ワイシャツを洗ってきた友加里。シミは取れたが、濡れているので今すぐには着られない。神田さんは白いTシャツ姿で飯を食った。
「あの、お詫びにご飯奢らせてください」
神妙な顔つきで友加里が言う。
「え?そんなのいいよ。乾けば着られるし」
「じゃあ、カラオケ奢らせてください」
よくわかんないけど、友加里は真剣に言う。
「カラオケ?いや別にそんなのいいけど……まあ、行ってもいいけど」
おっとぉ?
「本当ですか?じゃあ、今日はどうですか?」
「今日は、スーツだしな」
「それじゃあ、明日は?」
「うーん、まあ」
「じゃあ明日!連絡先交換してください!」
友加里はちゃっかり神田さんと連絡先を交換していた。
「お前も来るんだろ?涼介」
と、いきなり水を向けられてびっくり。
「え、俺?」
俺がいたんじゃ浮気現場にならない。だが誰も見ていないところで浮気していてもダメだ。俺がいて証拠を押さえないと。
「うん、俺も行くよ」
とりあえず、そういう事にしておく。
翌日の夕方。友加里と俺は神田さんと待ち合わせ、カラオケに行った。俺はバンドで普段から歌っているから、それほど歌いたいとも思っていなかった。神田さんが歌いたいのだろうと思っていた。そしたらなんと、
「涼介、これ歌ってみろ」
とか、
「うん、そういうジャンルも悪くないな。じゃあこれも歌ってみてくれ」
など、色々と俺に歌わせるのだった。バンドでどんな曲をやるか、考えるのが実に楽しそうだった。そんな無邪気な神田さんを見ていると、やっぱり騙すような真似をするのが申し訳なく思えてくる。だが友加里はちゃっかり酒を頼み、大して飲んでいないくせに酔ったふりをし始めた。どうやら作戦は着々と進んでいるようだ。
「私ちょっと酔っちゃったぁ」
とか言いながら、胸元をパタパタし始める。ちらっと神田さんの様子を伺うが、大して反応していない。
「俺ちょっとトイレ」
俺は席を外した。トイレに行ってきて、部屋に戻って中を覗く。友加里がぴったりと神田さんにくっついて座っているのが見える。今入るべきか否か。
すると神田さんが小窓の方を見た。目が合ったので、俺は今来たかのようなふりをしてドアを開けた。すると今度は神田さんがトイレに行くと言って席を立って行った。
「どうだった?」
俺が聞くと、
「うーん、どうだろ。反応はイマイチね。もうちょっと頑張ってみるわ。涼介、今すぐ帰って」
「え!?」
友加里はやっぱり酔ってはいないのだった。腕組みをしてそんな事を言い出す。俺は迷ったが、俺が頼んだのだから友加里の言う通りにするしかない気がした。よって、神田さんが戻って来る前にそそくさと帰ったのであった。
その夜、友加里から電話があった。友加里の話によるとこうだ。
友加里は酔ったふりをして、神田さんの腕に捕まってカラオケを出た。そして、
「暑―い。私今すぐ脱ぎたーい!ねえ、どこかに寄って行きましょうよぉ。ほら、あそことか」
とラブホテルを指さした。だが、
「何言ってんの。ほら、しっかりして。今冷たい水を買ってくるから」
と、腕をほどいて自販機に走り、水を買ってきた神田さん。友加里にそれを渡し、どこかに電話をした。
すると、雪哉が現れたそうだ。神田さんは電話で雪哉を呼んだのだ。
「ごめんな。この子涼介の友達なんだけど、酔って動けないみたいだからさ」
と、神田さんは俺の名前を出して雪哉に友加里の存在を説明し、2人で友加里を送って行こうとしたそうだ。だが友加里は実際には酔っていないので、
「ああ、もう酔いが覚めたわ。神田さん、今日はありがとうございました。では帰ります」
深々と頭を下げ、ツカツカと1人で帰ってきたそうなのだ。
「信じらんない!恋人を呼ぶとか、あり得る?それほど信頼し合っているってわけ?これじゃあ、こっちはピエロじゃないのよ。本来なら、あの場を恋人に見られたら浮気現場発覚なのにさ、自分で呼んだわけだから全否定でしょ。ああもう、私がやった事全て台無しじゃないの!」
友加里は相当怒っていた。そしてそんな友加里の愚痴を聞いている俺もまた、気持ちがどんどん暗くなっていった。そうだよな、それほど2人は信頼し合っているんだよな。だから、たとえ俺に多少気があったとしても、雪哉は神田さんを裏切らないって訳なんだよな……。
「とにかく、私絶対に諦めないから。どうしても、あの人を堕としてみせるわ!」
マジかよ……友加里、メンタル強すぎ。尊敬すらするぜ。俺はメンタルボロボロなのに。考えてみたら友加里に神田さんの恋人の存在がバレた。つまり俺の好きな人が雪哉だって事がバレたのだ。男だったのに、そこは完全にスルーなんだな。
「あの、お詫びにご飯奢らせてください」
神妙な顔つきで友加里が言う。
「え?そんなのいいよ。乾けば着られるし」
「じゃあ、カラオケ奢らせてください」
よくわかんないけど、友加里は真剣に言う。
「カラオケ?いや別にそんなのいいけど……まあ、行ってもいいけど」
おっとぉ?
「本当ですか?じゃあ、今日はどうですか?」
「今日は、スーツだしな」
「それじゃあ、明日は?」
「うーん、まあ」
「じゃあ明日!連絡先交換してください!」
友加里はちゃっかり神田さんと連絡先を交換していた。
「お前も来るんだろ?涼介」
と、いきなり水を向けられてびっくり。
「え、俺?」
俺がいたんじゃ浮気現場にならない。だが誰も見ていないところで浮気していてもダメだ。俺がいて証拠を押さえないと。
「うん、俺も行くよ」
とりあえず、そういう事にしておく。
翌日の夕方。友加里と俺は神田さんと待ち合わせ、カラオケに行った。俺はバンドで普段から歌っているから、それほど歌いたいとも思っていなかった。神田さんが歌いたいのだろうと思っていた。そしたらなんと、
「涼介、これ歌ってみろ」
とか、
「うん、そういうジャンルも悪くないな。じゃあこれも歌ってみてくれ」
など、色々と俺に歌わせるのだった。バンドでどんな曲をやるか、考えるのが実に楽しそうだった。そんな無邪気な神田さんを見ていると、やっぱり騙すような真似をするのが申し訳なく思えてくる。だが友加里はちゃっかり酒を頼み、大して飲んでいないくせに酔ったふりをし始めた。どうやら作戦は着々と進んでいるようだ。
「私ちょっと酔っちゃったぁ」
とか言いながら、胸元をパタパタし始める。ちらっと神田さんの様子を伺うが、大して反応していない。
「俺ちょっとトイレ」
俺は席を外した。トイレに行ってきて、部屋に戻って中を覗く。友加里がぴったりと神田さんにくっついて座っているのが見える。今入るべきか否か。
すると神田さんが小窓の方を見た。目が合ったので、俺は今来たかのようなふりをしてドアを開けた。すると今度は神田さんがトイレに行くと言って席を立って行った。
「どうだった?」
俺が聞くと、
「うーん、どうだろ。反応はイマイチね。もうちょっと頑張ってみるわ。涼介、今すぐ帰って」
「え!?」
友加里はやっぱり酔ってはいないのだった。腕組みをしてそんな事を言い出す。俺は迷ったが、俺が頼んだのだから友加里の言う通りにするしかない気がした。よって、神田さんが戻って来る前にそそくさと帰ったのであった。
その夜、友加里から電話があった。友加里の話によるとこうだ。
友加里は酔ったふりをして、神田さんの腕に捕まってカラオケを出た。そして、
「暑―い。私今すぐ脱ぎたーい!ねえ、どこかに寄って行きましょうよぉ。ほら、あそことか」
とラブホテルを指さした。だが、
「何言ってんの。ほら、しっかりして。今冷たい水を買ってくるから」
と、腕をほどいて自販機に走り、水を買ってきた神田さん。友加里にそれを渡し、どこかに電話をした。
すると、雪哉が現れたそうだ。神田さんは電話で雪哉を呼んだのだ。
「ごめんな。この子涼介の友達なんだけど、酔って動けないみたいだからさ」
と、神田さんは俺の名前を出して雪哉に友加里の存在を説明し、2人で友加里を送って行こうとしたそうだ。だが友加里は実際には酔っていないので、
「ああ、もう酔いが覚めたわ。神田さん、今日はありがとうございました。では帰ります」
深々と頭を下げ、ツカツカと1人で帰ってきたそうなのだ。
「信じらんない!恋人を呼ぶとか、あり得る?それほど信頼し合っているってわけ?これじゃあ、こっちはピエロじゃないのよ。本来なら、あの場を恋人に見られたら浮気現場発覚なのにさ、自分で呼んだわけだから全否定でしょ。ああもう、私がやった事全て台無しじゃないの!」
友加里は相当怒っていた。そしてそんな友加里の愚痴を聞いている俺もまた、気持ちがどんどん暗くなっていった。そうだよな、それほど2人は信頼し合っているんだよな。だから、たとえ俺に多少気があったとしても、雪哉は神田さんを裏切らないって訳なんだよな……。
「とにかく、私絶対に諦めないから。どうしても、あの人を堕としてみせるわ!」
マジかよ……友加里、メンタル強すぎ。尊敬すらするぜ。俺はメンタルボロボロなのに。考えてみたら友加里に神田さんの恋人の存在がバレた。つまり俺の好きな人が雪哉だって事がバレたのだ。男だったのに、そこは完全にスルーなんだな。



