神屋敷家に帰ると皐月が出迎えてくれた。
皐月は使用人頭で紅音専属と言ってもいいほど紅音が子供の頃から世話をしている60歳前後のお婆さん。
美虹たちも慕っている。
「おかえりなさいませ。雨音様たちがお腹を空かせて待っております」
皐月は美虹の神子服をみて悟った。
紅音は皐月に話していたのかもしれない。
「そうね、とりあえず夕餉にしますか」
皐月な使用人に指示をだし、美虹も自室に戻ることにした。豆福助も一緒だ。
神子服のまま歩いていると雨音と晴陽に驚かれたが、後で話すとサッサと自室のドアを閉め、溜め息をついた。
「お嬢、すいやせん!」
美虹の前で申し訳なさそうに犬の伏せポーズをしているが豆福助なりに土下座をしているつもりだ。
「福ちゃん…福ちゃんは悪くないんだから」
豆福助を抱っこし背中を撫でた。
悪いのは焔だ。豆福助やカトレアが異を唱えるほど身勝手で我儘なやつ。
「それもありやすが、あっしは焔様の命でお嬢の様子を焔様に報告しておりやした…報告を受けた焔様は大変ご機嫌でいらしてお嬢を幸せにしてくれると確信するほどだったんですがねぇ……」
先程の事を思い出したのか尻尾をクルンと丸める豆福助。大好きな美虹と主の焔の間で複雑なのだろう。
神子服から私服に着替えた美虹は豆福助のために話しを変えることにした。
「福ちゃん、子犬なのに渋いんだねぇ〜」
「あっしは焔様の使いでは中堅なんで結構、年いってやす。カトレアの姐さんの足元に及ばねぇ」
可愛い豆福助が渋いのも驚いたが、鹿のカトレアもなかなか濃かった。
「他に使いはいるの?」
「へえ。あっしより若い衆にはリスや兎に馬、猪、キリンに象に……」
まるで動物園かと突っ込みたくなるほど多い。
キリンや象は存在は知っていても実物は見たことないのでそそられる。
「あいつは大嫌いだけど福ちゃんとお話しできるのは嬉しい」
「あっしもです」
ニッコリと笑うと豆福助は丸めていた尻尾を戻しフリフリしながら喜んだ。
夕食には豆福助も同席してもらう。
普段は広い中庭で飼っておりご飯も外で食べているが今日のことを話さなければならない。
夕食を食べつつ、雨音と晴陽、使用人頭の皐月にも話した。
ほんの数時間でそんなことがあったのかと驚いていた。
「焔っていう朱雀様は神として崇めていいの?」
「神様に人間の事情なんて関係ないってことですかね。人間だったら最低行為です」
雨音と晴陽は口々に文句をいう。美虹はうんうんと頷きながら聞いていた。
「そういえば福ちゃんって姉貴が産まれる前からいてずっと子犬のままだなって思ってた」
「お嬢をお守りする命を受けておりやした。あっしは街出身でして捨てられた所を焔様から神通力を与えられたんですよ」
島から出られない島民からは憧れをこめて霊力のない人間が住む場所を街と呼ぶ。
島には野生動物はいるものの犬猫はいないので美虹たちは疑問に思っていた。
「朱雀の神子って肩書きは凄いけど私だったらやりたくないわ。頑張って」
「うぅ〜他人事だと思って〜」
「神子と番の違いはなんですか?」
「番はご存じの通りですが、神子は神の代弁者や神の世話が仕事ですねぇ」
世話……我儘な神様の世話とか嫌すぎる。
「お母さんも姉さんが政略結婚のようなことになってなぜ黙っているのですか?せめて先に知らせるべきだったと思います」
晴陽の鋭い指摘。美虹が中学生の時に胸元の刻印を気にしていたことや恋愛できずに悩んでいたのをまだ小さかった晴陽は気づいていた。
「黙っていたのは悪かったわ。神様の番になることは光栄なことだと思ったし神の番なんて義務感を感じないようのびのび育てたかったのよ。焔様の強行には驚いたけど」
豆福助と同じように紅音も母親としては不服だが当主として島の者を守り纏める義務があり、南ノ島では朱雀を神として信仰している家柄なのもあって色々複雑なんだろう。
複雑なのは晴陽も同じで、いずれ当主の座につく。
苦渋の決断をしなければならない日が来るのかと11歳ながら考えていた。
「姉貴はその焔様の番になりたくない、でも島の住人を助けたいであってる?」
「うん。あいつ大嫌いだし!」
「じゃあ諦めさせればよくない?」
雨音がご飯にふりかけをかけようとしたが空袋を涙目になりながら呟く。
「脈ナシって感じたら姉貴と別れて天界に帰るんじゃね?振るんじゃなくて振られればいいってこと」
「なるほど。こちらは番を受け入れたのだから、焔様から手を切ってくだされば島に手は出されない」
「私もあいつの番に成らなくて済むし恋愛だってできるってことね!」
雨音の提案に乗ることにした美虹。
「私、あいつに振られるよう頑張る!!」
張り切る美虹に「上手くやらないと機嫌損ねて消滅させられる危険ありますね」と冷静に伝える晴陽だったが、美虹には聞こえていなかった。
美虹からオヤツ(賄賂)を貰った豆福助は黙ることにした。
皐月は使用人頭で紅音専属と言ってもいいほど紅音が子供の頃から世話をしている60歳前後のお婆さん。
美虹たちも慕っている。
「おかえりなさいませ。雨音様たちがお腹を空かせて待っております」
皐月は美虹の神子服をみて悟った。
紅音は皐月に話していたのかもしれない。
「そうね、とりあえず夕餉にしますか」
皐月な使用人に指示をだし、美虹も自室に戻ることにした。豆福助も一緒だ。
神子服のまま歩いていると雨音と晴陽に驚かれたが、後で話すとサッサと自室のドアを閉め、溜め息をついた。
「お嬢、すいやせん!」
美虹の前で申し訳なさそうに犬の伏せポーズをしているが豆福助なりに土下座をしているつもりだ。
「福ちゃん…福ちゃんは悪くないんだから」
豆福助を抱っこし背中を撫でた。
悪いのは焔だ。豆福助やカトレアが異を唱えるほど身勝手で我儘なやつ。
「それもありやすが、あっしは焔様の命でお嬢の様子を焔様に報告しておりやした…報告を受けた焔様は大変ご機嫌でいらしてお嬢を幸せにしてくれると確信するほどだったんですがねぇ……」
先程の事を思い出したのか尻尾をクルンと丸める豆福助。大好きな美虹と主の焔の間で複雑なのだろう。
神子服から私服に着替えた美虹は豆福助のために話しを変えることにした。
「福ちゃん、子犬なのに渋いんだねぇ〜」
「あっしは焔様の使いでは中堅なんで結構、年いってやす。カトレアの姐さんの足元に及ばねぇ」
可愛い豆福助が渋いのも驚いたが、鹿のカトレアもなかなか濃かった。
「他に使いはいるの?」
「へえ。あっしより若い衆にはリスや兎に馬、猪、キリンに象に……」
まるで動物園かと突っ込みたくなるほど多い。
キリンや象は存在は知っていても実物は見たことないのでそそられる。
「あいつは大嫌いだけど福ちゃんとお話しできるのは嬉しい」
「あっしもです」
ニッコリと笑うと豆福助は丸めていた尻尾を戻しフリフリしながら喜んだ。
夕食には豆福助も同席してもらう。
普段は広い中庭で飼っておりご飯も外で食べているが今日のことを話さなければならない。
夕食を食べつつ、雨音と晴陽、使用人頭の皐月にも話した。
ほんの数時間でそんなことがあったのかと驚いていた。
「焔っていう朱雀様は神として崇めていいの?」
「神様に人間の事情なんて関係ないってことですかね。人間だったら最低行為です」
雨音と晴陽は口々に文句をいう。美虹はうんうんと頷きながら聞いていた。
「そういえば福ちゃんって姉貴が産まれる前からいてずっと子犬のままだなって思ってた」
「お嬢をお守りする命を受けておりやした。あっしは街出身でして捨てられた所を焔様から神通力を与えられたんですよ」
島から出られない島民からは憧れをこめて霊力のない人間が住む場所を街と呼ぶ。
島には野生動物はいるものの犬猫はいないので美虹たちは疑問に思っていた。
「朱雀の神子って肩書きは凄いけど私だったらやりたくないわ。頑張って」
「うぅ〜他人事だと思って〜」
「神子と番の違いはなんですか?」
「番はご存じの通りですが、神子は神の代弁者や神の世話が仕事ですねぇ」
世話……我儘な神様の世話とか嫌すぎる。
「お母さんも姉さんが政略結婚のようなことになってなぜ黙っているのですか?せめて先に知らせるべきだったと思います」
晴陽の鋭い指摘。美虹が中学生の時に胸元の刻印を気にしていたことや恋愛できずに悩んでいたのをまだ小さかった晴陽は気づいていた。
「黙っていたのは悪かったわ。神様の番になることは光栄なことだと思ったし神の番なんて義務感を感じないようのびのび育てたかったのよ。焔様の強行には驚いたけど」
豆福助と同じように紅音も母親としては不服だが当主として島の者を守り纏める義務があり、南ノ島では朱雀を神として信仰している家柄なのもあって色々複雑なんだろう。
複雑なのは晴陽も同じで、いずれ当主の座につく。
苦渋の決断をしなければならない日が来るのかと11歳ながら考えていた。
「姉貴はその焔様の番になりたくない、でも島の住人を助けたいであってる?」
「うん。あいつ大嫌いだし!」
「じゃあ諦めさせればよくない?」
雨音がご飯にふりかけをかけようとしたが空袋を涙目になりながら呟く。
「脈ナシって感じたら姉貴と別れて天界に帰るんじゃね?振るんじゃなくて振られればいいってこと」
「なるほど。こちらは番を受け入れたのだから、焔様から手を切ってくだされば島に手は出されない」
「私もあいつの番に成らなくて済むし恋愛だってできるってことね!」
雨音の提案に乗ることにした美虹。
「私、あいつに振られるよう頑張る!!」
張り切る美虹に「上手くやらないと機嫌損ねて消滅させられる危険ありますね」と冷静に伝える晴陽だったが、美虹には聞こえていなかった。
美虹からオヤツ(賄賂)を貰った豆福助は黙ることにした。



