子供達がご飯を食べて片付けている時に、叶人君が洗い物をしていると、他の男の子が叶人君に言ってきた。

「叶人〜俺のも洗っといて！頼む！」

叶人君は、そう言われて一瞬黙っていたが直ぐに言い返した。

　「やだよ！自分のなんだから、自分で洗えよ！」

叶人君が言い返すと男の子は、まさか言い返されると思っていなかったのか、少しびっくりしたようだったが「なんだよ〜ケチ」と言って、自分で洗い始めていた。
前だったら、多分そのまま洗ってあげていただろうが、叶人君がきちんと言い返していた事に私は少し感動した。

　一緒に子供達と片付けをしていたら叶人君が私の方へ来た。

　「頭すごいね」叶人君は私の頭の包帯を見ながら言ってきた。

「凄いでしょ？皆んな怖がってあっという間に逃げていったよ」

「もしかして、その為に怪我したの？」

叶人君が信じられないような顔をして、私の方を見てきた。

　「そんなわけない。流石にそこまでしないよ。単純に、脅かす方が怖くなって逃げようとしたら転んだだけだよ」

叶人君は私の話しを聞いて少し笑った。

「お姉さんは、大人なのに子供みたいだね」

「叶人君は子供なのに、大人みたいだね。でも、叶人君が思っているよりずっと大人は子供かもしれないよ。大人なふりをしているだけかもしれない」

叶人君は少し考えていた。

「そうかも、お母さんは酔っ払って僕にすぐに甘えてくるし。怖い映画みたら、トイレについてきてとか言うし」

「お母さん可愛い人だね。でもそうだね、大人も怖いものはあるし、寂しいし、子供に戻りたい時があるのかも」

　叶人君は少し子供っぽい顔をして私に言ってきた。

　「お姉さんには悪いけど、昨日頭から血を出して倒れて病院へいくお姉さんを見て俺ちょっと笑っちゃったよ。何か全力でおばけ役やってんのかなって。面白かった」

叶人君の笑った顔をみたら、私は胸の中に少し温かい気持ちが湧いてきた。叶人君が合宿にきて少しでも面白いと思ってくれる瞬間があったなら、頭に傷をつけたかいがあったかもしれない。

　「それなら良かったよ。面白いと思ってくれたなら、身体を張っておばけ役やった意味があったよ。たまにはバカみたいな事をするのも楽しいかもよ？バカみたいに言いたい事いって、わがまま言って。そんな日があってもいいと思うよ」

私は叶人君に話しているはずが、まるで自分に言っているような気分になってきた。
自分の気持ちをさらけ出すのが苦手な私が、バカみたいな事をしてみたいと思ったのは、この開放的な自然の中だからだろうか？
　自分の感情を押し殺して、周りに合わせるのも、社会に無難に適応するのも、しなくていいかもと思い出していた。