私の絶叫と、鏡が割れる音を聞いて、すぐに永斗君が廊下を走ってきた。
私は自分の頭を手で触って見ると、生温かい真っ赤な血が自分の手にべっとりとついていた。
 それを見ただけで、私は更に血の気がひいていくのを感じた。鏡に自分の頭が激突して、その瞬間に鏡が割れて、頭を切ったようだった。不思議と痛みは感じる事なく、ただ自分の脈拍だけどくどくと、はやく感じた。

 「七奈!!!」永斗君は、血だらけの私を見て、血相を変えて走ってきた。

 「永斗君、、、頭切れた、、、」

私がそう言うと、永斗君は私をゆっくり横にして寝かせた。

 「今、夜間救急に電話するから、そのまま動かずじっとしてろ」

永斗君は携帯で、病院に電話し始めた。その間、一階からまた次々に、子供達が上がってきたが、私の血だらけの顔を見て「ぎゃー!!」
と叫んで、走っていってしまう。
 そりゃそうだ。口裂け女が頭から流血していたら、余計に怖いだろう。
 なんだか、情けなさと恥ずかしさで胸がいっぱいになっていた。そして、段々頭がズキズキと痛みだしてきた。
 その後、永斗君が病院と連絡がついて夜間の救急外来に車で連れて行ってくれた。

 頭から流血している口裂け女と、ピエロの永斗君を見て、看護師はびっくりしていた。
診察をしてくれた先生は「今日はハロウィンだったけかな」と、私に笑って言ってきた。
 結局私は頭を三針縫って、頭に包帯を巻かれた。帰りの車の中では、永斗君が堪えられずに笑い出した。

「笑いごとじゃないから、、、」

「ごめん、ごめん。でも、そんな本気で気合いいれて驚かさなくてもいいのに。子供達七奈ちゃん見て本気でびっくりしてたよ」

「私だって、好きこのんでこんな事になってないから、頭から血が噴き出てびっくりしたよ。でも、本当におばけを見たんだって」

私が言っても、永斗君は笑っているだけだった。

 「いいけどね!別に信じてくれなくても」

私が少し怒って言うと、永斗君が信号待ちで、私の頭を覗きこんだ。

「痛くない?大丈夫?」私は永斗君と距離が近かったので、少しドキッとした。

「だ、、、大丈夫、もう痛くない」

「傷、残らないといいな。額だもんな」

永斗君が少し心配そうに言った。私は自分の頭の傷なんて何も気にしていなかった。

「良いよ。残っても、私は全然気にしない」

「でも、女の子なんだから、、、」

永斗君がやっぱり心配そうに言って、信号が青に変わるとアクセルを踏んだ。
私は何故か自分の心臓がドキドキしているのを感じて首を振った。