次の日、授業もなければオリエンテーションもないため、サークル活動をしている学生は勧誘準備のために一限よりも早い時間から学校へ来ていた。俺もその一人で、昨日渡されたプリントを手に、同学年の男子と椅子や机を借りに行ったりと、学内と中庭を行ったり来たりの往復をさせられていた。
「太陽、設置は大丈夫だからビラを部室から持ってきてくれないか?」
 同じ日に当番になっていた先輩が、俺の持ってきた机にダンボールで作ったサークル名の書かれた看板を取り付けていた。ゴテゴテの飾りが施されていて、手作り感とやっつけ感が滲み出ている。すでに接着剤が剥がれかけており、今にも壊れそうなその看板は今日から三日間も働きっぱなしだそうだ。
「行けばわかるし、多分誰かいるだろうから」
 せっかく落ち着つけそうだったが、先輩の頼みとなると落胆の声を漏らすこともできない。俺は二つ返事で部室へ戻って行った。
 サークルの部室は中庭を抜けた部室棟の二階にあった。俺以外にもせっせと部室棟から諸々の荷物を運び出す学生がちらほら見える。勧誘期間は三日間しかない。それ以外の日は新入生自らが仮入部や本入部の申し出が無い限り、上級生からサークルや部活動に誘い込む機会は殆ど無いのだ。ここを逃すとその年の部員は減り、存続が危うくなっていく。同好会に降格すると、部室もなくなってしまう。自分達の城のため、どこの部もサークルも準備に準備を重ねたのだろう。でなければ、一限よりも早い時間に大学になんか来やしない。俺は出来るだけ足早に階段を上って部室へ向かった。