これは、大切な君へ送る手紙です。
もしかしたら僕は最後まで君に本当に好きだと伝えられないままお別れをしてしまったかもしれないから、身勝手なことだけど僕の気持ちをここに記させてください。
覚えてますか、僕達が出会った日のことを。
僕は君に一目惚れしたと言いました。でもそれは半分は嘘です。
一目見て君をいつか好きになるんじゃないかという予感はしていました。でも恋ではありませんでした。
だっておかしいでしょう? 一目見て誰かを好きになるなんてこと現実的じゃない。
それでも僕は嘘をつきました。僕を作ってくれた人が言っていたんです。
「嘘でも、言い続ければいつか本当になる」 と。
僕は誰かを大切にする幸せを知りたかった。あの人が僕を見て幸せだと言ったように。
身勝手でごめんなさい。君はこの手紙を見て後悔したかもしれません。
君が好きになってくれた僕は全然まっすぐなんかじゃないんだ。
僕は君と過ごしていく日の中でどんどん君を好きになっていきました。
初めは君が望むことをしていました。心が伴わなくても頭が理解していたから。
あの日、君と一緒にプラネタリウムへ行った日に君は僕のために泣いてくれた。それがたまらなく嬉しかったんです。
君と生活を共にする中で君を理解して、誰かを好きになる幸せと切なさを知りました。
けれど僕はアンドロイドだから君と全てを理解し合うことはできません。もちろん生身の人間であってもそれは不可能に近いです。
でも僕は涙を流す君を見て一緒に涙を流したかった。アンドロイドにはそんな機能はついていません。当たり前だから僕を作ったあの人も気づかなかったのでしょう。
抗争は近いうちに終わりを迎えます。きっとこの手紙が届く頃には僕の機能も停止している。それでいいです。
プラネタリウムで君が言ってくれたように、もし星の巡りが僕を連れて行ってくれるなら間違いなく初めに君のもとへ行きます。
そして何度でも僕の名前を呼んでください。彼方という名前は僕にとって機種名を忘れないようにするための暗号でしかなかった。でも君が大切なものに変えてくれた。
いつかその時が来たら僕の名前を呼んでほしいです。
今までも、これからも、ありがとうを君に。
PS:この手紙が敬語なのは気持ちを書くのがなんだか恥ずかしかったからだよ



