やさぐれ火の鳥様と禁忌の神子

「わん!」
「福ちゃん、おまたせ」
「豆福助ちゃん、こんにちは〜」
下校時間になると待っている豆福助。今日は焔を紹介するので雪兎も一緒だ。
「豆福助ちゃんは焔様の使いなんだってね。喋れるなんて小さいのにお利口さんだね」
「いえ、あっしはまだまだです。雪兎さん、お嬢がいつもお世話になっているようでありがとうごぜぇやす」
「わぁー見た目可愛いのに渋いおじさんみたいな声で不思議〜」
「だよね〜」
そんな話しをしながら朱雀神社へ。
島の住人たちに朱雀の存在が知られているので、正確には焔がバラしたのだが…神社には一目みたいと集まってくるそうだ。
境内をキョロキョロする美虹。
「どうしたの?」
「双子は今日いるのかなって」
「なるほど……うん、いないみたい」
雪兎は兎のアヤカシで聴覚に優れている。遠くの場所でも誰が話しているのかわかる。雪兎がいうならと安堵した。

「あらら?美虹ちゃん、いらっしゃい!それからウサちゃんだっけ?豆福助から聞いてるわよ」
カトレアがやってくる。雪兎と挨拶を交わす。

「カトレアさん、何その大荷物」
「ああこれ?島の人達から焔ちゃんに貢ぎ物だそうよ。でも焔ちゃん、食べないから神社の巫女さんたちのご飯やおやつに頂こうかなって」
貢ぎ物には野菜やお菓子や花など色々ある。

焔がいる本殿に入るとぐで〜っと大の字で寝ている焔。どうやらお疲れのようだ。
「焔!」と美虹が呼ぶと飛び起きる。
『美虹〜!会いたかった愛してるぞ!』
「私は会いたくもないし愛してないから!」
二人のやり取りをクスクスと微笑ましそうにしている雪兎。

「焔様…いえ、朱雀様。私は兎のアヤカシ・雪兎と申します。美虹様と仲良くさせていただき、本日は美虹様のご厚意によりご挨拶を叶えていただきました」
『おう。俺の美虹が世話になってるな。美虹の友人なら焔と呼んで軽口で構わないから楽にしろ』
「あ、ありがとうございます!」
深く頭を下げ、緊張ガチガチの雪兎に緊張感のない焔。
(神社の参拝者とも馴染んでたし、気さくな性格なんだ…)

『女のアヤカシは久しぶりに見たな。女ってだけで苦労しているんだろ』
「…はい」
女性のアヤカシはなかなか生まれないので同じ一族からの猛アピールされ、ストレスで島で生活している。
『美虹と同じ年くらいなら決まった相手はいないのか?』
「いいえ。もうすぐ夏休みなのでアヤカシ界でお見合い三昧です」
突然声を掛けられたりアポなし訪問されるよりはとのことだ。

「そういえば、みくみくと街に行かれるそうで」
『ああ。アヤカシも街に行けるんだったな。美虹に色々と教えてやってくれ。俺も街には随分昔に行ったっきりでな』
「はい」
アヤカシは迷惑行為をしなければ街に行ける。アヤカシ界には人間界に繋がるゲート…異次元の穴を通って4つの島からやってくる。南ノ島には海の入り江の洞窟にその穴がある。街に行くにはまた別の穴を通って行く。
美虹は少女漫画みたいな大恋愛をしたかったのが大きいが、アヤカシの番になりたかった。アヤカシの番になると島の住民ではなくアヤカシ界の住民扱いになるので街に行けるからだ。
不本意ながら焔の番で神子(仮)になったことで街に行けるのは予想外だった。

雪兎から街の話を聞く。雪兎も滅多に行かないし、行ったとしても島から出られない美虹たちに気を使って話さないかった。
雪兎の話で街に行くのが楽しみになってきた。

「ねぇ、ウサちゃんも行こうよ。焔、ウサちゃんならアヤカシだし問題ないよね」
『構わんぞ』
「でも焔様とみくみくのデートの邪魔になっちゃうよ」
「デートじゃないからむしろ付いてきて〜」
焔と二人っきりとか気まずいので懇願すると雪兎は困りながら「両親に相談するね」と話した所で雪兎は帰る時間だ。

「ちょっと手に入れるのに時間かかっちゃったから少し遅れたけど誕生日プレゼントだよ」
「ありがとう!ウサちゃん大好き!愛してる!結婚して!」
プレゼントを受け取ると雪兎を抱きしめた。
『なんだ浮気か!』と焔が吠えているが無視だ。
手を振りながら帰って行く雪兎。

焔のことがあり、すっかり忘れていた誕生日。
さっそく開封してみると美虹が大好きな漫画のグッズにその漫画のドラマCDと今は亡きCDプレイヤー。
電気が通っていない島のために電池使用可能なものを探してくれ、更には電池も入れてくれている。
可愛い上に優しくて気遣いのできた娘なんだろうか…自分が男ならぜひ結婚したいものだとしみじみ。

ほっこりしている中、美虹を後から抱きしめる焔。
こめかみにキス。
『美虹、お前の誕生日プレゼントは俺だ。最高に嬉しいだろう』
「一番いらないので返品し……んふぁ…んっ…」
少し乱暴で深くて重いキスをされる。

(また…どうして悲しそうな顔をするの?私が焔を拒否したから……)
なんとも言えない気持ちになった美虹は抵抗をやめ、焔にされるがままキスを受け入れた。



✱✱✱✱  ✱✱✱✱   ✱✱✱✱   ✱✱✱✱
雪兎は帰り道、ニコニコで神社から南ノ島にある自宅へ帰路の途中だった。

「焔様ってばみくみくを見つめる目が熱かったなぁ。さすが私のみくみく。神様に愛されて当然だね」
「焔様に愛されるのは私たちですわ」
「………そうだよ」
木の影から出てきたのは涼花と鈴花。
雪兎は聴覚に優れていても何も音に気づかなかった。

「もう!またあなたたちなの〜みくみくは当主の娘なのに失礼じゃない。それに焔様はみくみくにお熱なんだから隙なんてないよ」
「焔様が美虹様しか知らないからですわ。私たちのが霊力も神通力も優れていますわ」
「焔様の〜……お役に立てるの……私たち……」
鈴花の言葉に頷く涼花。

「…兎のアヤカシ様、お気をつけくださいまし」
「うん。……私たちの……占い……絶対〜…」
そう言って去っ行った。
しかめっ面をしながら首を傾げる雪兎。

「なんなの〜気をつけてって…よくわからないし、みくみくには言わなくていいか」


━━━━この判断が後悔することになるとは知らずに。