ふわりと目が覚めた。暗闇に感じるのは、布団の温もり。いつもよりずっとふかふかしている気がする。モゾモゾと体を横向きにすると、目の前に綺麗な寝顔が現れた。「うわっ」という声を必死で飲み込んで、その造形を眺める。この綺麗な人は、葵の恋人。そうだ、恋人だ。綺麗すぎてまさかと思ったけれど、間違いない。
そういえばと思い出す。今日は次期アイドルグループの選抜メンバーに選ばれた記念に盛大にお祝いをした。それなのに、もっとすごいイチャイチャとやらをしなかった。ケーキを食べ終わった葵が大あくびをした姿を見て、柚月が一番風呂をすすめてくれたのだ。そして次に風呂へ行った柚月を待つ間に、葵はうっかり寝てしまったのだった。勿体無いことをした。もっとすごいイチャイチャとやらを、葵は絶対にしたかったのに。
起こさないようにそっと手を伸ばして、サラサラの髪を撫でる。髪でさえもこんなに綺麗だなんて、この人はどれほど神様に愛されているのだろう。
葵にとっては、初めての恋だった。恋なんてしないと思っていたのに、あっけなく落ちた恋。そういえば、この恋人にはまだ言ったことがなかった。葵がどうして恋に落ちたのか。
ふわりと恋人の瞼が上がって、綺麗な瞳がのぞいた。目を開けると尚更かっこいいのかと新鮮に驚くことができる。
「……葵くん」
いつもより掠れた声が色っぽくて、そこもかっこいい。思わず「へへっ」と笑って彼の胸に擦り寄ると、温かな腕で包んでくれた。
「柚月、知ってる?」
「……なにを?」
「俺、ドッヂボールの時に柚月に惚れたんだ」
「……冗談でしょ」
「それが本当なの。小学生みたいだろ」
「ふふ、うん。……葵くんが小学生みたいで良かったよ」
本当にその通りだ。葵も、小学生みたいで良かったなと思う。
「恋って、ひらひらふわふわってするよね」
「……うん?」
「苦しくて辛い時もあるけど、柚月がいるこの世界が煌めいて見えるんだ」
葵が言い終わった瞬間に、柚月がくるりと葵を見下ろす体勢になった。上から見下ろされると、もっとかっこいい。近づいてくる唇を待ち望んで、葵は目を瞑った。
「可愛い」
聞こえたその声に目を開けようとしたところで、合わさった唇。何度も啄むようにキスすることが、柚月は好きなのだろうか。葵は柚月しか知らないからわからないけれど、これは普通なのかなと考える。
「葵くん、なに考えてるの」
突然唇を離されたと思って瞼を開くと、目の前の柚月の瞳がギラリと光る。
「なにも、考えてないよ」
「嘘。言っておくけど、このキスはまだ子供のキスだよ」
「……え?」
「本当はもっと凄いんだから」
「もっと?」
「そう」
それならば、どうして柚月は葵に本物とやらをしないのだろう。それが不本意で思わず唇を尖らせると、すかさずキスを落とされる。
「んっ、これ?」
「違う」
「じゃあどうやるの?」
「教えてほしい?」
「うん」
そうして教えてもらったキスは、食べられるのではないかと怖くなるほどだった。怖くて、ゾワゾワして、苦しくて、気持ち良い。唇が離れた時には息も絶え絶えだったけれど、葵は幸せだった。
「もっと」
葵が強請ると息を吸い込む間も無く噛みつかれる。ひらひらふわふわ。葵の恋は、どこまで続くのだろう。願わくば命が続く限り、この綺麗な恋人と煌めく世界で一緒にいられたら良い。葵は全身を柚月に委ねて、静かに瞼を閉じるのだった。
そういえばと思い出す。今日は次期アイドルグループの選抜メンバーに選ばれた記念に盛大にお祝いをした。それなのに、もっとすごいイチャイチャとやらをしなかった。ケーキを食べ終わった葵が大あくびをした姿を見て、柚月が一番風呂をすすめてくれたのだ。そして次に風呂へ行った柚月を待つ間に、葵はうっかり寝てしまったのだった。勿体無いことをした。もっとすごいイチャイチャとやらを、葵は絶対にしたかったのに。
起こさないようにそっと手を伸ばして、サラサラの髪を撫でる。髪でさえもこんなに綺麗だなんて、この人はどれほど神様に愛されているのだろう。
葵にとっては、初めての恋だった。恋なんてしないと思っていたのに、あっけなく落ちた恋。そういえば、この恋人にはまだ言ったことがなかった。葵がどうして恋に落ちたのか。
ふわりと恋人の瞼が上がって、綺麗な瞳がのぞいた。目を開けると尚更かっこいいのかと新鮮に驚くことができる。
「……葵くん」
いつもより掠れた声が色っぽくて、そこもかっこいい。思わず「へへっ」と笑って彼の胸に擦り寄ると、温かな腕で包んでくれた。
「柚月、知ってる?」
「……なにを?」
「俺、ドッヂボールの時に柚月に惚れたんだ」
「……冗談でしょ」
「それが本当なの。小学生みたいだろ」
「ふふ、うん。……葵くんが小学生みたいで良かったよ」
本当にその通りだ。葵も、小学生みたいで良かったなと思う。
「恋って、ひらひらふわふわってするよね」
「……うん?」
「苦しくて辛い時もあるけど、柚月がいるこの世界が煌めいて見えるんだ」
葵が言い終わった瞬間に、柚月がくるりと葵を見下ろす体勢になった。上から見下ろされると、もっとかっこいい。近づいてくる唇を待ち望んで、葵は目を瞑った。
「可愛い」
聞こえたその声に目を開けようとしたところで、合わさった唇。何度も啄むようにキスすることが、柚月は好きなのだろうか。葵は柚月しか知らないからわからないけれど、これは普通なのかなと考える。
「葵くん、なに考えてるの」
突然唇を離されたと思って瞼を開くと、目の前の柚月の瞳がギラリと光る。
「なにも、考えてないよ」
「嘘。言っておくけど、このキスはまだ子供のキスだよ」
「……え?」
「本当はもっと凄いんだから」
「もっと?」
「そう」
それならば、どうして柚月は葵に本物とやらをしないのだろう。それが不本意で思わず唇を尖らせると、すかさずキスを落とされる。
「んっ、これ?」
「違う」
「じゃあどうやるの?」
「教えてほしい?」
「うん」
そうして教えてもらったキスは、食べられるのではないかと怖くなるほどだった。怖くて、ゾワゾワして、苦しくて、気持ち良い。唇が離れた時には息も絶え絶えだったけれど、葵は幸せだった。
「もっと」
葵が強請ると息を吸い込む間も無く噛みつかれる。ひらひらふわふわ。葵の恋は、どこまで続くのだろう。願わくば命が続く限り、この綺麗な恋人と煌めく世界で一緒にいられたら良い。葵は全身を柚月に委ねて、静かに瞼を閉じるのだった。



