗君と、別人みたいだった。
「何やってんの、ナンパぐらいちゃんと拒絶しないとダメだろ。何簡単に触らしてんの」
私はそう言われて何も言えなかった。確かにさっきのは、私の一瞬の隙をつかれた気がした。
"七奈ちゃんがいい"
そんな簡単な言葉ですぐになびく私は、さっきの彼と変わらないくらい軽薄かもしれない。
「私を選んでくれた気がして、、、私が良いって言ってくれたから」
「そんなの、気を引く為に言っただけだろ?あんな軽そうなやつ、やりたいだけだろ」
永斗君が怒って吐き捨てるように言った。
けれど、私の気持ちは永斗君にはわからないと思った。自己肯定感の低い私には、そんなくだらない言葉ですら、なびいてしまうくらいに嬉しかったんだ。
「永斗君にはわからないよ。私は誰かに必要だって、そう言ってもらえたら、それだけで嬉しいんだよ。自己肯定感低過ぎて、馬鹿だと思うかもしれないけど、そうなんだから仕方ないじゃん」
永斗君が怒りから、何処か悲しげな表情に変わって私の目を見た。
「俺は、七奈ちゃんの事必要だと思ってるよ。
一緒にここで働いて、いいパートナーだと思ってるよ。だから、、、お願いだからもっと自分のこと大切にしなよ。あんなのについていっても傷つくだけだろ」
「そんなのわかってるよ。それでも良いって思ったんだよ。永斗君にはわからないよ、何十社って面接で『いらない、必要ない』って言われて、パワハラ、セクハラの質問に笑いながら必死に答えて、それでも内定もらえなくて、しまいには彼氏にも浮気されて、誰も私なんか必要としてないって、、、私は価値のない人間だって、そう思っちゃったんだよ」
こんなのは、完全に八つ当たりで言ってるだけで、やっぱり私はここまできても心が弱いんだという事実に、ほとほと嫌になった。
永斗君が何かを言いかけ時に、私は遮って言葉を重ねた。
「ごめん。私、夜の見回りまでちょっと休むね。今日、お客さん多くて疲れちゃった」
私はそう言って自分の部屋に入っていった。
ここへきて、私は少し変われた気がしていた。
就活が始まる前の自分に戻れた気がしていた。
けれど、根本は何も変わっていない。
私はやっぱり私で、人より心の弱い寂しいどうしようもない人間だった。



