次の日、子供達は朝食を食べてから、解散となった。朝食は皆んなでホットサンドを作った。

 「お姉ちゃん、昨日のおばけ役マジで怖かったよ!!」

子供達が恐ろしいものを見るように、私に言ってきた。どうやら、昨日の子供達の中には私が流血して倒れている姿を見て、怖すぎてトラウマになる子もいたらしい、、、。大変申し訳ない事をしたとおもうけれど、私も脅かそうとしたわけじゃないから仕方ない。
 
 「七奈ちゃん、頭の傷大丈夫かい」

 出勤してきた岸さんが、朝一で私に聞いてきた。

 「大丈夫です。すみませんでした、二階の鏡割っちゃって、、、」

二階の鏡は私が割ってしまって、もう撤去するしかなくなっていた。私はバイト代から、鏡の代金をひいてくれと、岸さんに頼んだが、岸さんは気にするなと言ってくれた。

 「岸さん、でも私本当に昨日あの鏡に男の子が写っているのを見た気がするんですよね」

私が首をかしげながら言うと、岸さんはコーヒーを飲みながら頷いた。

「本当に見えたんだと思うよ。でも、七奈ちゃんが鏡を割った事でもう出てこないかもね」

「えっ!?それって私恨まれて、祟られるやつですか?」

私が怖くなって聞くと、岸さんはまた少し笑った。

「そんな事はしないだろ。多分、あの子はただ寂しかったんじゃないかな?」

「寂しかった、、、?」

「死にゆく人は、自分の事を忘れられてしまう事が一番寂しいだろう?」

私は少し考えていた。私が病気で死ぬかもしれないと思った時、死んだら自分は何処へいくんだろうとよく考えていた。天国があるのか、生まれ変わるのか、ただ、ふと消えて自分という人間がなくなって無になるのか、そんな事を考えていたら、恐怖に押しつぶされそうになった事があった。

 私はとにかく無になって消えてしまう事が一番怖かった。自分の存在がこの世から無くなって、人の記憶から消えてしまう事が辛かった。

 「特に、大切な人の心の中には一生、生き続けていたいと思うのが普通じゃないかな?だからあの子も人が沢山いる時にふと、人前に現れたくなっちゃうんじゃないかなって思ってたんだが」

岸さんに言われて私は何となく納得した。そして、そう考えるとあの男の子事が怖いとは思わなくなっていた。