「じゃあ今日の部活は終わり! はい、みんな解散〜」

 右京先輩の合図でさっと散り散りなる部員たち。
 自慢じゃないが、俺は帰り支度がとても早い。
 ほとんど一番最初くらいの勢いで帰ろうとすると、鬼先輩改め右京先輩に肩を掴まれる。

「山ちゃん、今日出来なかったところ今度も間違えたらしばき倒すからね! そのつもりで次の部活来いよ!」
「ひゃい‥‥」

 こ、こえ〜〜〜! 圧が強すぎる!

 同級生や先輩が「ご愁傷様」と言わんばかりの生温かい目で通り過ぎて行く。
 しばき倒されるのはなんとしてでも阻止したいので、家に帰ったら動画サイトに載っている弾き方の動画を血眼になって見るしかないと覚悟する。

 部室を出て、ふらふら歩いていると自然と生徒会室の前に来ていた。
 中にいる人たちにバレないようそっと覗く。
 目の前には、生徒会メンバーと談笑している朱莉がいる。

あ〜、心のオアシスだ。

 毎朝一緒に登校するだけでは朱莉不足だ。
 以前はそんなことなかったのに恋心を自覚してからは、もっと話したい、もっと一緒にいたいという欲がどんどん大きくなってゆく。

 可愛いなあ、一緒に帰りたいなあ、と眺めていると、ばちっと朱莉と目が合った。
 絶対怒られると思ったが、予想に反して朱莉は意地悪な笑顔で笑った。
 そのまま俺は後ろに下がり、ずるずると壁に背をつけて尻餅をつく。

「なんだ今の。反則だろ‥‥」

 ああ、顔が熱い。咄嗟に片手で顔を覆う。
 こんな姿、絶対朱莉に見られたくない。
 








 だって、きっとすぐにバレてしまうから。

 



 俺がどうしようもなく、君に恋をしているってことが。