その日の夜、私と永斗君はプロポーズ大作戦の成功を祝って、受付の中で打ち上げをした。
この後、夜の見回りがあるから、アルコールは飲めないが二人でジュースと、岸さんが作っておいてくれたピザで打ち上げをした。
「美味しい〜岸さんのピザ、チーズが濃厚!」
「岸さん、近くにご贔屓にしている牧場があるんだよ。そこで高級チーズを仕入れてくるから、美味いんだよ」
「だからシンプルなマルゲリータでも、こんなに美味しいんだね。でも永斗君が炭火で焼いてくれたから美味しいのもあるかもね」
「炭火で焼くと何でも美味くなるよな。まだ炭残ってるから後でちょっと焚き火する?」
「いいね、しようしよう!」
自分がこんなに、アウトドアにハマるとは思わなかった。今は、焚き火もテントで寝るのも大好きになってしまった。
やってみると、意外にハマる事は他にもあるのかもしれない。
私と永斗君は食後に焚き火をした。
ゆらゆらと揺れる炎を見ていると、気持ちが落ち着いてくるから不思議だ。オレンジ色の炎を、いつまでも見ていられる気がした。
「あっ!私永斗君にプレゼントがあったんだ」
私は、今日作ったオルゴールを渡そうと思って一旦自分の部屋に戻って持ってきた。
「はい!どうぞ」
私が、オルゴールの入っている紙袋を渡すと、永斗君が不思議そうな顔をした。
「あれ?俺誕生日だっけ?」
「違うよー。っていうか、永斗君の誕生日知らないし。今日オルゴール美術館に行ってきたの。手作りオルゴール体験してきたんだ」
「手作りオルゴール?」
永斗君が紙袋から、今日私が作ったオルゴールを取り出す。オルゴールは、ガラスドームの中にガラス細工で出来ている、熊と富士山が並べられていて光っていた。永斗君はそれを大事そうに手の平にのせた。
「おー!凄い!可愛いね、富士山と、、、熊?
なんで熊?」
「ちょっとオルゴール流してみて」
永斗君がゼンマイを巻くと、オルゴールの綺麗繊細な音色が流れてきた。
その音楽を聴いた瞬間、永斗君の顔がぱっと明るくなった。
「これ『かえりみち』だ!えー!オルゴールにあるの?すげー!」
「この曲見つけた瞬間に、永斗君に渡そうと思ったんだよ、前に夜二人で見回りしてた時に、熊よけのために、二人で歌って管理棟まで歩いたでしょ?覚えてる?」
「覚えてるよ!あーだから熊ね!成る程ねー、嬉しい、ありがとう」
永斗君は嬉しそうにまたオルゴールのぜんまいを巻いて聴いていた。
私は永斗君が喜んでくれてホッとした。
「本当にいい曲だよね、この曲大好き。"NEW WORLD"の曲って英詞が入ってるのが多いけど、この曲だけは全文日本語歌詞で珍しいよね」
「この曲を作った"NEW WORLD"のプロデューサーが、病気の彼女の為に作った曲らしいよ」
「そうなんだ、、、だからちょっと切ないっていうか、物悲しい雰囲気がある歌詞なのかな」
" 世界一面倒臭い そんな君を愛してる
帰り道 愛しい人
限りある命の中 儚いからこそ輝けるの
もし私がいなくなったとしても
君の頭の片隅で静かに生き続ける
それが私の望みだから
どんなに遠く 遠回りをしたとしても
いつかは君にたどり着く帰り道
それが僕の人生だから
僕は一人家路を進むんだ それがどんな困難な道でも
僕を引き寄せてくれないか ゆっくりでいいから いつか優しく抱きしめてくれるその日まで"
永斗君がオルゴールに合わせて歌っていた。
「いつまでもの君の頭の片隅に生き続けるっていい歌詞だよね。姿はなくても、好きな人の記憶に残りたいって、思いが込められてる」
「そうだね、、、ちょっと悲しいけどね」
「悲しいかな?」
「だって、これって病気の彼女が死んじゃう歌なんじゃないかな?やっぱり悲しいよ」
私が言うと、永斗君はまたオルゴールを流した。
「死は辛いけど、悲しいばかりではないよ。健康で生きていると、死の存在を忘れているけど、いつも死は俺達のすぐ側で寄り添っているものだと思う」
「死が寄り添う、、、?」
不思議な表現の仕方だと思った、、、。
私は病気になった時、そんな風に到底思う事はできなかった。死は恐怖で、怖い、逃げ出したいくらいの絶望でしかなかった。
「そう、一人一人の寿命があって、それが終わったら優しく迎えいれてくれるような、そんな穏やかなものだと思ってる」
私は亡くなった祖母の顔を思い出していた。
祖母は長い闘病の末に、病院で亡くなった。
それまでは辛いに治療に苦痛に満ちた表情で我慢していた祖母が、死ぬ間際何故かほっとしたような、幸せそうな顔をしてそのまま旅立った。
あの時祖母は死に優しく迎えいれてもらっていたのだろうか。そう思うと、永斗君が言ってる事もなんとなく納得はいく。
「一生懸命に生きたご褒美だと思ってる」
永斗君はそう言ってまた『かえりみち』を口ずさんだ。つられて私も一緒に歌い出すと、
永斗君はいつものように、目尻を下げてにこにこ笑った。
「ありがとう。七奈ちゃん、一生大切にするよ」
こういう言葉を、恥ずかしげもなく言えちゃう所が、永斗君の沼男っぽい所だと思う。
私はその沼に自分がハマらないように一生懸命、踏みとどまった。
俺の事を絶対に好きにならない事────
そんな事を言うなら、優しくなんかしないで欲しいと切に願ってしまった。
この後、夜の見回りがあるから、アルコールは飲めないが二人でジュースと、岸さんが作っておいてくれたピザで打ち上げをした。
「美味しい〜岸さんのピザ、チーズが濃厚!」
「岸さん、近くにご贔屓にしている牧場があるんだよ。そこで高級チーズを仕入れてくるから、美味いんだよ」
「だからシンプルなマルゲリータでも、こんなに美味しいんだね。でも永斗君が炭火で焼いてくれたから美味しいのもあるかもね」
「炭火で焼くと何でも美味くなるよな。まだ炭残ってるから後でちょっと焚き火する?」
「いいね、しようしよう!」
自分がこんなに、アウトドアにハマるとは思わなかった。今は、焚き火もテントで寝るのも大好きになってしまった。
やってみると、意外にハマる事は他にもあるのかもしれない。
私と永斗君は食後に焚き火をした。
ゆらゆらと揺れる炎を見ていると、気持ちが落ち着いてくるから不思議だ。オレンジ色の炎を、いつまでも見ていられる気がした。
「あっ!私永斗君にプレゼントがあったんだ」
私は、今日作ったオルゴールを渡そうと思って一旦自分の部屋に戻って持ってきた。
「はい!どうぞ」
私が、オルゴールの入っている紙袋を渡すと、永斗君が不思議そうな顔をした。
「あれ?俺誕生日だっけ?」
「違うよー。っていうか、永斗君の誕生日知らないし。今日オルゴール美術館に行ってきたの。手作りオルゴール体験してきたんだ」
「手作りオルゴール?」
永斗君が紙袋から、今日私が作ったオルゴールを取り出す。オルゴールは、ガラスドームの中にガラス細工で出来ている、熊と富士山が並べられていて光っていた。永斗君はそれを大事そうに手の平にのせた。
「おー!凄い!可愛いね、富士山と、、、熊?
なんで熊?」
「ちょっとオルゴール流してみて」
永斗君がゼンマイを巻くと、オルゴールの綺麗繊細な音色が流れてきた。
その音楽を聴いた瞬間、永斗君の顔がぱっと明るくなった。
「これ『かえりみち』だ!えー!オルゴールにあるの?すげー!」
「この曲見つけた瞬間に、永斗君に渡そうと思ったんだよ、前に夜二人で見回りしてた時に、熊よけのために、二人で歌って管理棟まで歩いたでしょ?覚えてる?」
「覚えてるよ!あーだから熊ね!成る程ねー、嬉しい、ありがとう」
永斗君は嬉しそうにまたオルゴールのぜんまいを巻いて聴いていた。
私は永斗君が喜んでくれてホッとした。
「本当にいい曲だよね、この曲大好き。"NEW WORLD"の曲って英詞が入ってるのが多いけど、この曲だけは全文日本語歌詞で珍しいよね」
「この曲を作った"NEW WORLD"のプロデューサーが、病気の彼女の為に作った曲らしいよ」
「そうなんだ、、、だからちょっと切ないっていうか、物悲しい雰囲気がある歌詞なのかな」
" 世界一面倒臭い そんな君を愛してる
帰り道 愛しい人
限りある命の中 儚いからこそ輝けるの
もし私がいなくなったとしても
君の頭の片隅で静かに生き続ける
それが私の望みだから
どんなに遠く 遠回りをしたとしても
いつかは君にたどり着く帰り道
それが僕の人生だから
僕は一人家路を進むんだ それがどんな困難な道でも
僕を引き寄せてくれないか ゆっくりでいいから いつか優しく抱きしめてくれるその日まで"
永斗君がオルゴールに合わせて歌っていた。
「いつまでもの君の頭の片隅に生き続けるっていい歌詞だよね。姿はなくても、好きな人の記憶に残りたいって、思いが込められてる」
「そうだね、、、ちょっと悲しいけどね」
「悲しいかな?」
「だって、これって病気の彼女が死んじゃう歌なんじゃないかな?やっぱり悲しいよ」
私が言うと、永斗君はまたオルゴールを流した。
「死は辛いけど、悲しいばかりではないよ。健康で生きていると、死の存在を忘れているけど、いつも死は俺達のすぐ側で寄り添っているものだと思う」
「死が寄り添う、、、?」
不思議な表現の仕方だと思った、、、。
私は病気になった時、そんな風に到底思う事はできなかった。死は恐怖で、怖い、逃げ出したいくらいの絶望でしかなかった。
「そう、一人一人の寿命があって、それが終わったら優しく迎えいれてくれるような、そんな穏やかなものだと思ってる」
私は亡くなった祖母の顔を思い出していた。
祖母は長い闘病の末に、病院で亡くなった。
それまでは辛いに治療に苦痛に満ちた表情で我慢していた祖母が、死ぬ間際何故かほっとしたような、幸せそうな顔をしてそのまま旅立った。
あの時祖母は死に優しく迎えいれてもらっていたのだろうか。そう思うと、永斗君が言ってる事もなんとなく納得はいく。
「一生懸命に生きたご褒美だと思ってる」
永斗君はそう言ってまた『かえりみち』を口ずさんだ。つられて私も一緒に歌い出すと、
永斗君はいつものように、目尻を下げてにこにこ笑った。
「ありがとう。七奈ちゃん、一生大切にするよ」
こういう言葉を、恥ずかしげもなく言えちゃう所が、永斗君の沼男っぽい所だと思う。
私はその沼に自分がハマらないように一生懸命、踏みとどまった。
俺の事を絶対に好きにならない事────
そんな事を言うなら、優しくなんかしないで欲しいと切に願ってしまった。



