僕は待つ、君の頭の片隅で

 私は、永斗君の発言に思わず止まってしまった。

「、、、今のって笑うやつ?」

「笑わないやつ。真剣なやつ」

永斗君がそう言ってにこっと笑った。その笑顔を見て、私はなんだかホッとした。

「何?その条件」

「だって、わかんないでしょ?俺って優しいじゃん?皆んなに。自分で言うのもなんだけど、彼氏にしたら超いい彼氏になるんだと思うんだよ。だから、一緒に働いたら七奈ちゃん俺の事『いいなぁ〜好きっ』って思うかもしれないでしょ?」

なんだか納得いくような、いかないような話しだった、、、。

 「うん、、、。まあ、大丈夫だと思うよ。私は最近彼氏に浮気されて今、全世界の男を信用出来ないと思ってるくらいだから。恋愛する気ないし。うん、、、それは大丈夫」

 私がそう言うと、永斗君は私を見てまた笑った。

 「そうかぁ〜大丈夫かぁ!じゃあ、いっかぁ〜一緒に働く?七奈ちゃん!」

 永斗君が私に手を差し出した。私は永斗君の手を強く握った。

 「うん!よろしくね」

 永斗君の手を握った時、私は何故か胸が高鳴った。なんでこんなに胸がざわつくのかわからなかった。けれど、この夏をこのキャンプ場で過ごせる事が私は楽しみだった。
 就活に夢中になっている時は、何処で働きたいとか、何がやりたいとかは全くなかったが、今は凄くここで働いてみたいと思っていた。

「楽しみだなぁ〜」私が焚き火に手をかざして呟くと、永斗君が私に言った。

 「そうだよ、人生楽しいのが一番なんだから」

 「永斗君、いつも楽しそうだもんね」

 「楽しいよ。生きてることが楽しいよ」

まるで私と正反対だと思った。私は生きている事が辛すぎた。だからあの日自分の人生を捨てたいと思っていたけれど、永斗君は生きている事が楽しいと言う。
 そんな永斗君を見ていると、まだまだ私も自分の人生を楽しめるんじゃないかと思えるから不思議だ。

「不思議な人」

「俺のこと?まあ、不思議ではあるかもね。ミステリアスでしょ?はい!七奈ちゃんにプレゼント」

永斗君が私にアルミホイルにつつまれたジャガイモを渡してくる。

「いつの間にいれてたの?マジシャンなの?」

「そうそう。知らなかった?焚き火で焼いたジャガイモは絶品だよ。食べてみ?」

 アルミに包まれた、ジャガイモはホクホクしていて本当に美味しかった。

「美味しい!」

「でしょ?美味いのよ〜美味しいもん食べて、今日は初めてのテント泊楽しんで」

私は少し不安だった。テントで泊まるのは初めてだし、外で寝た経験なんてなかったから、ちゃんと眠れる自信がなかった。

「眠れるかなぁ〜ちょっとドキドキするなぁ」

「何かあったら、管理棟に来なよ。俺はずっといるから」

「じゃあ、この鈴で呼びだすね。鳴らしたら来てくれる?」

私は今日買った鈴を取り出した。鳴らすと綺麗な鈴の音が鳴った。

「それ、熊よけだからね。まあ、いいや。いいよ!聞こえたら、かけつけるよ」

永斗君がそう言ってくれると、私は安心出来る気がしていた。私は日が暮れて真っ黒にかたどられている富士山を、永斗君と眺めていた。