涼哉は5歳になった。今日は俺たち家族で涼哉の誕生会をささやかに行っている。
「涼哉、お誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
雪哉と俺がそう言って、電気を消した。小さなケーキに乗った5本のろうそくの火が、チラチラと揺れ動く。
「さあ、フーってしてごらん」
俺が涼哉に言うと、涼哉は思いっきり息を吸い、フーっと炎に吹きかけた。だが全部は消えず、
「あれー」
と言って、涼哉はもう一度フーっと吹いた。やっと5本のろうそくの火が消えた。
「消えたー!」
涼哉がはしゃぐ。雪哉が電気を付けた。
「はい、プレゼント」
俺がラッピングされた箱を涼哉に手渡すと、
「わーい!」
涼哉は大きな箱を頑張って受け取った。プレゼントは仮面ライダーグッズだ。これを身につけて、テレビの真似をして「へんしん!」とか何とかやるのだろう。考えただけで微笑ましい。
「涼哉もそのうちゲーム機が欲しいとか、スマホが欲しいとか言い出すんだろうなあ」
ケーキを頬張る涼哉の頭を撫でながら、俺がそう呟いた。
「ふふ、そうだね。ちゃんと考えて、話し合わないとね」
雪哉が言った。子育ては難しい。これからもたくさん悩む事があるだろう。しかし、赤ちゃんの頃は心配で、たくさん手が掛かって、それは大変だった。ここまで大きくなってくれて本当に感慨深い。
「涼哉、これからも元気に大きくなってくれよ」
「うん!」
涼哉はニコニコと笑った。涼哉は、しゃべり方や仕草が時々とても雪哉に似ている。誰が見ても親子だ。俺にも似ているところがあるらしい。保育園へ迎えに行くと、時々似ていると言われる。血は繋がっていないけれど、育てていればやっぱり親子だよなーと思う。
「あのね、あやか先生がね、お父さんのこと、かっこいいって言ってたよ」
涼哉が何かを思い出したようで、そんな事を言った。
「え!?」
雪哉が驚いた声を出す。
「過剰反応しないの。俺がかっこいいのは当たり前でしょ。なあ、涼哉」
「うん!お父さんはかっこいいよ。パパもかっこいいよ」
涼哉は優しい子だ。因みにお父さんは俺で、パパは雪哉だ。何となくそうなった。
「だけどあれだな……涼哉は、どうしてママがいないのって聞かれたりしないのかな?」
俺は雪哉に言ったのだが、
「あのね、けんくんのおうちにも、ママはいないんだって」
涼哉が言った。
「そうなのか?」
「うん。それでね、りなちゃんちには、お父さんがいないんだって。パパはいるけど」
「は?」
あー、そういう事か。
「うちにはパパもお父さんもいるね!うらやましいって言われるんだ!」
「そうか、そうか」
俺がそう言ってまた涼哉の頭を撫でると、雪哉がククっと笑った。
「ん?」
俺が言うと、
「その程度なんだよね。今の涼哉たちにとっては。でも、そのうち疑問を持って、色々知りたくなって、悩んだりするだろうね」
雪哉がそう言った。
「時々話を聞いて、知りたいようだったら話してあげようね」
そしてそう付け加えた。
「そうだな。遠慮なんかしないで、何でも話して欲しいよなー」
そう言って、俺は涼哉のほっぺについたクリームを指でぬぐった。
「ねえお父さん、またスキーに行きたい」
涼哉が言った。
「お、またそり滑りやろうな」
俺が言うと、
「ぼくもスキーやりたい。パパみたいにスイーって」
と言う。
「パパみたいに?お父さんだって滑れるだろ?」
「えー、そうだけどぉ。でもパパみたいに滑りたい」
子供は正直だ。そうだろうな、雪哉みたいになりたいよなあ。
「そうか、じゃあ今年はスキーをやろう。パパに教えてもらったら、きっと上手になるよ」
「うん!」
涼哉は椅子から降りると、スイースイーとスキーをする真似をして部屋の中をぐるぐる回り出した。
「ほら、まだ食べてる途中だろ」
雪哉が言うが、涼哉はスキーの真似を辞めない。
「ほら、涼哉」
雪哉は立って、涼哉の後ろを一緒になってスイースイーとやり出した。涼哉はキャッキャッと嬉しそうに声を上げている。そんな様子を見ていると微笑まずにはいられない。こんな平和な光景が俺の目の前にあるなんて。奇跡だな。
「ほら、ギュー」
雪哉が涼哉を捕まえて、頬をくっつけてギューっとした。涼哉は嬉しそうだ。2人は仲良しだなあ……と思っていたら、ちょっと妬けてきたぞ。そうか、これが世に聞く、息子に嫉妬する父親の心境なのか。
「雪哉、俺にもギューして」
椅子から立ち上がってそう言ったら、
「えー、やだよ」
雪哉が言う。
「いいじゃん、ギューってしてくれよー」
俺が雪哉を追いかける。
「やだよー」
雪哉が逃げる。
「キャハハハ!」
涼哉が笑う。追いかけっこでぐるぐる回る俺と雪哉を見て、涼哉も喜んで一緒になってぐるぐる周り出す。そして俺は雪哉を捕まえた。そんな俺を涼哉が捕まえる。
「ギュー!」
3人でそう言って、ギューっとした。
「涼哉、お誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
雪哉と俺がそう言って、電気を消した。小さなケーキに乗った5本のろうそくの火が、チラチラと揺れ動く。
「さあ、フーってしてごらん」
俺が涼哉に言うと、涼哉は思いっきり息を吸い、フーっと炎に吹きかけた。だが全部は消えず、
「あれー」
と言って、涼哉はもう一度フーっと吹いた。やっと5本のろうそくの火が消えた。
「消えたー!」
涼哉がはしゃぐ。雪哉が電気を付けた。
「はい、プレゼント」
俺がラッピングされた箱を涼哉に手渡すと、
「わーい!」
涼哉は大きな箱を頑張って受け取った。プレゼントは仮面ライダーグッズだ。これを身につけて、テレビの真似をして「へんしん!」とか何とかやるのだろう。考えただけで微笑ましい。
「涼哉もそのうちゲーム機が欲しいとか、スマホが欲しいとか言い出すんだろうなあ」
ケーキを頬張る涼哉の頭を撫でながら、俺がそう呟いた。
「ふふ、そうだね。ちゃんと考えて、話し合わないとね」
雪哉が言った。子育ては難しい。これからもたくさん悩む事があるだろう。しかし、赤ちゃんの頃は心配で、たくさん手が掛かって、それは大変だった。ここまで大きくなってくれて本当に感慨深い。
「涼哉、これからも元気に大きくなってくれよ」
「うん!」
涼哉はニコニコと笑った。涼哉は、しゃべり方や仕草が時々とても雪哉に似ている。誰が見ても親子だ。俺にも似ているところがあるらしい。保育園へ迎えに行くと、時々似ていると言われる。血は繋がっていないけれど、育てていればやっぱり親子だよなーと思う。
「あのね、あやか先生がね、お父さんのこと、かっこいいって言ってたよ」
涼哉が何かを思い出したようで、そんな事を言った。
「え!?」
雪哉が驚いた声を出す。
「過剰反応しないの。俺がかっこいいのは当たり前でしょ。なあ、涼哉」
「うん!お父さんはかっこいいよ。パパもかっこいいよ」
涼哉は優しい子だ。因みにお父さんは俺で、パパは雪哉だ。何となくそうなった。
「だけどあれだな……涼哉は、どうしてママがいないのって聞かれたりしないのかな?」
俺は雪哉に言ったのだが、
「あのね、けんくんのおうちにも、ママはいないんだって」
涼哉が言った。
「そうなのか?」
「うん。それでね、りなちゃんちには、お父さんがいないんだって。パパはいるけど」
「は?」
あー、そういう事か。
「うちにはパパもお父さんもいるね!うらやましいって言われるんだ!」
「そうか、そうか」
俺がそう言ってまた涼哉の頭を撫でると、雪哉がククっと笑った。
「ん?」
俺が言うと、
「その程度なんだよね。今の涼哉たちにとっては。でも、そのうち疑問を持って、色々知りたくなって、悩んだりするだろうね」
雪哉がそう言った。
「時々話を聞いて、知りたいようだったら話してあげようね」
そしてそう付け加えた。
「そうだな。遠慮なんかしないで、何でも話して欲しいよなー」
そう言って、俺は涼哉のほっぺについたクリームを指でぬぐった。
「ねえお父さん、またスキーに行きたい」
涼哉が言った。
「お、またそり滑りやろうな」
俺が言うと、
「ぼくもスキーやりたい。パパみたいにスイーって」
と言う。
「パパみたいに?お父さんだって滑れるだろ?」
「えー、そうだけどぉ。でもパパみたいに滑りたい」
子供は正直だ。そうだろうな、雪哉みたいになりたいよなあ。
「そうか、じゃあ今年はスキーをやろう。パパに教えてもらったら、きっと上手になるよ」
「うん!」
涼哉は椅子から降りると、スイースイーとスキーをする真似をして部屋の中をぐるぐる回り出した。
「ほら、まだ食べてる途中だろ」
雪哉が言うが、涼哉はスキーの真似を辞めない。
「ほら、涼哉」
雪哉は立って、涼哉の後ろを一緒になってスイースイーとやり出した。涼哉はキャッキャッと嬉しそうに声を上げている。そんな様子を見ていると微笑まずにはいられない。こんな平和な光景が俺の目の前にあるなんて。奇跡だな。
「ほら、ギュー」
雪哉が涼哉を捕まえて、頬をくっつけてギューっとした。涼哉は嬉しそうだ。2人は仲良しだなあ……と思っていたら、ちょっと妬けてきたぞ。そうか、これが世に聞く、息子に嫉妬する父親の心境なのか。
「雪哉、俺にもギューして」
椅子から立ち上がってそう言ったら、
「えー、やだよ」
雪哉が言う。
「いいじゃん、ギューってしてくれよー」
俺が雪哉を追いかける。
「やだよー」
雪哉が逃げる。
「キャハハハ!」
涼哉が笑う。追いかけっこでぐるぐる回る俺と雪哉を見て、涼哉も喜んで一緒になってぐるぐる周り出す。そして俺は雪哉を捕まえた。そんな俺を涼哉が捕まえる。
「ギュー!」
3人でそう言って、ギューっとした。



