「、、、丸だ!!!」

大我君は頭の上で大きな丸を作っていた。

 「嘘でしょ!?オッケー!!泣きそう!」

私が涙ぐんでいると、永斗君が私の背中を叩く。

 「七奈ちゃん!泣いてる暇ないから!ほら!花火に火つけて!」

「功さーん!!点火お願いします!!」

永斗君がトランシーバーで、功さんに呼びかける。

 『了解!!』

 功さんが、返事をするとすぐに花火が打ち上げられた。
 心臓に響くような大きな音をさせながら花火が打ち上がった。私と永斗君は準備していた花火に次々に火をつけて行った。
 私達が火をつけた花火も、次々とオレンジ色の火花をちらした。他のキャンパー達も皆んな歓声をあげていた。目の前の湖で花火を上げているから、今にも花火が落ちてきそうなくらいに大きくて迫力があった。
 火の粉がキラキラと夜空に光っては消えていく、儚いけれど美しい光景だった。
 たった四十発の花火はすぐに終わってしまったが、こんなに心を動かされるような花火は初めて見た気がした。

 「良かったな!!」

永斗君がそう言って私にハイタッチしてきた。
私は大きくて綺麗な永斗君の手に思いっきりハイタッチした。

「ラッキーセブンだ!!」

「ラッキーエイトもあるけどね」

永斗君がそんな事を言うから私は、笑ってしまった。奥から、美優と大我君が走ってきた。

 「七奈〜!!」 私の名前を呼びながら走ってくる美優の目には涙が溢れていた。

 「美優〜おめでとう!!」

私と美優は抱き合った。大我君も目に涙を少し浮かべて、心底安心した表情をしていた。

「七奈、ありがとね。今回のサプライズは本当にびっくりした!!」

「私も今日知ったんだけどね、、、美優、これで良かったの?」

私は少し気になっていた。美優は別れるつもりだったんじゃないんだろうか?

「なんか、七奈に言われて考えちゃったよ。
私は彼に求めてばっかりだったけど、彼は私に何か求めてるの?って、、、大我は私に何も求めてなかったんだよね。ただ笑ってくれてたらいいって、、、。それって何か凄く愛情を感じるなって」

大我君の愛情は無償だった。美優に隣りでずっと笑っていて欲しい。そんな風に愛してくれる彼の気持ちに応えたくなるのもよくわかる気がする。

「美優の選択、間違ってないと思うよ。凄く良い人だと思った」

「ありがとう!まぁ、家事はやってもらうけどね!」

美優が大我君にそう言うと、大我君は「まかしとけ!」と言った。

 今日は、間違いなく二人にとって忘れられない日になったと思う。
そして、私にとっても忘れられない日になった。二人のプロポーズの瞬間に立ち会えて私は本当に嬉しかった。
  
 「何か、自分の事より嬉しいかも」

管理棟に帰る時に、永斗君に話しかけると、永斗君が笑って言った。

 「人の幸せに協力出来るって最高に幸せだね」

永斗君の言う通りだと思った。人の為に、誰かの笑顔を作れるような、そんな仕事をしたいと、私はその時初めて思った。