目の前に写るのは、一面透き通った海。
サンゴ礁や魚の群れがガラスのような透明な海を彩る。
少し傾いている太陽は海を照らし、まるで宝石のように光っていた。
ただ、何もおきることもないまま時は過ぎていく。
その過ぎゆく時さえも、まるで止まっているように感じるほど美しかった。
風が起きることもなく、雲も動くことはなかった。
絵に描いたような美しい景色は、どこか懐かしく、ずっと、いつまでもここに居られるような気がした。
――――――――
――
「ピピピピ...」
突然耳に鳴り響く音にばっと目を開く。
視界いっぱいに光が入り込み、思わず目を閉じる。足にはめくりあげた布団の重みが感じられた。
「なあんだ。夢か。」
あれが現実だったら良かったのに。
学校に行く準備をする。あの世界だったら学校なんて行かなくてもいいのに。
学校に行って、授業が始まった。授業は何を言っているのか全くわからない。
はあ、またあの夢が見られたな。
つまんないや。
.........。
坂を下っていた。
なんでかは知らないけど、どっかで見たような、見ていないような坂だ。
自分以外にも、いろんな人が坂を下っていた。
自転車、トラック、犬...あと、アップルパイを持ったおばちゃん。
だんだん歩いているうちに疲れてきて、坂をすべることにした。
スノーボードを出して滑っていると、坂が家になっていて家に帰るとぶどうさんがおにぎりを作って私の帰りを待ってくれていた。
おにぎりを食べると私はそのまま寝てしまった。
¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯
¯¯¯¯¯
「こら!居眠りするな川昨!」
誰かが大声で私の名字を呼んだ。先生だった。
一瞬夢かと思ったが違った。周りの視線が痛い。
さっき食べたはずのおにぎりの味がしなかったことに気付き、目に涙がにじむ。
ぶどうさんは夢で初めて会った人なのに温かくしてもらったのに、何度も会ったことのある先生は私に厳しい。
なんで私ばっかり...
やがて休み時間になり、みんなは外に行ったりする中、私は一人机でウトウトしていた。
―――――――
――――
飛行機が大きく揺れていた。
警告音のような音も鳴り響き、みんなパニックになっている。
緊急脱出をすることになり、出口に人が集まる。
次々と飛び降りて行き、自分の番がやってきた。意を決して飛び降りると、そこは海だった。
夕日が海に反射し、鳥が夕日を目指して飛んでいた。
鳥の足を掴むと、鳥は一瞬沈んだが、また夕日を見つめて飛んでいく。
どこへ行くのだろう。
...。
「キーンコーンカーンコーン…」
チャイムの音が鳴り響く。
気が付いたら教室にみんながいた。
机の上を見るとまだ次の授業の準備ができていなかった。
急いで授業の支度をしていると、周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
ここにいるのも嫌になり仮病を使って保健室へ行かせてもらった。
なんで私ばっかり…
保健室の白いベッドに寝転がる。どこからか授業をしている音が聞こえる。
その音も段々と遠ざかっていくような気がした。
―――――――
――――
――
勉強をしていた。
教科書の問題を解く。
1+1=2、0,25×4=1、1/4+1/3=7/12…
0,25÷3/4×2=
…?
がんばって答えを見つけようとするが、わからない。
数十分考えてみたが、やはりわからない。
「はあ⁉こんなの解けるわけないでしょ⁉」
そう言いながら教科書をビリビリと破る。
気持ちいいくらい紙はちぎれてゆく。
よかった。これでこの勉強ともおさらばできるんだ!
......。
「川昨さーん、調子はどうですか。」
目を開けると、そこは保健室で保険の先生がそこにいた。
「大丈夫そうだから」保健室を出ると、給食の時間になっていた。
クラスに戻り席に着くと、後ろのほうから声が聞こえる。
「寝ることしか取り柄ないじゃん、笑える。」
なんで私ばっかり…
給食が終わり、昼休みになった。なんで学校なんてあるんだろ。
人間関係で疲れるだけなのに。
こんなことを考える自分も馬鹿馬鹿しくなり、目を閉じた。
――――
―――――――――
自転車で颯爽と道を走る。
次々と周りのものを追い抜いていく。
どこかへ向かう自分はとても楽しそうだった。
道の先の方で誰かが立っている。
急いでブレーキをかけると、そこには市氏さんがいた。
「川昨さん、それ借りていい?」
と自転車を指差した。
まあ、徒歩で行けばいいかと思って市氏さんに自転車を借した。
市氏さんは自転車で颯爽と走っていき、私は後を追った。
......。
...
「川昨さーん、起きてー。」
目をこすると、そこは学校で、横には隣の席の市氏さんがいた。
その後授業を受け、下校時刻になる。
友達と喋りながら一緒に帰ることはせず、真っ直ぐに家に帰る。
家に帰り、宿題を始める。
最初の問題くらいは解けるだろうと思っていたが、全く分からない。
そもそも、問題文が何を言っているのかもよく分からなかった。
なんで私ばっかり...
宿題は諦め、机に突っ伏しながら、目を閉じる。
―――――
――
私はバクのぬいぐるみだ。
子供と遊ぶのが、私の役目。
他にもぬいぐるみの仲間がいて、犬のワン太、馬のハム、象のパオ太だ。
扉がガチャと開き、遊び相手のテイトが来た。
「今日はワン太とハムとパオ太でおままごとしましょ!」
テイトはそう言うと私以外の三人を連れて行ってしまった。
私だけが一人取り残され、向こうからは楽しそうな声が聞こえた。
裏切られたような気持がどんどん強くなっていく。
......。
「顭ーご飯だよー。」
お母さんの声が聞こえ、体を起こすと、香ばしいいい匂いがした。
リビングに行くと、机の上には美味しそうなご飯があった。
「いただきまーす。」
ご飯はとても美味しくて、嫌なことも忘れられそうだった。
美味しいご飯は気が付いたら消えていて、空っぽのお皿とお箸が残った。
寝る準備をして、ベッドに入る。
宿題はなかったことにした。
目線を真っ直ぐにすると、天井の白色が見えた。
今日もいい夢、見れたらいいな。
―――――――
――――
掃除の時間、疲れた足で水道場に行き、黒ずんだ雑巾を水で洗う。
雑巾は汚い水を出しながら水に当たっていた。
しばらく雑巾を濡らしてみたが、なかなか綺麗にならない。
布と布を擦り合わせて洗うと多少はマシにはなったが、まだところどころ黒ずんだところがあった。
洗剤を使ったり何回も洗ったりしたが全く黒ずんでいるところは白くならなかった。
結局綺麗にならず、その雑巾を捨てることにした。
...。
「ピピピピ…」
もう朝か。
そう思い目をこすったが、まだ辺りは暗かった。
時計のアラームを間違えたのだろう。時計を見ると、まだ夜中の二十三時十一分だった。
目の前に写るのは一面の真っ暗闇。
誰かからみられているように感じてサッと布団に潜る。
もしこの家に私の家族以外の誰かがいたらどうしよう。
そんな不安を抱えながら布団の中でうずくまる。
…布団の中は温かくて、安心するな。
―――――――――
―――――
とても綺麗で、儚かった。
触れようとしても手が届かないくらい遠い存在だった。
でも、それはとても温かく、近くで見守っているようだった。
それを追っているときは、とても楽しくて、どんな夢も叶いそうなくらいだった。
真っ直ぐ前を向いて、走り続ける。
それは決して楽な道ではないけれど、でも、ずっと進みたいと思った。
ずっとずっと、この夢のような時間が続きますように。
サンゴ礁や魚の群れがガラスのような透明な海を彩る。
少し傾いている太陽は海を照らし、まるで宝石のように光っていた。
ただ、何もおきることもないまま時は過ぎていく。
その過ぎゆく時さえも、まるで止まっているように感じるほど美しかった。
風が起きることもなく、雲も動くことはなかった。
絵に描いたような美しい景色は、どこか懐かしく、ずっと、いつまでもここに居られるような気がした。
――――――――
――
「ピピピピ...」
突然耳に鳴り響く音にばっと目を開く。
視界いっぱいに光が入り込み、思わず目を閉じる。足にはめくりあげた布団の重みが感じられた。
「なあんだ。夢か。」
あれが現実だったら良かったのに。
学校に行く準備をする。あの世界だったら学校なんて行かなくてもいいのに。
学校に行って、授業が始まった。授業は何を言っているのか全くわからない。
はあ、またあの夢が見られたな。
つまんないや。
.........。
坂を下っていた。
なんでかは知らないけど、どっかで見たような、見ていないような坂だ。
自分以外にも、いろんな人が坂を下っていた。
自転車、トラック、犬...あと、アップルパイを持ったおばちゃん。
だんだん歩いているうちに疲れてきて、坂をすべることにした。
スノーボードを出して滑っていると、坂が家になっていて家に帰るとぶどうさんがおにぎりを作って私の帰りを待ってくれていた。
おにぎりを食べると私はそのまま寝てしまった。
¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯
¯¯¯¯¯
「こら!居眠りするな川昨!」
誰かが大声で私の名字を呼んだ。先生だった。
一瞬夢かと思ったが違った。周りの視線が痛い。
さっき食べたはずのおにぎりの味がしなかったことに気付き、目に涙がにじむ。
ぶどうさんは夢で初めて会った人なのに温かくしてもらったのに、何度も会ったことのある先生は私に厳しい。
なんで私ばっかり...
やがて休み時間になり、みんなは外に行ったりする中、私は一人机でウトウトしていた。
―――――――
――――
飛行機が大きく揺れていた。
警告音のような音も鳴り響き、みんなパニックになっている。
緊急脱出をすることになり、出口に人が集まる。
次々と飛び降りて行き、自分の番がやってきた。意を決して飛び降りると、そこは海だった。
夕日が海に反射し、鳥が夕日を目指して飛んでいた。
鳥の足を掴むと、鳥は一瞬沈んだが、また夕日を見つめて飛んでいく。
どこへ行くのだろう。
...。
「キーンコーンカーンコーン…」
チャイムの音が鳴り響く。
気が付いたら教室にみんながいた。
机の上を見るとまだ次の授業の準備ができていなかった。
急いで授業の支度をしていると、周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
ここにいるのも嫌になり仮病を使って保健室へ行かせてもらった。
なんで私ばっかり…
保健室の白いベッドに寝転がる。どこからか授業をしている音が聞こえる。
その音も段々と遠ざかっていくような気がした。
―――――――
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――
勉強をしていた。
教科書の問題を解く。
1+1=2、0,25×4=1、1/4+1/3=7/12…
0,25÷3/4×2=
…?
がんばって答えを見つけようとするが、わからない。
数十分考えてみたが、やはりわからない。
「はあ⁉こんなの解けるわけないでしょ⁉」
そう言いながら教科書をビリビリと破る。
気持ちいいくらい紙はちぎれてゆく。
よかった。これでこの勉強ともおさらばできるんだ!
......。
「川昨さーん、調子はどうですか。」
目を開けると、そこは保健室で保険の先生がそこにいた。
「大丈夫そうだから」保健室を出ると、給食の時間になっていた。
クラスに戻り席に着くと、後ろのほうから声が聞こえる。
「寝ることしか取り柄ないじゃん、笑える。」
なんで私ばっかり…
給食が終わり、昼休みになった。なんで学校なんてあるんだろ。
人間関係で疲れるだけなのに。
こんなことを考える自分も馬鹿馬鹿しくなり、目を閉じた。
――――
―――――――――
自転車で颯爽と道を走る。
次々と周りのものを追い抜いていく。
どこかへ向かう自分はとても楽しそうだった。
道の先の方で誰かが立っている。
急いでブレーキをかけると、そこには市氏さんがいた。
「川昨さん、それ借りていい?」
と自転車を指差した。
まあ、徒歩で行けばいいかと思って市氏さんに自転車を借した。
市氏さんは自転車で颯爽と走っていき、私は後を追った。
......。
...
「川昨さーん、起きてー。」
目をこすると、そこは学校で、横には隣の席の市氏さんがいた。
その後授業を受け、下校時刻になる。
友達と喋りながら一緒に帰ることはせず、真っ直ぐに家に帰る。
家に帰り、宿題を始める。
最初の問題くらいは解けるだろうと思っていたが、全く分からない。
そもそも、問題文が何を言っているのかもよく分からなかった。
なんで私ばっかり...
宿題は諦め、机に突っ伏しながら、目を閉じる。
―――――
――
私はバクのぬいぐるみだ。
子供と遊ぶのが、私の役目。
他にもぬいぐるみの仲間がいて、犬のワン太、馬のハム、象のパオ太だ。
扉がガチャと開き、遊び相手のテイトが来た。
「今日はワン太とハムとパオ太でおままごとしましょ!」
テイトはそう言うと私以外の三人を連れて行ってしまった。
私だけが一人取り残され、向こうからは楽しそうな声が聞こえた。
裏切られたような気持がどんどん強くなっていく。
......。
「顭ーご飯だよー。」
お母さんの声が聞こえ、体を起こすと、香ばしいいい匂いがした。
リビングに行くと、机の上には美味しそうなご飯があった。
「いただきまーす。」
ご飯はとても美味しくて、嫌なことも忘れられそうだった。
美味しいご飯は気が付いたら消えていて、空っぽのお皿とお箸が残った。
寝る準備をして、ベッドに入る。
宿題はなかったことにした。
目線を真っ直ぐにすると、天井の白色が見えた。
今日もいい夢、見れたらいいな。
―――――――
――――
掃除の時間、疲れた足で水道場に行き、黒ずんだ雑巾を水で洗う。
雑巾は汚い水を出しながら水に当たっていた。
しばらく雑巾を濡らしてみたが、なかなか綺麗にならない。
布と布を擦り合わせて洗うと多少はマシにはなったが、まだところどころ黒ずんだところがあった。
洗剤を使ったり何回も洗ったりしたが全く黒ずんでいるところは白くならなかった。
結局綺麗にならず、その雑巾を捨てることにした。
...。
「ピピピピ…」
もう朝か。
そう思い目をこすったが、まだ辺りは暗かった。
時計のアラームを間違えたのだろう。時計を見ると、まだ夜中の二十三時十一分だった。
目の前に写るのは一面の真っ暗闇。
誰かからみられているように感じてサッと布団に潜る。
もしこの家に私の家族以外の誰かがいたらどうしよう。
そんな不安を抱えながら布団の中でうずくまる。
…布団の中は温かくて、安心するな。
―――――――――
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とても綺麗で、儚かった。
触れようとしても手が届かないくらい遠い存在だった。
でも、それはとても温かく、近くで見守っているようだった。
それを追っているときは、とても楽しくて、どんな夢も叶いそうなくらいだった。
真っ直ぐ前を向いて、走り続ける。
それは決して楽な道ではないけれど、でも、ずっと進みたいと思った。
ずっとずっと、この夢のような時間が続きますように。


