やさぐれ火の鳥様と禁忌の神子

『最初からそうしろ。この箱にある服を着ろ。俺に相応しい番として育ててやるからまずは朱雀の神子として務めあげろ』

焔は紅音たちを解放し炎の翼を消した。
美虹は解放された紅音を確認しホッとしつつ、いつの間に置いてあった箱を恐る恐る開ける。
中には神子服と髪飾りなどの装飾品が入っていた。

『おい、カトレア〜こいつの着替えを手伝ってやれ!』
焔に呼ばれて出てきたのは体格が大きくガッシリした強面のニホンジカのオス。体毛は珍しいオレンジの立派な角を持つ成獣だ。

オス鹿はその強面で美虹をギロッと見ると体から光を放つと人の姿に変え、ガタイのいいイケメンお兄さんになった。

驚く美虹たちに構わず、キラキラな目をしている。
「あっら〜可愛い子じゃなぁ〜い。アタシが綺麗に仕立ててあ・げ・る。さっ、別室行きましょ」
カトレアは箱を持ち美虹たちを別室に連れて行った。


別室に行くと美虹は再び涙を流した。
紅音は美虹をギュッと抱きしめた。

「ごめんなさいね。まさかこんな風になるとは思わなかった。朱雀様の番になるなんて名誉な事だと思ってたのに」
「……うっ…うう。……お母さんは悪くない。あいつが全部悪いもの。あいつ…大っきらい!!」

「たしかにアタシと美虹ちゃんから見たら最低最悪の乙女の敵よねぇ〜」
準備をしていたカトレアが溜め息をつきながら美虹に同意した。

「改めてアタシは焔ちゃんの使い…従者をしているカトレアよ♪ん〜チュッ」
投げキッスをするカトレア。
強烈そうなキャラに涙が少しだけ止んだ。

「男…オス鹿ですよね?」
「オスじゃないわよ!アタシはか弱い純情乙女よ。オ・ト・メっ!わかる?」
「あ、はい」
どう見てもか弱そうに見えないのだが突っ込むのはやめた。

「焔ちゃんは強引で我儘なお方だけど、いい所は沢山あるわ。今は最悪でも最高な旦那様になるわよ。純情乙女の言葉は絶対よ?」
「…全然みえない」
フフッと笑うカトレア。従者なら焔のことをよく知っているんだろうが、美虹は良いところなんて知りたくもない。ただの最低男だ。

雷蔵は廊下で待ち、カトレアと紅音が美虹を仕立てる。
神子服は白を基調にしつつ赤と朱色の美しいグラデーション、装飾品には千日紅《せんにちこう》、蓮の花、ニチニチソウ、ユリなど色々な花が使われている。
「うふふ。美虹ちゃんは焔ちゃんに愛されてるわね〜アタシ嫉妬しちゃうわ」
「え?」
「この神子服はね、焔ちゃんの神通力を使って細かく繊細に編んだのよ。それに装飾品に使ってる花の花言葉には純潔、神聖、優しさ。特に千日紅には永遠の恋、変わらぬ愛とか焔ちゃんの愛が詰まってるわね」

美虹には産まれる前の相手を愛するのかわからない。先程、育てるとか言っていた。自分の理想を押し付ける気か……焔には腹が立って仕方がないが綺麗に仕上がる自分にちょっと満足しつつあり不服でもある。


    ✱✱✱✱   ✱✱✱✱

焔は美虹が着替えている間、ドカッと座布団に座る。
「ゔぅ〜〜〜ゔぅ〜〜」
『そう怒るなよ、豆福助』
余裕な焔に豆福助は唸りながら怒っていた。

「なんですありゃ。お嬢の気持ちをもて遊ぶような事を……」
『美虹ったか、強気だった女が泣きながら俺に従順になる様は最高だったな』
「お嬢を泣かしたら主君だろうが許さねぇ」
『さすが忠犬…俺より美虹に付くのか』
「あたりめぇよ!お嬢はあっしにオヤツをくれる優しいお人!男なら仁義を通さねぇといけねぇんす」
更に怒る豆福助を無視し笑う焔。

『数百年…数千生きてて、この18年は長く感じるほどだ。たっぷり愛してやらねぇとな』
焔の目には独占欲と執着心が強く宿っていた。