目を開けた瞬間に飛び込んで来たのは、格子状になった、天井の柄だった、、、。
重たい頭の痛さを感じると、夢から現実世界に戻ってきたようだった。
私は、動かしたい自分の意思とは反対に鉛のように重たい身体を一つも動かす事が出来ずに、眼球だけ動かした。
「七奈?七奈?」
私の名前を呼ぶ声が頭の上から聞こえた。
私の視界に涙を溜めた目で私を見ている、お母さんの姿が目に入る。
「良かった、、、良かった。七奈、無事に手術は終わったのよ?何処か痛む?今看護師さんを呼んでくるから」
お母さんはそう言って、病室を出て行った。
私はそんな慌てたお母さんを見て冷静に思っていた。
(ナースコールを押せばいいのに、、、)
そんな事を思っていると、様々な記憶が一気にぶわぁーっと蘇ってくる。
、、、そうか。
私の命は無事にこの世に繋ぎ止める事が出来たのか。
そう思うと、長い間不安だった胸の重りから解放されたような気分になった。
私の頭にあった脳の病気は、発症した場所が悪くて、難しい手術でしか治せなかった。
成功確率は低く、そのまま放っておけば死ぬだけだった。高校一年生の時に病気がわかり、高校二年生になって手術をする事になるまで、私の胸の中では物凄い葛藤があった。
それは、冗談ではなく『明日隕石が落ちてきて、あなたは死にます。あなたはどうしますか?』と聞かれているようなものだった。
間違いなく、私は生と死の間を綱渡りしていた。
まだ十七歳なのに、私の命の蝋燭はゆらゆらと揺らめきながら、後少し風が吹けばすぐに消えてしまいそうなくらいの小さい光だった。
誰かの人生と交換したいと真剣に思ったし、こんな病気になった自分の運のなさも恨んだ。
けれど、何とか私の命はこの世界に留まる事が出来たらしい。
そう思うと私は身体の底から、ふつふつと喜びが湧いてきた。病室の真っ白な壁を見つめて、これからどんな自分の人生を描いて行こうかとワクワクしていた。
廊下に慌ただしい足音が響いて、お母さんが看護師を連れて帰ってきた。
「七奈?大丈夫?」
私は身体を動かせないので、瞬きで声に反応した。私の担当女性看護師、まだ二十代の宮下さんが、私の顔を見て安心したような顔をしている。
「良かったわ、血圧も安定してる。七奈ちゃん?無事に手術は成功したのよ、今は頭が痛むかもしれないけれど時期に治るわ。
よく頑張ったわね。これからは皆んなと同じように、普通に自分の好きな人生を送っていく事が出来るのよ」
宮下さんの言葉に、私は胸がいっぱいになって泣きそうになった。
これから、私におこるであろう人生の全ては、どんな事であってもキラキラと眩しい太陽の光のように、輝かしい物であると思っていた。
命さえあれば、なんでも出来るはずと、希望しかないような気がしていた。
けれど、人間は悲しいか忘れゆく生き物だ。
こんなに辛い思いをして、必死に命を繋ぎ止めたのに、その奇跡さえ直ぐに忘れてしまうのだ。
おかしな程簡単に、健康に自分が生きている事は当たり前だと思いはじめていた、、。
そして私はいつしか、あんなに心の底から生きたいと願っていたのに、今度は逆にこの命を投げ出したいと思っていた。いらないおもちゃを投げ捨てる子供のように、、、。
重たい頭の痛さを感じると、夢から現実世界に戻ってきたようだった。
私は、動かしたい自分の意思とは反対に鉛のように重たい身体を一つも動かす事が出来ずに、眼球だけ動かした。
「七奈?七奈?」
私の名前を呼ぶ声が頭の上から聞こえた。
私の視界に涙を溜めた目で私を見ている、お母さんの姿が目に入る。
「良かった、、、良かった。七奈、無事に手術は終わったのよ?何処か痛む?今看護師さんを呼んでくるから」
お母さんはそう言って、病室を出て行った。
私はそんな慌てたお母さんを見て冷静に思っていた。
(ナースコールを押せばいいのに、、、)
そんな事を思っていると、様々な記憶が一気にぶわぁーっと蘇ってくる。
、、、そうか。
私の命は無事にこの世に繋ぎ止める事が出来たのか。
そう思うと、長い間不安だった胸の重りから解放されたような気分になった。
私の頭にあった脳の病気は、発症した場所が悪くて、難しい手術でしか治せなかった。
成功確率は低く、そのまま放っておけば死ぬだけだった。高校一年生の時に病気がわかり、高校二年生になって手術をする事になるまで、私の胸の中では物凄い葛藤があった。
それは、冗談ではなく『明日隕石が落ちてきて、あなたは死にます。あなたはどうしますか?』と聞かれているようなものだった。
間違いなく、私は生と死の間を綱渡りしていた。
まだ十七歳なのに、私の命の蝋燭はゆらゆらと揺らめきながら、後少し風が吹けばすぐに消えてしまいそうなくらいの小さい光だった。
誰かの人生と交換したいと真剣に思ったし、こんな病気になった自分の運のなさも恨んだ。
けれど、何とか私の命はこの世界に留まる事が出来たらしい。
そう思うと私は身体の底から、ふつふつと喜びが湧いてきた。病室の真っ白な壁を見つめて、これからどんな自分の人生を描いて行こうかとワクワクしていた。
廊下に慌ただしい足音が響いて、お母さんが看護師を連れて帰ってきた。
「七奈?大丈夫?」
私は身体を動かせないので、瞬きで声に反応した。私の担当女性看護師、まだ二十代の宮下さんが、私の顔を見て安心したような顔をしている。
「良かったわ、血圧も安定してる。七奈ちゃん?無事に手術は成功したのよ、今は頭が痛むかもしれないけれど時期に治るわ。
よく頑張ったわね。これからは皆んなと同じように、普通に自分の好きな人生を送っていく事が出来るのよ」
宮下さんの言葉に、私は胸がいっぱいになって泣きそうになった。
これから、私におこるであろう人生の全ては、どんな事であってもキラキラと眩しい太陽の光のように、輝かしい物であると思っていた。
命さえあれば、なんでも出来るはずと、希望しかないような気がしていた。
けれど、人間は悲しいか忘れゆく生き物だ。
こんなに辛い思いをして、必死に命を繋ぎ止めたのに、その奇跡さえ直ぐに忘れてしまうのだ。
おかしな程簡単に、健康に自分が生きている事は当たり前だと思いはじめていた、、。
そして私はいつしか、あんなに心の底から生きたいと願っていたのに、今度は逆にこの命を投げ出したいと思っていた。いらないおもちゃを投げ捨てる子供のように、、、。



