焚き火の煙と、炎の揺らめきが美優の顔を綺麗に見せた。

 「美優、翔也の事好きだったの?」

私は七年越しに美優の気持ちを知って、動揺を隠せなかった。美優が翔也を好きだったなんて、私は今まで知らなかったし、美優はそんな素振りを見せた事もなかった。
 美優は薪を焚き火台に投げ入れて、少し笑いながら言った。

 「全然知らなかったでしょ?私、必死に気持ちがバレないように隠してたからね」

「え、、、?いつから?」

「小学生?、、、一途過ぎてちょっと気持ち悪いね」

(そんな昔から、、、?私と翔也が付き合うだいぶ前だ)

「ごめん、、、本当に私美優の気持ち知らなかった」

「謝らなくていいって。本当に誰にもばれないように、悟られないように注意をはらってたんだから」

「でも、どうして、、、?」

美優は何故私に自分の気持ちを打ち明けてくれなかったのだろうか。私と翔也が付き合い始めたのは、私が病気で入院した高校一年の頃だ。
その前から。翔也の事が好きだったなら、もっと前に言ってくれたら良かったのに、、、。

「小学生の頃からね、私翔也に相談されてたの。七奈の事が好きだって」

「翔也が、、、?」


「そう。翔也は小学生の頃から七奈に片想いしてたんだよ。多分七奈は気づいていなかったと思うけど」

美優の言う通り、私は翔也がそんな昔から自分の事を好きだったなんて知らなかった。

 「知らなかった、、、。高校に入るまでそんな素振り全然なかったよね?」

「七奈は気づいていないだけで、翔也は七奈に結構アピールしてたよ?部活帰りに下駄箱で待ち伏せしたり、同じ委員会になろうとしたり、七奈が風邪ひいたら必ず家までプリン持っていったり。数えきれないくらい小さなアピールを翔也はしてたんだよ」


言われてみれば、そんな気もしないでもないが、当時の私は翔也の気持ちなんて知る由もなかった。鈍感と言われれば、本当に鈍感だったかもしれない。

 「そっか、、、私はずっと翔也の事を幼馴染としか見ていなかったから、翔也の気持ちに気づく事がなかったのかもしれない」

「私はさ、翔也から七奈の事で相談にのるふりをして、私の事を好きになってくれないかなぁ〜ってずっと思ってた。ずる賢い人間なのよ、私は」

「そんな事ないよ、好きな人がいたら皆んなそんな風に思うもんでしょ」

むしろ、小学生の時からそんな思いをかかえながら私と友達でいてくれた美優は、心が広いと思った。きっと辛い時も沢山あったんじゃないだろうか。

 「私、七奈が入院中にわざと学校であった楽しい話しをしたりしてたんだよ。七奈が、学校へ行けなくて辛いと思ってたのを知りながら。
七奈が入院中、翔也が完全に七奈の事しか考えられなくなっているのを見て、自分でも信じられないくらいに、七奈に嫉妬してたの」

美優は私の顔を見ずに淡々と話していた。

 「覚えてるよ、私は学校に行ってただ楽しく友達と高校生活を満喫してる美優に嫉妬してた。
だから、あの時喧嘩になったよね。美優が私に友達と作ったアルバムを持ってきてくれてさ、皆んなの楽しそうな写真と一緒にメッセージが入ってたよね『はやく元気になってね』って。
 でも、あの時私は手術をしても成功する確率は低くて、手術をするかしないかで、毎日悩んでた。『はやく元気になってね』の一言が私にとったら酷く軽々しく感じたんだよね、、、それで美優に当たった」

きっと皆んなの善意だったはずだ。別に私に悪意があってあのアルバムを私にくれたわけではない。今だったら、そんな風に思えるが当時はそんな風に思う事が出来なかった。

 「だから言ったんだよね『こんなアルバムいらないから持って帰ってって』それで言い合いになったよね」

「私、七奈の気持ち本当に考えられてなかったよね。今なら酷い事したってわかるけど、あの時は七奈がどうしてこんなに怒るかわからなかった」

 当然だと思う。十五歳で死ぬかもしれない病気にかかった人間の気持ちなんて、当事者じゃなければわかるはずはないと思う。だから、私は言ったんだ、、、。

 「もう来ないでって、私が美優に言ったんだよね、、、」