やさぐれ火の鳥様と禁忌の神子

「福ちゃん!」
「わんわん!ワオ~ン!」
いつものように豆福助が尻尾をフリフリして待っていた。
抱っこすると豆福助が小声で話す。
「お嬢、お疲れ様です!今日はカトレアの姐さんが晴陽様を呼び出しされたんで晴陽様が下校後に神社へ行きやすが、お嬢はどうしやすか?」
「私も行くよ」
晴陽を待った。今日は掃除当番で遅いと聞いていた。雨音は今日は師匠のお店へ行く日なのですでに下校済みだろう。
晴陽と合流し、神社へ。
途中でお昼に会った双子の話しを聞いてみた。
同じ学校内とはいえ、下級生とは話もしない。
とはいえ、学年が違っても交流してはいけない規則はないので小学生が高校生の教室に行っても問題ない。

「八月一日姉妹ですね。彼女たちは小学五年生です。霊力が姉さんや僕と同じくらいだと思います。すでに姉の涼花さんに上位のアヤカシから打診があるようですが断っているようです」
「へ〜」
アヤカシはコネや自分の足を使って番を探す。
正式にプロポーズされるのは17、18歳あたりだが、恋人同士になるのは14歳前後が多い。
他の島も周る都合上、女性側の年齢が若い場合は仮予約ように声掛けするようだ。
守り神である四神や当主や本人及び本人家族が良いなら長女以外も番になれる。
涼花は年齢が理由で断っているのかもしれない。

「彼女たちはミステリアスという言葉が似合いますね」
「もしかしてどっちかタイプだった?」
ニヤニヤしているときっぱり否定する晴陽。

」………わ!……す…」
「………なの……」
『……だ!』
階段を上がるにつれ声が聞こえる。なんだか争っているような……?
姿がみえると本殿の前で焔と八月一日の双子が話していた。
『帰れ』
焔が強い口調をいうと足早に去っていく、美虹たちに気づいてないようだった。

『美虹〜会いに来てくれたのか!俺も丁度会いたかったんだ。通じ合っているな!』
「そんなことより双子に何言ったのよ」
『あー…あとで話す。お茶淹れてくれ。おい、鹿五郎〜お前の愛する晴陽来たぞ〜〜』
本殿の隅で何か渡しているカトレア。

「本名言うんじゃないわよ!アタシの晴陽ちゃん待っててね〜」
投げキッスを贈るとゾクゾクとする晴陽。
「嫌なら断ればいいのに」
「鹿は神の使いですから蔑ろになんてできません。カトレアさんは何故、山菜を渡しているのですか?」
『あいつが昨日、山で飯食いに行ったついでに大漁に採ってきたんだ。お前たちの分は使用人に渡してあるはずだ』
ということは今日の夕飯は山菜ご飯や山菜の天ぷらだろうかと美虹は夕飯が楽しみになった。

「朱雀様、ありがたや〜ありがたや〜本日も良いお湯でした〜」
『おう。婆さん、長生きしろよ!』
社務所に向かっていると朱雀湯の利用者から声掛けられ気さくに対応する焔。
なんだかすっかり馴染んでいる。


美虹は使えない女になれば諦めるだろうと焔には出涸らしのような粗末なお茶を出したのだが、気にせず飲んでいた。
「伝説の鹿?」
「姉さんは聞いたことないんですか?昔、島の者が猪や野ウサギを狙って狩りをしようとすると現れて猟師を撃退したんです。でも森の主である鹿を退治しようとし怪我を負った所を神に助けられ、森の主は神の使いになってからは鹿を大事に扱うようになり、狩猟も無くなりました。だから森の主は伝説の鹿と呼ばれているんですよ」
『その森の主ってのが鹿五郎…もといカトレアだ。あいつの勇敢な心に惹かれて従者にしたんだ』
カトレアを待っている間、カトレアの話をしていた。豆福助は「あっしは姐さんの足元に及ばねぇ」とウンウンと聞いていた。

「うふふ〜お待たせ。晴陽ちゃんを待たせるなんてアタシって罪な乙女ねぇ〜」
カトレアが部屋に現れると晴陽の横に座る。
「僕に用とはなんですか?」
「豆福助から晴陽ちゃんは無類の本好きって聞いてたからアタシの本あげよっかな〜って」
小さなダンボールを手渡し、中を開けるとビッシリと本が詰っている。
古い本のようだが状態も綺麗だ。

「いいんですか?ありがとうございます!」
カトレアに嬉しそうに笑う晴陽。カトレアが来てから良くも悪くも表情が柔らかく年相応になってきた気がする。