僕は待つ、君の頭の片隅で

 その後、私と永斗君は他愛もない話しをしていた。今日は見る事が出来なかったが、ここから見える富士山の美しさを永斗君は教えてくれた。他にもキャンプ場にきた面白い人の話しや、好きな食べ物の話しなど色々な事を私に教えてくれた。
 初めて会った人と、こんなに自然に楽しく話せる事が不思議だった。元々私は人見知りで、初対面の人が苦手だったが、永斗君とは何故か気も使わず自然体で話せていた。

 そしていつのまにか、私は自分が就職活動が上手くいかずに次第に病んでしまった話しまでしていた。永斗君は特に私に何も聞かずに、静かに私の話しを聞いてくれていた。
 
 「ごめんね、つまらない話しして」

私が話しすぎたと思って謝ると、永斗君がまたにこっと笑った。

 「いいよ。何でも聞くよ」

 「話し聞くのが上手だね。不思議と何でも話しちゃうね、カウンセラーみたいだよ」

「人の話しを聞いてその人がすっきりしてくれたら嬉しいよね」

「そうなの?」

「大きな幸せをあげられなくても、こうさ、ちっさな幸せなら俺でも人にあげれるんじゃないかなぁって」

「確かに、くれてるかも?」

今日出会ったばかりだったが、永斗君はぎこちなくにしか笑えなかった私を、すぐに笑わせてしまった。不思議な人だと思った。

「俺は人を喜ばして生きていたいのよ」

「私はもっと強く生きていきたい、、、」

私の本音だった。皆んな同じ様に就職活動をしたり、恋愛をしたりしているのに、どうして自分はこんなに弱くてすぐに折れてしまったのだろう。普通に周りが出来ている事が私には出来なかった。
 それが何よりもショックだし、落ち込んだ。

 「どうして、私はこんなに弱いんだよー!」

私がいきなり叫ぶと、永斗君が笑った。

 「弱い方がいいよ。強くなって鈍感にならないで、皆んなが何も考えずにやっている事に、疑問を感じているのは、七奈ちゃんがちゃんと自分の人生を生きようとしてる証拠だよ。
 弱いからこそ、出来る事が沢山あると思うよ」

、、、弱いからこそ出来る事?

 そんな事があるんだろうか。ただ永斗君の言葉は、私の胸にすーっと入ってきて、私の心を落ち着かせた。そして気がつくと、私の目から小さな涙が溢れていた。
 何で涙が出たのかは、自分でもよくわからなかった。けれど、悲しかったわけじゃない。
自分自身を認めてもらえた気がして嬉しかったのかもしれない。
 私はずっと、そのままの自分を誰かに認めて貰いたかっただけなのかもしれない。