やっぱりと言うか、あっぱれと言うか。雪哉は携帯電話の番号を変えたようだった。LINEのIDも、メールアドレスも。こちらから連絡を取ろうとしても、手段がない。美雪ちゃんを捕まえてやろうと、家に行ったらなんともぬけの殻。美雪ちゃんもどこかへ引っ越していた。
 他に何か方法はあるかもしれない。美雪ちゃんの大学で待ち伏せするとか、雪哉の実家の電話番号を調べるとか。でも、そうやって雪哉の新しい電話番号を知ったところで何になる?あいつの覚悟を尊重するしかない。
 また片思いに戻ったと思えばいい。2年半、俺は日本であいつを待つ。帰ってきたら、きっと会いに来てくれる。それまで、俺もちゃんとした大人になっていよう。立派になって帰ってくるあいつに、相応しい男にならなくちゃ。

 俺は大学4年になった。神田さんが卒業してしまい、バンド活動はとりあえず終了した。そのうちまた始めるかもしれないが、俺たち3人が就職活動で忙しくなるから、一旦活動休止にしたのだ。スキー部の方も、4年生はトレーニングに顔を出さない習わしのようなので、行かなかった。
 一方、俺は3年でインターンをしたのとは全く別の業種へと就職活動を始めていた。交通費はかかるが、地方のリゾートホテルを回った。海も山も街も色々と行ってみたが、やっぱり山がいいと決めた。冬にはスキーが出来る場所。そこにいたら、雪哉が滑りに来てくれるような場所。そうだ、すごく難易度の高い上級者コースのあるスキー場を探そう。そして、その近くにある大きいホテルに就職しよう。立派になった雪哉が絶対に来てくれるような、良いホテルに。