僕は待つ、君の頭の片隅で

 「七奈ちゃん!焚き火しよう!」

私が一人で本を読んでいると、永斗君が私に声をかけてきた。
 永斗君は一人で、焚き火台に火を焚べていた。
パチパチと木の爆ぜる音が聞こえて、手をかざすとじんわりと温かった。

 「凄いね。焚き火って綺麗だね、昨日もストーブの火をみて思ったけど、火って見てると何か癒されるよね」

「癒し効果があるらしいよ、ほら七奈ちゃんも薪入れてみな?」

「え?いいの?」

 永斗君が私に、薪を手渡してくる。
私は恐る恐る、その薪を焚き火台に入れた。

 「おっ!上手。火は大切に大切に育てていくんだよ。そうすると、大きな炎になっていく。子育てと一緒だよ」

「永斗君、子育てした事ないでしょ?でも何か楽しいね。火遊びってした事なかったけど、面白い」

「そう。楽しいのよ、危険な事ってスリルがあって楽しいの」

永斗君は笑いながら、薪をまた炎になげいれる。

「それは、何か悪い男って感じだね。でも、永斗君は優しいし、ハマったら沼男って感じだよ」

「沼男!?何それ、それ悪い男っぽくない?俺はいい男だから、一途だよ」

「でも皆んなに優しそうじゃん」

「優しいよ。皆んなが笑顔になってくれたら、それが俺の幸せだから。でも好きな子は特別だよ」

永斗君みたいな人と付き合ったら彼女は少し不安になりそうだと思った。永斗君はきっと皆んなに優しい。まあ、今の私からしたら男全般が信じられなくなっているが。

「七奈ちゃん、明日で帰るんでしょ?少し元気になった?」

「なった。永斗君のおかげで、だいぶ人間らしい感情が蘇ってきました。ありがとうございます」

「それは、良かった。また元気がなくなったらたまに富士山見を見に来るといいよ。富士山は元気をくれるから」

「確かに、、、こんな綺麗な景色を毎日見て、働けるなんて羨ましいなぁ。
 私、景色を見てこんなに心を動かされた体験なかったかもしれない」

 私はもう少し、ここにいたい気持ちになっていた。もう少し、この自然の中でただ自由に生きてみたかった。永斗君みたいに、、、。

「でしょ?毎日楽しいよ。自然の中で働くっていいんだよ」

「そうだね、、、私も働きたいかも」

「え?」私の発言に永斗君がびっくりした顔をする。

「私もここで働きたいかも!!!!」

「いやいや、声張らなくても聞こえてるから。マジで?」

 自分でも不思議だが、何故かそんな風に思った。このキャンプ場で働いてみたいと、、、。

 「うん!無理かな、人足りてるかな?大学の夏休み期間だけでいいから働かせてもらえないかな?」

永斗君は少し難しそうな顔をしていた。
そして、少し悩みながら言った。

 「夏休みは、オンシーズンで忙しいから手伝ってくれたら嬉しいけど、でも廃校に寝泊まりする事になるけどいいの?」

 確かに、一番の難関はあの廃校に住み込む事な気がする。一カ月もの間寝泊まりすれば慣れるのだろうか?あの怖い廃校に住み込むとしても、それでも私は働いてみたいと思っていた。

 「いいよ。多分、慣れるから」

私が真剣な顔で言うと、永斗君がまた薪を焚べながら少し考えていた。

 「オーナーに話して、多分いいって言うと思うけど、、、」

珍しく、永斗君の言葉の歯切れが悪い。何か問題でもあるんだろうか?

 「思うけど、、、?」

 私が聞き返すと、永斗君がいつになく真剣な表情になって、私は少しどきっとした。

 「一つ条件があります、、、」

「条件、、、?」永斗君がいきなりそんな事を言うので私は少し不安になった。

 「そう、条件。、、、俺の事を絶対に好きにならないこと」