ということで、宿から海沿いのギルドへ行き、転移させてもらう。
今日はもうお祭りはやっていないが、海水浴を楽しむ人が大勢いて相も変わらず賑やか。
ギルドの入り口付近には浮き輪やタオルが売っている。
売店も兼ねているみたい。
入ってさっそくお婆さんが受付をして、最初に来た時と同じ転移の陣が書いてある部屋に行く。
今回は報酬を受け取り済みだったため、改めて代金を支払った。
「行先は……なんだい、砂に行くのか。また暑い所に」
「まあ、任務なんで」
「そうかい。気を付けてるんだよ。ほれ」
餞別に名産のお茶を貰った。
暑さに気を付けろ、とのことらしい。
有難く頂戴して、転移が発動する。
姿がお互いに見えなくなる前に、お婆さんは後ろを向いてしまった。
けど、悪い気はしなかった。
「らっしゃーい」
白い景色の向こう側には、黒髪をポニーテール……緩くお団子っぽくした、色黒の男性。
今までのギルドの人の中では一番若く、中年ぐらいか。
細くも太くもない……ように見える。
背もたれの椅子を反対向きに座り、頬杖を突きながらお出迎え。
のったりと立ち上がり、と部屋の扉を開けた。
「カエ様ご一行っすね。こちらへどーぞー」
今までと同じように別室に通され、その先はまさかの掘り炬燵風。
中を覗いてみたけど温かくはならないっぽい。
形だけ掘り炬燵。
「変わったテーブルだな」
「そうですね。聞いたことはありましたけど、見るのは初めてです」
この世界ではあまり知られていない構造らしい。
まあ、国はどちらかというと洋風だしなあ。
私としては懐かしくなって楽しいのだけど。
温かくなるようにしない、だろうなあ。この地域は暑いらしいし。
今回は私とロタエさんが並び、カエ様と色黒の人が並んでいる。
「最初は自己紹介っす。オレはショウ。よろしくー」
話し方はセンさんに似た印象。
私たちも名を名乗り、書類を手にしたショウさんが読み上げる。
「任務は最上級の-ね。薬は持ってる?」
「持っています。こちらはこの国に買い取っていただく分です」
「お、助かるー。では後でお会計を」
自分たちの薬が入った袋の何倍も大きい袋は、この地域の不足分を補うための様。
去年までは賄えているのに、今年からか今年だけか、足りていない。
それはルルの異常繁殖によるものだとショウさんが話す。
また、異常繁殖。
「例年と比べどれぐらい増えている?」
「軽く五倍っすかねー。薬はそれ以上に足りてないっす」
「まあ、そうなるな」
猛尾・ルルの特に怖い所は、食事の仕方。
毒は体が麻痺し、短くとも一日は全く動けない。
毒について言ってしまえばその程度。
ただし、もちろん痺れるだけでは済まない。
身体が動かなくとも意識は残る。
障害されるのは触覚だけ。
視覚や聴覚はそのままだ。
そんなときに行われるルルの食事というのが、『体を貪られる』こと。
一匹ではなく、何十、何百匹に。
痛みは感じない。
しかし喰われているところはしっかり見えて、聞こえている。
次第に麻痺が取れ、触覚が戻り、痛みを感じるようになる。
喰われたところがわかるようになってしまう。
喰われて亡くなる方はもちろん、ショックで亡くなる方もいる。
だからこそ、麻痺を解毒する薬が必要だ。
「死者は……まあ、多いっす」
「ああ、聞いている。だからこそ早めに対応させてもらう」
「よろしく頼んます」
悲痛な表情で、私たち全員に向けて頭を深く下げた。
その様子で、ことの深刻さとこの人の真剣さがより大きいものだとわかる。
自分の修行のためなんて言っていられない。
早く片付けるための行動をとらないといけない。
「ではさっそく向かう」
「じゃあ出現場所まで案内するっす」
「頼む」
ギルドを出て、馬車……ではなくラクダっぽい車に乗る。
ラクダっぽい、こぶ三つと足六脚の緑色の生物。
手綱を引く運転手の位置にショウさんが座り、荷台に乗り込んだ。
両サイドに座席があり、天井から真ん中に吊り輪がぶら下がっている。
まるで電車やバスのよう。
「じゃあ行くんで、しっかり掴まっててくださーい」
ピシっとラクダっぽい生き物のお尻を叩き、高らかと叫んだその生き物は駆けだした。
それはもう、すごいスピードで。
「うわっ」
「ヒスイっ」
「っと、すみません」
「凄まじいな。しっかり掴まってろ」
荷台で座っていても体のバランスが崩れ、ガタガタと揺れ、髪が真横に靡くほどの猛スピード。
なるほど、天井から吊り輪があるのはそういうことか。
ホントに電車のようだった。
話す余裕のないほどに飛ばしていて、外の景色を見る余裕はない。
一体どこを走っているのだろうか。
「……うっ」
とりあえず、酔いそう。
―――――……
「うえぇ」
酔った。
荷台の影でロタエさんに背中をさすられる。
飲みかけだったお茶があってよかった。
見渡す限りが砂、砂、砂。後ろには荷台。
その後ろにはオアシス、つまりルルの住処がある。
オアシスの中に拠点を作るわけにはいかず、といっても炎天下で日陰もない場所にするわけにもいかない。
ということで、この荷台を拠点とさせてもらった。
「なかに水分も軽食も積んでるんで、必要であれば使ってもらっていいんで」
「助かる。ありがとう」
体調が整い次第、さっそく調査に向かう。
二度もすみません。
今日はもうお祭りはやっていないが、海水浴を楽しむ人が大勢いて相も変わらず賑やか。
ギルドの入り口付近には浮き輪やタオルが売っている。
売店も兼ねているみたい。
入ってさっそくお婆さんが受付をして、最初に来た時と同じ転移の陣が書いてある部屋に行く。
今回は報酬を受け取り済みだったため、改めて代金を支払った。
「行先は……なんだい、砂に行くのか。また暑い所に」
「まあ、任務なんで」
「そうかい。気を付けてるんだよ。ほれ」
餞別に名産のお茶を貰った。
暑さに気を付けろ、とのことらしい。
有難く頂戴して、転移が発動する。
姿がお互いに見えなくなる前に、お婆さんは後ろを向いてしまった。
けど、悪い気はしなかった。
「らっしゃーい」
白い景色の向こう側には、黒髪をポニーテール……緩くお団子っぽくした、色黒の男性。
今までのギルドの人の中では一番若く、中年ぐらいか。
細くも太くもない……ように見える。
背もたれの椅子を反対向きに座り、頬杖を突きながらお出迎え。
のったりと立ち上がり、と部屋の扉を開けた。
「カエ様ご一行っすね。こちらへどーぞー」
今までと同じように別室に通され、その先はまさかの掘り炬燵風。
中を覗いてみたけど温かくはならないっぽい。
形だけ掘り炬燵。
「変わったテーブルだな」
「そうですね。聞いたことはありましたけど、見るのは初めてです」
この世界ではあまり知られていない構造らしい。
まあ、国はどちらかというと洋風だしなあ。
私としては懐かしくなって楽しいのだけど。
温かくなるようにしない、だろうなあ。この地域は暑いらしいし。
今回は私とロタエさんが並び、カエ様と色黒の人が並んでいる。
「最初は自己紹介っす。オレはショウ。よろしくー」
話し方はセンさんに似た印象。
私たちも名を名乗り、書類を手にしたショウさんが読み上げる。
「任務は最上級の-ね。薬は持ってる?」
「持っています。こちらはこの国に買い取っていただく分です」
「お、助かるー。では後でお会計を」
自分たちの薬が入った袋の何倍も大きい袋は、この地域の不足分を補うための様。
去年までは賄えているのに、今年からか今年だけか、足りていない。
それはルルの異常繁殖によるものだとショウさんが話す。
また、異常繁殖。
「例年と比べどれぐらい増えている?」
「軽く五倍っすかねー。薬はそれ以上に足りてないっす」
「まあ、そうなるな」
猛尾・ルルの特に怖い所は、食事の仕方。
毒は体が麻痺し、短くとも一日は全く動けない。
毒について言ってしまえばその程度。
ただし、もちろん痺れるだけでは済まない。
身体が動かなくとも意識は残る。
障害されるのは触覚だけ。
視覚や聴覚はそのままだ。
そんなときに行われるルルの食事というのが、『体を貪られる』こと。
一匹ではなく、何十、何百匹に。
痛みは感じない。
しかし喰われているところはしっかり見えて、聞こえている。
次第に麻痺が取れ、触覚が戻り、痛みを感じるようになる。
喰われたところがわかるようになってしまう。
喰われて亡くなる方はもちろん、ショックで亡くなる方もいる。
だからこそ、麻痺を解毒する薬が必要だ。
「死者は……まあ、多いっす」
「ああ、聞いている。だからこそ早めに対応させてもらう」
「よろしく頼んます」
悲痛な表情で、私たち全員に向けて頭を深く下げた。
その様子で、ことの深刻さとこの人の真剣さがより大きいものだとわかる。
自分の修行のためなんて言っていられない。
早く片付けるための行動をとらないといけない。
「ではさっそく向かう」
「じゃあ出現場所まで案内するっす」
「頼む」
ギルドを出て、馬車……ではなくラクダっぽい車に乗る。
ラクダっぽい、こぶ三つと足六脚の緑色の生物。
手綱を引く運転手の位置にショウさんが座り、荷台に乗り込んだ。
両サイドに座席があり、天井から真ん中に吊り輪がぶら下がっている。
まるで電車やバスのよう。
「じゃあ行くんで、しっかり掴まっててくださーい」
ピシっとラクダっぽい生き物のお尻を叩き、高らかと叫んだその生き物は駆けだした。
それはもう、すごいスピードで。
「うわっ」
「ヒスイっ」
「っと、すみません」
「凄まじいな。しっかり掴まってろ」
荷台で座っていても体のバランスが崩れ、ガタガタと揺れ、髪が真横に靡くほどの猛スピード。
なるほど、天井から吊り輪があるのはそういうことか。
ホントに電車のようだった。
話す余裕のないほどに飛ばしていて、外の景色を見る余裕はない。
一体どこを走っているのだろうか。
「……うっ」
とりあえず、酔いそう。
―――――……
「うえぇ」
酔った。
荷台の影でロタエさんに背中をさすられる。
飲みかけだったお茶があってよかった。
見渡す限りが砂、砂、砂。後ろには荷台。
その後ろにはオアシス、つまりルルの住処がある。
オアシスの中に拠点を作るわけにはいかず、といっても炎天下で日陰もない場所にするわけにもいかない。
ということで、この荷台を拠点とさせてもらった。
「なかに水分も軽食も積んでるんで、必要であれば使ってもらっていいんで」
「助かる。ありがとう」
体調が整い次第、さっそく調査に向かう。
二度もすみません。



