やったぜ!俺は小さくガッツポーズをする。雪哉は逃げなかった。キスをして、それから所在なげに瞳を揺らして走り去って行った。雪哉が見えなくなってから俺も家路へと歩き始めたが、思わず1人でガッツポーズをかましたのだ。今日はこの為に遊びを企画し、手順を踏んできたと言っても過言ではない。やっぱり雪哉は俺の事が嫌いではない。いや、きっと好きだろう。いやいや、絶対好きなんだ。俺は確信した。
社会心理学の授業。もうお約束のように隣に座る俺と雪哉。一番後ろの席だから、教授がこちらを見ていなければ誰にも見られていない。教授がホワイトボードに文字を書いている最中、机の上にある雪哉の手の上にそっと手を乗せた。すると……。
「いで!」
思わず小さく声が出た。雪哉が反対の手で俺の手をつねったのだ。わーお、見事に爪の跡が付いて周りが赤くなった。俺はびっくりして雪哉の顔を見た。雪哉は済ました顔でノートを取っている。なんで、なんでなんだよー。俺たちは両想いじゃないのかよー。無念。
つまり、雪哉は多分俺の事が好きなのだが、つき合ってはくれないという事なのだろう。雪哉にはれっきとした恋人がいるから。ああ、どうしたらいいのだろう。どうしたら雪哉は俺の物になるのだろう。毎日そればかり考えてしまう。そして、あの夜交わしたキスの事ばかり思い出す。
金曜日の放課後。バンド練習に集まった。神田さんはまたもやスーツ姿で現れた。
「就活、順調っすか?」
シオンが聞くと、
「まあな。1つ内々定をもらったぜ」
と神田さんが言った。
「マジっすか?どんな会社?」
俺が聞くと、
「大手レコード会社、の下請け業者」
と言って、ちょっと笑う神田さん。
「音楽関係か。ブレないっすね、神田さん」
俺がそう言うと、
「まあな。どんな会社でもいいから音楽に携わっていたいんだ」
上着を脱ぎながら神田さんはそう言った。ワイシャツの袖をまくり上げ、ギターを弾く神田さんの姿はどう見てもかっこいい。大人なんだけど、世の中の大人には染まらないようなブレないかっこ良さを漂わせている。雪哉がこの人から離れられないのは、単に義理人情の問題だけではないのだろう。やっぱりかっこいいし、包容力がある。負けられない。けど今はまだ負けている。俺が、これだけは譲れないという何かを持たないと、この人を超えられない。いや一生超えられないかもしれないけれど、雪哉に対してだけは、どうしてもこの人に勝たなければならないのだ。人生における難題だ。一体どうしたらいいのか。
「ところで涼介、お前、雪哉にちょっかい出したりしてないだろうな」
突然そう聞かれて、ドキッとしてしまった。
「な、何言ってるんだよ。ただ、友達としてつき合ってるだけだよ」
挙動不審になってしまった。先日のあれ(キス)は、酔っていて覚えていない事にしよう。
社会心理学の授業。もうお約束のように隣に座る俺と雪哉。一番後ろの席だから、教授がこちらを見ていなければ誰にも見られていない。教授がホワイトボードに文字を書いている最中、机の上にある雪哉の手の上にそっと手を乗せた。すると……。
「いで!」
思わず小さく声が出た。雪哉が反対の手で俺の手をつねったのだ。わーお、見事に爪の跡が付いて周りが赤くなった。俺はびっくりして雪哉の顔を見た。雪哉は済ました顔でノートを取っている。なんで、なんでなんだよー。俺たちは両想いじゃないのかよー。無念。
つまり、雪哉は多分俺の事が好きなのだが、つき合ってはくれないという事なのだろう。雪哉にはれっきとした恋人がいるから。ああ、どうしたらいいのだろう。どうしたら雪哉は俺の物になるのだろう。毎日そればかり考えてしまう。そして、あの夜交わしたキスの事ばかり思い出す。
金曜日の放課後。バンド練習に集まった。神田さんはまたもやスーツ姿で現れた。
「就活、順調っすか?」
シオンが聞くと、
「まあな。1つ内々定をもらったぜ」
と神田さんが言った。
「マジっすか?どんな会社?」
俺が聞くと、
「大手レコード会社、の下請け業者」
と言って、ちょっと笑う神田さん。
「音楽関係か。ブレないっすね、神田さん」
俺がそう言うと、
「まあな。どんな会社でもいいから音楽に携わっていたいんだ」
上着を脱ぎながら神田さんはそう言った。ワイシャツの袖をまくり上げ、ギターを弾く神田さんの姿はどう見てもかっこいい。大人なんだけど、世の中の大人には染まらないようなブレないかっこ良さを漂わせている。雪哉がこの人から離れられないのは、単に義理人情の問題だけではないのだろう。やっぱりかっこいいし、包容力がある。負けられない。けど今はまだ負けている。俺が、これだけは譲れないという何かを持たないと、この人を超えられない。いや一生超えられないかもしれないけれど、雪哉に対してだけは、どうしてもこの人に勝たなければならないのだ。人生における難題だ。一体どうしたらいいのか。
「ところで涼介、お前、雪哉にちょっかい出したりしてないだろうな」
突然そう聞かれて、ドキッとしてしまった。
「な、何言ってるんだよ。ただ、友達としてつき合ってるだけだよ」
挙動不審になってしまった。先日のあれ(キス)は、酔っていて覚えていない事にしよう。



