それ以上何事もなく食事が終わり、解散した。その後、牧谷からメッセージが来た。ちょっと話したいから、明日の昼休みにある教室へ来いと書いてあった。
 翌日、指定された教室へ行くと、牧谷の他には誰もいなかった。
「よう」
「おう」
とりあえず挨拶をして、近くの椅子に座る。買ってきたサンドイッチなどを広げ、俺が食べ始めると、牧谷が話し始めた。
「あのさ、君たちどうなってるの?」
「え?」
いきなり、なんだ?
「ミッキーとユッキーは、喧嘩でもしてるわけ?」
「ああ、まあ……そうなんだ」
渋々認める。
「それで、どうして俺が間に入らされてるんだよ」
確かになぁ。たまたま本を返すタイミングだっただけで巻き込まれて。いや、待てよ。それがもし鷲尾だったとしたら、この役割は鷲尾だったのだろうか。まさか、牧谷だから、牧谷がそれなりにイケメンだから巻き込んだとか。だとしたら雪哉め、やっぱり軽いやつじゃないか。
「ミッキー?」
俺が黙ってしまったので、牧谷が俺を呼んだ。
「ああ、えーと。それは、つまり……。ほら、あれだよ」
「何を言ってるんだよ。もしかして2人はつき合ってるわけ?それで痴話げんかでもしたから、ユッキーは俺と仲良くしてミッキーに当てつけてるってわけ?」
おお、よく分かっているじゃないか。
「適切な説明、ありがとう」
「やっぱりそうかぁ。ミッキーに取られちゃったんだなー。危ないとは思ったんだよね。ミッキーはイケメンだから」
「雪哉は面食いだからな。多分」
自分でこれを言うのも何だが。
「でも喧嘩中って事は、ワンチャンこのまま別れるって事もありなわけ?いや、そうだよ。俺今すげーチャンスじゃね?」
牧谷がちょっと興奮気味に言う。
「いや、それは」
俺が言いかけても聞く耳持たず、
「そうと分かればもう遠慮はしないよ。俺はこのチャンスをものにするからね。じゃ!」
呼び出しておきながら、牧谷は俺を置いてさっさと行ってしまった。俺はそのまま座って飯を食った。