「本はさ、私の心を救ってくれた気がするんだよ。文章は時に人を助ける力があると思う」

「ねぇ、七奈覚えてる?七奈、小学校の卒業アルバムに、将来の夢『小説家』って書いてたよ?」

美優の言葉に、私は思い出していた。
小学生だった時の自分の事などすっかり忘れていたが、そんな事を書いたよな記憶が、 頭の片隅にあった。

 「そうかもしれないね。小説家になりたいって思ってたかも、、、忘れてたよそんな事。美優はよく覚えてたね」

「何となく今思い出した。美優は将来本に関係する仕事につくと思ってた」

「そうだね、実は出版社も大手から小さい所まで受けまくったけど、全部落ちちゃって、全然だめだった、、、やっぱり狭き門だよね」

 大手出版社は採用人数が少ない為、就職するにはかなり難易度が高かった、中小の出版社でも、採用人数は年間ニ、三名という会社が多く、私なんかが採用されるはずもなかった。

 「別に出版社に勤めなくてもいいんじゃない?」

「どういう事?」

「自分で書いてみたら?本」

美優が言っている事があまりに突拍子もなくて、思わず私は笑ってしまった。

 「小説家になるって事?そんな小学生の時の夢を今更追えないよ。第一、私文章なんて書いた事ないよ?」

笑う私に対して、美優は真面目な顔で私に話しだす。

 「文章なら、書いてたじゃん。小学生の時に。七奈が自分で考えた話しを交換日記に書いてくれたよね?」

私と美優は小学生の時、交換日記をしていた時期があった。でもそれは小学生三、四年生ぐらいの時で、私はふざけたイラストと一緒に思いついた話しを遊び半分で書いていただけだ。

 「あれを文章というなら、皆んな大作家になれちゃうって。ただの遊びだよ、無理むり」

「どうして?私、七奈の考える話しが凄く楽しくて大好きだったんだよね。早く次が読みたくてワクワクしてたよ。七奈にはイマジネーション能力があると思うよ。
 それだけ本も読んでるんだから、書く事だって出来るはずだよ」

そう言われても、全然ピンとはこなかった。
大手の出版社に就職するよりも、小説家になれる確率の方が、遥かに低いだろう。自分にはそんな才能はないし、ライターの母を見ていて、書く事の大変さも少なからずわかっていた。だから余計に自分には出来っこないと思った。

 「ありがとう。美優、まあ、ブログぐらいなら初めてみてもいいかな?」

「そうだよ!ここのキャンプ場のブログ、ホームページにのせてみたら?綺麗な景色の写真と一緒に」

美優に言われて、それなら私でも何とかなりそうだと思った。私は何となく新しく始めてみたい事が見つかって、少しわくわくした気持ちになっていた。