「……」
光が消えて、人の気配も消えた。
足音も他の生き物もいなくなり、ただただ小川のように小さい水の音が流れる。
それは安心を与えるという効果は得られず、なぜか集中して周囲を探る。
いないとわかっている。
いないはずなのに、「もしかして」と思ってしまう。
通路の全域。
水のある空間の全域。
明らかに土の中も探って、探って、探って、ようやく大きく息を吐けた。
「……はあぁぁぁあー」
「ふー……」
私よりも緊張しているように見えたけど、私の方が緊張していたかのようなリアクションの差だ。
二人して呼吸が浅くなってしまっていて、安堵から心臓が思い出したかのように活動を再開する。
ばくばくする。
「行きましたよね」
「た、たぶん」
何度も確認したけれど、もう一度確認。
魔力を探る。
そして確かに誰もいないだろうということを確信にして、隠れていた場所からこっそりと顔を出す。
私たちが隠れていたのは、実は通路の出入り口の下。
研究員たちがいた通路と平行に穴を掘っていた。
まさに灯台下暗し。先を見るために灯を照らすから、足元はより暗く見える。
探しに行って足が見つかったのが良かった。
ホローテは気の毒だけど、それが早々に見つかったおかげで、通路の下は探られなかったのだとも思うし。
魔力を探られていたら完全にばれていたと思うし。
念には念を入れて、目視でも誰もいないことを確認。
土でできた壁を風でえぐり、狭い空間から解放された。
最小限のスペースだったから、二人とも体育座り状態だった。
二人して立ち上がっては、両手を大きく上げて伸びる。
「戻ってくるとしても通路の奥からでしょうが、今出ると鉢合わせの可能性もありますかね」
「た、確かに」
「じゃあそれまで、ここで静かに過ごしていましょう。時間をおいてから脱出します」
土を背に座り込む。
活動時間より緊張のせいで疲労が溜まっている。
まさかベローズさんがいるとは思わなかった。
あの人の声はまだトラウマだな。
声すらも聴きたくない。
私に倣ったのか、二人分ぐらいの間隔をあけて、ナオさんも同じように座り込んだ。膝を抱え、その膝を見つめ、縮こまる。
静かにと言った手前、話しかけるのはいかがなものだろうかと思うのだけど。
まあ黙っているだけというのも間が持たない。
と思っていたのだが。
「じじ、治るかな」
ぽつり、と呟いた。
聞いてきているのかはわからない。
答えるべきだろうか。
答えるべきだろうな。
ここまで来てもらったんだし。
「わかりません」
「え……」
膝を見ていたであろう目と顔が、私の方を向いた。
私はその視線を避けるように、顔は前に向けたまま、見えていないはずの目だけを向けた。
「じじさんが寝込んでしまった理由が、現状わかっていません。今回のホローテの件がヒントではないかとは思いますが、具体的な追及はこれからです。むしろホローテが関わっていないとしたら、初めからに戻ります」
「そんな……」
酷なことだと思う。
少なからずの期待を持たせてしまうのはわかっていたから。
嘘をつくのも違うので正直に答えた。
結局、傷つけてしまっているのだが。
「……今日、戻ったら、早々に調べます。そして早く報告に上がります」
「……う、ん」
心ここにあらず。
上の空。
膝の頭に視線を移し、声は今までで一番小さくてほとんど聞こえない。
この状態では話なんてできる状態でもない。
そうさせたのは私だけど、反省をしても改善ができない。
ので、余計なことはこれ以上言わないことに努めた。
―――――……
「じゃあ、始めるか」
あのあと、弟子は地上の様子を探ってから、脱出用の魔法陣を使用して地下から移動した。
日暮れとは言わない程度に日が傾いており、午前中から随分な時間が経過していた。
地下にいたらやはり時間間隔が狂うようだ。
地上に出て急いで療養院に戻り、何食わぬ顔で医術師と合図を交わす。
詳細はの後ほどということで接触は少なく、夜までは医術師の見習いとして過ごしていた。
ちなみに目隠し君は、話しかけず、遠い位置で仕事に励んでいる様だった。
そして現在。
部屋の真ん中の魔法陣の中に、一体のホローテ。
―― この魔法陣は?
「ま、私様専用のものだな。調査のためによく使ってたんだ」
主に生態調査の。
今回はうってつけだろう。
私様もホローテについては調べたことはほとんどない。
こうして元気な個体は初めてだ。
今までは剝製や四肢だけだったりだったな。
床に描かれた魔法陣に足の裏を向ける。
次第に薄く光り、ぼーっとしているホローテを下から照らす。
相も変わらず逃げる様子もない中のそいつの周りに、文字が浮き出ては消える。
「……ほうほう。ふむ。……へー。ああ、なるほど」
この個体の情報、種族の情報が文字となって提示される。
そこで分かったことは、このホローテという種族。
『不老』というのは本当らしい。
正しくは『脱皮をすることで怪我を治癒し、老いを悟らせない』というもの。
見た目が老いないだけで、ダメージの蓄積や寿命はあるらしい。
なので『死』という概念はある。
光が消えて、人の気配も消えた。
足音も他の生き物もいなくなり、ただただ小川のように小さい水の音が流れる。
それは安心を与えるという効果は得られず、なぜか集中して周囲を探る。
いないとわかっている。
いないはずなのに、「もしかして」と思ってしまう。
通路の全域。
水のある空間の全域。
明らかに土の中も探って、探って、探って、ようやく大きく息を吐けた。
「……はあぁぁぁあー」
「ふー……」
私よりも緊張しているように見えたけど、私の方が緊張していたかのようなリアクションの差だ。
二人して呼吸が浅くなってしまっていて、安堵から心臓が思い出したかのように活動を再開する。
ばくばくする。
「行きましたよね」
「た、たぶん」
何度も確認したけれど、もう一度確認。
魔力を探る。
そして確かに誰もいないだろうということを確信にして、隠れていた場所からこっそりと顔を出す。
私たちが隠れていたのは、実は通路の出入り口の下。
研究員たちがいた通路と平行に穴を掘っていた。
まさに灯台下暗し。先を見るために灯を照らすから、足元はより暗く見える。
探しに行って足が見つかったのが良かった。
ホローテは気の毒だけど、それが早々に見つかったおかげで、通路の下は探られなかったのだとも思うし。
魔力を探られていたら完全にばれていたと思うし。
念には念を入れて、目視でも誰もいないことを確認。
土でできた壁を風でえぐり、狭い空間から解放された。
最小限のスペースだったから、二人とも体育座り状態だった。
二人して立ち上がっては、両手を大きく上げて伸びる。
「戻ってくるとしても通路の奥からでしょうが、今出ると鉢合わせの可能性もありますかね」
「た、確かに」
「じゃあそれまで、ここで静かに過ごしていましょう。時間をおいてから脱出します」
土を背に座り込む。
活動時間より緊張のせいで疲労が溜まっている。
まさかベローズさんがいるとは思わなかった。
あの人の声はまだトラウマだな。
声すらも聴きたくない。
私に倣ったのか、二人分ぐらいの間隔をあけて、ナオさんも同じように座り込んだ。膝を抱え、その膝を見つめ、縮こまる。
静かにと言った手前、話しかけるのはいかがなものだろうかと思うのだけど。
まあ黙っているだけというのも間が持たない。
と思っていたのだが。
「じじ、治るかな」
ぽつり、と呟いた。
聞いてきているのかはわからない。
答えるべきだろうか。
答えるべきだろうな。
ここまで来てもらったんだし。
「わかりません」
「え……」
膝を見ていたであろう目と顔が、私の方を向いた。
私はその視線を避けるように、顔は前に向けたまま、見えていないはずの目だけを向けた。
「じじさんが寝込んでしまった理由が、現状わかっていません。今回のホローテの件がヒントではないかとは思いますが、具体的な追及はこれからです。むしろホローテが関わっていないとしたら、初めからに戻ります」
「そんな……」
酷なことだと思う。
少なからずの期待を持たせてしまうのはわかっていたから。
嘘をつくのも違うので正直に答えた。
結局、傷つけてしまっているのだが。
「……今日、戻ったら、早々に調べます。そして早く報告に上がります」
「……う、ん」
心ここにあらず。
上の空。
膝の頭に視線を移し、声は今までで一番小さくてほとんど聞こえない。
この状態では話なんてできる状態でもない。
そうさせたのは私だけど、反省をしても改善ができない。
ので、余計なことはこれ以上言わないことに努めた。
―――――……
「じゃあ、始めるか」
あのあと、弟子は地上の様子を探ってから、脱出用の魔法陣を使用して地下から移動した。
日暮れとは言わない程度に日が傾いており、午前中から随分な時間が経過していた。
地下にいたらやはり時間間隔が狂うようだ。
地上に出て急いで療養院に戻り、何食わぬ顔で医術師と合図を交わす。
詳細はの後ほどということで接触は少なく、夜までは医術師の見習いとして過ごしていた。
ちなみに目隠し君は、話しかけず、遠い位置で仕事に励んでいる様だった。
そして現在。
部屋の真ん中の魔法陣の中に、一体のホローテ。
―― この魔法陣は?
「ま、私様専用のものだな。調査のためによく使ってたんだ」
主に生態調査の。
今回はうってつけだろう。
私様もホローテについては調べたことはほとんどない。
こうして元気な個体は初めてだ。
今までは剝製や四肢だけだったりだったな。
床に描かれた魔法陣に足の裏を向ける。
次第に薄く光り、ぼーっとしているホローテを下から照らす。
相も変わらず逃げる様子もない中のそいつの周りに、文字が浮き出ては消える。
「……ほうほう。ふむ。……へー。ああ、なるほど」
この個体の情報、種族の情報が文字となって提示される。
そこで分かったことは、このホローテという種族。
『不老』というのは本当らしい。
正しくは『脱皮をすることで怪我を治癒し、老いを悟らせない』というもの。
見た目が老いないだけで、ダメージの蓄積や寿命はあるらしい。
なので『死』という概念はある。



