数回メッセージのやり取りをした。簡素なメッセージはポコポコと音を立てて届き、その度に嬉しくて仕方なかった。だが、彼女はあまり自分のことを話してはくれない。あの大学に通っていることは確からしいが、どこの学部なのか、サークルは何に所属しているのか、何の授業に出ているとか……。そういう質問はさらりとかわされた。あわよくば毎日会いたいという気持ちが滲み出てしまっているのかもしれない。遠回しの質問は逆に警戒してしまうのだろうか。確かにあの日、俺は初対面の彼女の足を断りもなく触れてしまった。よくよく考えれば通報案件だろう。嫌われていても仕方ない。
だったら……。
『ましろさんに会いたい』
それだけを打ち込んで送信しようと考えた。返事によっては俺のことを嫌っていないことが分かるかもしれない。いや、でもまわりくどいだろうか。ストレートにそのまま伝えてしまった方が良いのでは。
考えるだけで、いざ送信は押せない。この場合、どうしたら良いのか恋愛初心者には全く検討もつかない。彼女はあの時のお礼を伝えるためだけにメッセージを送っているのだ。俺とどうこうなりたいとは一ミリも考えていないだろう。
いや、だとしても……!!
やっぱり誰が何と言おうともう一度会いたいことには変わらない。何度も自分を奮い立たせる。しかし、打ち込んでは消してを繰り返すだけ繰り返し、結局何時間も言い出すことができなくて自分のヘタレ具合いに嫌気がさした。それでも会話を途切れさせたら終わりだと思ってしまって、他愛のない話を送り合う。それだけでも嬉しくて、お伽話みたいな言い換えをするなら、灰色の毎日がカラフルな世界一変したような感じだ。
ただ、何も伝えずにこのまま終わらせてしまったら後悔するのは目に見えていた。またモヤモヤが募り、余計な不安が自分を襲って眠れない日々が続くだろう。
「……よしっ」
意を決して『もう一度会いたいです』という、その言葉を入力して、震える親指を抑えながら送信ボタンを押した。既読は直ぐについたが、メッセージの返信は先程のリズムから外れたようだ。ピタリと止んだ受信音がドキドキと高鳴っていた心臓音と自分の気分まで下げていく。
あぁ……やっぱり……。がっつきすぎた。絶対嫌われたじゃん……!
手にスマホを握りしめたまま、文字通り肩を落としながら枕に顔面を突っ伏した。これ以上ないってぐらいの大きくて深い溜息を吐く。こんなことなら誰かに相談してから返事を返せば良かった。
あーあ、幸せ逃げたじゃん。俺の大バカ野郎め。いきなりあんなメッセージを送らなければよかったと、自己嫌悪に陥った。
ああでもない、こうでもない。色んな不安が頭の中で浮かんでは消える。いや、言わないよりは言って後悔した方が格好いいだろう。そう自分に言い聞かせること数十分。彼女からの受信音はもう二度と鳴らないだろうと、諦めかけた時だった。
ポコン。
メッセージの受信音が、部屋に響いた。
『今週末なら都合、つきます』
その文字列を見て心臓が止まるぐらいの衝撃が走った。
マジか。マジか、マジか!?
ベッドの上で数回両手を上げて一人万歳三唱を行う。生きてて良かった、なんて大袈裟だけれど、それぐらい嬉しくてそれ以外の言葉が浮かんでこなかった。
神様、仏様、イエス様、お釈迦様!今日という日を僕に与えてくださってありがとうございます!!
心の中で何度も復唱し、腫れるほど頬をつねって夢ではないことを確認した。
「痛いっ!やっぱり……!夢じゃないっ」
やったぁ、と大きな声を出す。嬉しさのあまり、周りに気が回らない。ドン、と隣の部屋から壁を蹴られる音がして、俺は我に返った。
だったら……。
『ましろさんに会いたい』
それだけを打ち込んで送信しようと考えた。返事によっては俺のことを嫌っていないことが分かるかもしれない。いや、でもまわりくどいだろうか。ストレートにそのまま伝えてしまった方が良いのでは。
考えるだけで、いざ送信は押せない。この場合、どうしたら良いのか恋愛初心者には全く検討もつかない。彼女はあの時のお礼を伝えるためだけにメッセージを送っているのだ。俺とどうこうなりたいとは一ミリも考えていないだろう。
いや、だとしても……!!
やっぱり誰が何と言おうともう一度会いたいことには変わらない。何度も自分を奮い立たせる。しかし、打ち込んでは消してを繰り返すだけ繰り返し、結局何時間も言い出すことができなくて自分のヘタレ具合いに嫌気がさした。それでも会話を途切れさせたら終わりだと思ってしまって、他愛のない話を送り合う。それだけでも嬉しくて、お伽話みたいな言い換えをするなら、灰色の毎日がカラフルな世界一変したような感じだ。
ただ、何も伝えずにこのまま終わらせてしまったら後悔するのは目に見えていた。またモヤモヤが募り、余計な不安が自分を襲って眠れない日々が続くだろう。
「……よしっ」
意を決して『もう一度会いたいです』という、その言葉を入力して、震える親指を抑えながら送信ボタンを押した。既読は直ぐについたが、メッセージの返信は先程のリズムから外れたようだ。ピタリと止んだ受信音がドキドキと高鳴っていた心臓音と自分の気分まで下げていく。
あぁ……やっぱり……。がっつきすぎた。絶対嫌われたじゃん……!
手にスマホを握りしめたまま、文字通り肩を落としながら枕に顔面を突っ伏した。これ以上ないってぐらいの大きくて深い溜息を吐く。こんなことなら誰かに相談してから返事を返せば良かった。
あーあ、幸せ逃げたじゃん。俺の大バカ野郎め。いきなりあんなメッセージを送らなければよかったと、自己嫌悪に陥った。
ああでもない、こうでもない。色んな不安が頭の中で浮かんでは消える。いや、言わないよりは言って後悔した方が格好いいだろう。そう自分に言い聞かせること数十分。彼女からの受信音はもう二度と鳴らないだろうと、諦めかけた時だった。
ポコン。
メッセージの受信音が、部屋に響いた。
『今週末なら都合、つきます』
その文字列を見て心臓が止まるぐらいの衝撃が走った。
マジか。マジか、マジか!?
ベッドの上で数回両手を上げて一人万歳三唱を行う。生きてて良かった、なんて大袈裟だけれど、それぐらい嬉しくてそれ以外の言葉が浮かんでこなかった。
神様、仏様、イエス様、お釈迦様!今日という日を僕に与えてくださってありがとうございます!!
心の中で何度も復唱し、腫れるほど頬をつねって夢ではないことを確認した。
「痛いっ!やっぱり……!夢じゃないっ」
やったぁ、と大きな声を出す。嬉しさのあまり、周りに気が回らない。ドン、と隣の部屋から壁を蹴られる音がして、俺は我に返った。



