雪哉と愛し合って、一緒に寝て、翌朝。雪哉は講義があるので早く起きて出かけて行った。今日、俺の講義は午後からしかないので、雪哉が出かけてもまだ眠っていた。本当は雪哉と一緒にここを出るつもりだったのだが、どうも起きられなくて。
 美雪ちゃんはまだ大学1年生だから、毎日朝から講義があるのだろう。雪哉よりも先に家を出て行ったようだった。だが……。
 俺が起き出して、一応他人の布団だからと思って整えて、寝室から出ると玄関が開いた。またびっくり。美雪ちゃんが入って来た。
「あ、どうしたの?早いね」
「あれ、涼介さんまだいたの?」
「うん。授業は?」
「午後の授業が休講になったの。バイトまでの時間が空いちゃったから、一度帰ってきたんだ。でも、涼介さんがいたなら帰ってきてせいかーい!」
美雪ちゃんはそう言うと、チョコチョコッと走ってきて、俺に飛びついてきた。
「え、ちょっと」
美雪ちゃんは俺に抱きついて、上を見上げる。ああ、やっぱり雪哉にそっくりだなあ。
「ねえ、お兄ちゃんいないし、今の内にイイコトしない?」
美雪ちゃんは、幼い容姿からは想像できないような、きわどい事を言う。
「は?何言ってんの。ダメだよ」
「えー、どうしてー?ここには誰もいないんだし、バレないよ?」
「そういう問題じゃないの。っていうか、申し訳ないけど、君と何かしたいとは思わないし」
「ひどーい」
美雪ちゃんは腕を放した。
「じゃあ帰るね。お邪魔しました」
手をバイバイっと振って、玄関を出て……と思ったら、腕を引かれた。倒れそうになって、思わず壁に手をついた。すると、
「な、に、やって……」
男の声がした。男?え?
 玄関の方を向くと、そこには雪哉が立っていた。雪哉が険しい表情でこちらを見ている。俺は、自分の現状を把握しようとした。すると、俺は壁に手をついていたのだが、俺と壁との間には美雪ちゃんが挟まっていたのだ。背丈が違うから、顔がそれほど近いわけでもないのだが、完全に「壁ドン」というやつになっている。
「え、いや、誤解だよ!違うんだ。今、転びそうになって手をついただけで」
俺が言い訳をほざいている最中に、雪哉は外へ飛び出して行ってしまった。