「美優(みゆ)?」

私はその女性の名前を思わず声に出していた。
美優は私の姿に気がつくと、目を丸くして驚いて、私に声をかけてきた。

 「七奈!!久しぶり!!どうしたの?こんな所で!!」

美優も、まさかキャンプ場に私がいるなんて思っていなかったのか、驚いていた。

「美優こそ!え?一人?」

「そう。一人キャンプだよ!七奈もキャンプ?」

「うんん!私夏休み期間中ここで働いてて、、、」

美優は小学校からの友達だった。美優はアウトドアとは無縁のタイプだったから、まさかこんな所で会うとは思わなかった。まあ、私もアウトドアなんか興味がなかったから、美優も私がここにいて驚いただろうけど、、、。

 美優と会うのは、かれこれ七年ぐらいぶりだった。私は美優と小学生の頃から仲がよくて、親友と言ってもいいくらいの友人だったが、私が高校一年生で入院した時に、ある事がきっかけで私達は喧嘩をして、そのまま疎遠になっていた。
 疎遠になってから、私は何度も美優と仲直りをしようと心みたが、なかなか素直になれず仲直りをする事は出来なかった。
ずっと気まずいままの関係だったが、思わずこんな所であったので話しかけてしまった。

 「こんな偶然あるんだねー!あっ、私ソロキャン初めてなんだ、テント張るの不安なんだけど、ちょっと手伝ってもらえる?」

私は、美優にそう言われて永斗君の顔を見た。
永斗君はいつものようにニコニコ笑っていた。

 「七奈ちゃん、もう一人で出来るっしょ?よろしく!俺は受付してるからねーじゃあ、ごゆっくり」

永斗君はそのまま管理棟に戻ってしまった。
私と美優はそのまま今日泊まる湖のサイトまで歩いていった。

 「美優がキャンプなんて以外だなぁ。アウトドアなんか興味なかったでしょ?それよりも都内のカフェに行きたいタイプだったよね?」

私が言うと、美優は笑い出した。その笑い声が昔と全く変わっていなかったのでまるでタイムスリップしたみたいに、昔に戻った気分になった。

 「いや、本当にそうだよ。アウトドアとか興味ないし、どっちかって言うと大っ嫌いだったんだけど、今付き合ってる彼氏がね、アウトドア派で、キャンプとか釣りとか大好きでさぁ。
それに付き合ってるうちに私も好きになっちゃって、でも彼なしのキャンプは初めてだから不安だったんだけど、七奈がいてくれて良かった〜」

「私もまさか美優がいると思わなくてびっくりしたよ。あっ、木陰だからこの辺にテント張る?」

 今日は気温も高いし、日差しも強かったので、木陰にテントを張る事にした。
私は永斗君の指導もあり、大抵のテントの張り方はわかるようになっていた。
二人で協力してやると、すぐにテントは完成した。

 「完成だね!七奈凄いじゃん!流石キャンプ場で働いてるだけあるね?めっちゃスムーズだったじゃん!」

「いやいや、つい最近まで私も全然上手く張れなくて、テント壊してたりしてから、、、美優三泊するんだよね?一人で三泊もするなんて凄いね」

私の言葉に美優が少し伏目がちに言った。

 「ちょっと、ゆっくりしたくてね。七奈、仕事終わったら少し話せる?」

美優に言われて、私は少し緊張したが「うん」と答えた。