雪哉と1つのベッドで一緒に眠り、気持ちよく目が覚めた。何も憂いのない朝。幸せな朝。初めて狙って、頑張って手に入れた恋。これからは楽しい毎日が続くはず。
「おはよ」
目を開けた雪哉が微笑む。
「おはよ」
俺もそう返して、チュッとキスをする。雪哉はくすぐったそうに笑った。
 干しておいた昨日の服に着替え、とりあえず帰る事にした。
「今度泊まりに来る時は、着替えも持ってくるな」
俺がそう言うと、
「あー、うん」
何だか歯切れの悪い雪哉。だが、とにかくお別れのキスをしようとして、雪哉の顎を手で持ち上げた瞬間、突然玄関の扉が開いた。
「ただいまー」
誰かが帰ってきたよ!ビックリ!
「み、美雪!早いじゃないか!」
雪哉も驚いたようにそう言った。
「あれ?あれあれ?すっごいイケメンじゃん。何なに?お兄ちゃんの彼氏?」
美雪と呼ばれた女子は、小走りに走ってきて、俺の腕を掴んだ。そして、下からジーっと顔を見てくる。
 うわー、この子、ものすごく雪哉にそっくりだ。髪は顎ラインのショートボブだが、それ以外はほぼ雪哉そのもの。でも、雪哉よりも小さくて、雪哉よりも……。
「ちょ、ちょっと美雪、離れろよ!なんでこんなに早く帰ってくるんだよ」
雪哉が言う。
「えー、友達が朝からバイトだって言うからさ。ねえ、お兄ちゃんと同じ大学の人?あ、私、鈴城美雪です。あなたは?」
腕を放さず、俺に聞いてくる。
「えーと、三木涼介です。雪哉と同じ大学、です」
俺も自己紹介をする。
「涼介さんかぁ。カッコイイなー」
「と、とにかく涼介、途中まで送るから!」
雪哉に腕を掴まれ、そのまま外へピューッと連れて行かれた。
 外に出ると雪哉は腕を放した。並んで歩き出す。
「美雪ちゃんて、妹?」
俺が聞くと、
「そう。今年大学に入学して、一緒に住み始めたんだ」
雪哉がそう言った。そうか、2人で住むからそれぞれの寝室がある、大きめのマンションなのか。納得。
「雪哉、妹がいたんだ……」
改めて呟いてしまった。
「似てるでしょ。あーあ、会わせる気なかったのにな」
また雪哉の表情が曇る。
「なんでよ。一緒に住んでるなら、いずれ会うでしょ」
「でも、神田さんには会わせた事ないよ」
「そうなの?」
もしかして、神田さんはここに来た事がないのかな。神田さんも独り暮らしだから、そっちの部屋で会ってたのか。あ……なんか今更嫉妬してしまった。
「毎日でも会いたい。また来てもいい?」
思わず、そんな事を言う俺。
「うーん、妹いるしなぁ。でも、涼介も実家だもんね」
また悩ませてるかな、俺。