4月がやってきてしまった。雪哉が出発する日の朝、空港まで雪哉を送って行った。胸が張り裂けそうになるのを必死に堪え、いつも通り、冗談を言い合いながら。
「家族は見送りに来ないのか?」
俺が聞くと、
「この間実家に帰ったからいいんだ。それに、夏には家族そろってアメリカに来るそうだし」
「そうなんだ。美雪ちゃんも?」
「うん。この機に乗じてアメリカ旅行出来るからね。僕はほとんど観光なんて出来ないのに」
雪哉はそう言って笑った。笑っていられるのかよ、お前は。
「雪哉、俺は……。俺はずっと待っ」
途中で、雪哉は俺の唇に人差し指を立てた。やっぱり、言わせてはくれないんだな。
「ごめん涼介。本当にごめん。僕の事は忘れて。いつか、友達として会える日まで」
穏やかに雪哉が言う。俺の目から、涙が一筋流れ出た。
「分かったよ。お前も、俺の事は忘れて勉強頑張れ」
俺はそう言って、雪哉を抱きしめた。もう雪哉は行かなくてはならない。
「じゃあ」
「ああ」
雪哉は涙を見せず、笑顔で手を振った。そして保安検査場へと入っていった。俺はトレーナーのフードをかぶり、サングラスを掛けた。だが、雪哉の乗った飛行機が飛び立つまでは、ここから動けないと思った。
雪哉がいつ飛び出してきて、やっぱり行くのは辞めると言うか分からない。いや、行くのは辞めなくても、やっぱり自分の事を忘れないでと言いに来るかもしれない……。
そんな淡い期待を胸に、しばらく保安検査所の前を動けずにいた。だが、ニューヨーク行きの飛行機の出発時刻になり、掲示板の表示が消えた。しばらくしても、雪哉は当然出てこなかった。
「家族は見送りに来ないのか?」
俺が聞くと、
「この間実家に帰ったからいいんだ。それに、夏には家族そろってアメリカに来るそうだし」
「そうなんだ。美雪ちゃんも?」
「うん。この機に乗じてアメリカ旅行出来るからね。僕はほとんど観光なんて出来ないのに」
雪哉はそう言って笑った。笑っていられるのかよ、お前は。
「雪哉、俺は……。俺はずっと待っ」
途中で、雪哉は俺の唇に人差し指を立てた。やっぱり、言わせてはくれないんだな。
「ごめん涼介。本当にごめん。僕の事は忘れて。いつか、友達として会える日まで」
穏やかに雪哉が言う。俺の目から、涙が一筋流れ出た。
「分かったよ。お前も、俺の事は忘れて勉強頑張れ」
俺はそう言って、雪哉を抱きしめた。もう雪哉は行かなくてはならない。
「じゃあ」
「ああ」
雪哉は涙を見せず、笑顔で手を振った。そして保安検査場へと入っていった。俺はトレーナーのフードをかぶり、サングラスを掛けた。だが、雪哉の乗った飛行機が飛び立つまでは、ここから動けないと思った。
雪哉がいつ飛び出してきて、やっぱり行くのは辞めると言うか分からない。いや、行くのは辞めなくても、やっぱり自分の事を忘れないでと言いに来るかもしれない……。
そんな淡い期待を胸に、しばらく保安検査所の前を動けずにいた。だが、ニューヨーク行きの飛行機の出発時刻になり、掲示板の表示が消えた。しばらくしても、雪哉は当然出てこなかった。



