ロタエさんはお城に戻って仕事をするらしい。
突然ロタエさんが帰ってきて、アオイさんは驚くだろうな。
カエ様はいわゆるお忍び状態。
町の中に限るし、学生としては休暇中なので黒よりのグレーゾーンだが許された。
本人曰く、「たまには息抜きしないとな」と。
ロタエさんはため息をついていた。
「お土産買ってきますね」
「楽しみにしてます」
時は昼前。
ギルドから転移をするというので、ロタエさんのお見送りに来た。
夜には帰ってくるそうなので、夕飯も用意しておこうと思う。
お祭りの本番は夜なのだが、それではさすがに人が多い。
カエ様は王子様だし。私は外見は死んだ人だし。
明るいが、昼にお祭りを回って、夜はゆっくり過ごそうということになった。
ロタエさんの転移を見送り、ギルドを出る。
「さて、じゃあ行こうか」
「はい」
お互いマフラーをして、腰までと膝までのマントを羽織りフードを被る。
無地だから見た目はお揃いで色は黒と白。
ギルドからスタートし、浜辺を一直線に歩く。
道の左右に出店が展開され、行く人と来る人が行き交っている。
人々は食べ歩いていたり、ゲームをやったりしている。
大人はお酒を飲んでいるようで陽気に歌ったり踊ったりしている。
本当にそのまま夏祭りだ。
「何か気になるものがあれば寄ろう。気軽に言ってくれ」
「あ、じゃあ、あれに」
「お、行こう」
美味しい匂いがしていて気になっていた。
見たところ、串焼き肉のよう。
肉を焼く匂いってなんでこんなにいい匂いなんだろう。
たれが焦げて香ばしく、艶々に輝いている。
「旦那。二本ほしい」
「あいよ」
「カエ様、お金……」
「あ、それは大丈夫だ」
店主さんから串焼きを貰い、お金を渡す。
いたるところに備え付けられているベンチの空きを見つけ、さっそくいただきます。
「あー……美味しい」
「うん。タレが濃いめでいいな」
「お肉も柔らかい。何の肉だろう」
前歯で嚙み切れるほどの柔らかさ。
噛んだら中から肉汁が溢れてきて口の端から垂れそうになる。
タレはニンニクや玉ねぎのようなものを使っているのか、シャキシャキな歯ごたえも感じる。
甘みもある。果物も使ってるのかな。
お昼前からガッツリ食べてる。
私も元気になったな。
「さっきの話だが、金は任務の報酬から払ってる。俺たちで稼いだんだから気にせず使おう」
ああ、なるほど。ラースとヤビクニの分。
上級任務だからそれなりの額になっていることだろう。
手続きはお願いしていたし、金額は最後に山分けにするという話だったから、すっかり忘れていた。
「たくさん遊べますね」
「そうだな。あれ行かないか?」
食べながら指さすのは的あて。
合計点で景品の豪華さが変わるよう。
腹ごしらえもしたし、今度は遊ぶ番ということか。
「いいですね。カエ様はああいうのは得意なんですか?」
「結構得意だ。……それと、今はその名はやめよう」
「……では何と?」
「コウでいいだろう」
本名じゃないですか。
「いいんですか? 身分、バレますよ?」
「コウなんて珍しくないしな」
「じゃあコウ様で」
「様を付けたらそれなりの身分だってバレるだろ」
「でも付けないわけには」
「シオンには付けてないんだろ?」
「シオンはまあ、同級生ですし、成り行きで……」
「成り行きなら今もそう言える」
さて。自分で言うのもあれだが、どちらも引かないぞ。
呼び捨て……呼び捨てかあ。
王子様をー、なんて言い訳は通用しないこともわかっている。
ただ呼ぶ場所は学校ではないのだから、なんだったら「不敬」って言わる。
でもこの人、引きそうにないものなあ。
変なところで頑固だ。
うんうん唸って、唸って唸って唸っても、目の前にいる強気な顔をした人は一切引く気はなさそうだ。
「……んーーー、わかりました」
「よし、なら今か」
「あれで勝負しましょう」
「ん?」
こういう時はゲームに限る。
勝敗を付けて、勝った方の言うことを聞く。
至極シンプルで分かりやすい。
今はお祭りで、こういうゲームはいろいろある。
口の端を上げて、楽しそうにニヤリと笑う。
こういう勝負事は好きだと思った。
「ヒスイからそんな提案をされるとは思わなかった」
「一本取ったということで私の勝ちですか?」
「それは認められないな。なぜなら開始の合図をしていないから」
食べ終わった串を簡易ごみ箱に捨て、意気揚々と的あての出店に足を進める。
病み上がりのわりに体が軽く、結構楽しんでいることを自覚する。
カエ様も楽しんでくれているのは言動ですぐにわかる。
私より歩くの早いし。
「得点が多いほうの勝ちな」
「わかりました」
「ちなみにヒスイは得意なのか?」
「どうでしょう。試験では的あてはなかなかいい成績でしたけど」
「そうだったな。心して挑もう」
玉を構える。
店主の開始の合図まで、あと何秒。
突然ロタエさんが帰ってきて、アオイさんは驚くだろうな。
カエ様はいわゆるお忍び状態。
町の中に限るし、学生としては休暇中なので黒よりのグレーゾーンだが許された。
本人曰く、「たまには息抜きしないとな」と。
ロタエさんはため息をついていた。
「お土産買ってきますね」
「楽しみにしてます」
時は昼前。
ギルドから転移をするというので、ロタエさんのお見送りに来た。
夜には帰ってくるそうなので、夕飯も用意しておこうと思う。
お祭りの本番は夜なのだが、それではさすがに人が多い。
カエ様は王子様だし。私は外見は死んだ人だし。
明るいが、昼にお祭りを回って、夜はゆっくり過ごそうということになった。
ロタエさんの転移を見送り、ギルドを出る。
「さて、じゃあ行こうか」
「はい」
お互いマフラーをして、腰までと膝までのマントを羽織りフードを被る。
無地だから見た目はお揃いで色は黒と白。
ギルドからスタートし、浜辺を一直線に歩く。
道の左右に出店が展開され、行く人と来る人が行き交っている。
人々は食べ歩いていたり、ゲームをやったりしている。
大人はお酒を飲んでいるようで陽気に歌ったり踊ったりしている。
本当にそのまま夏祭りだ。
「何か気になるものがあれば寄ろう。気軽に言ってくれ」
「あ、じゃあ、あれに」
「お、行こう」
美味しい匂いがしていて気になっていた。
見たところ、串焼き肉のよう。
肉を焼く匂いってなんでこんなにいい匂いなんだろう。
たれが焦げて香ばしく、艶々に輝いている。
「旦那。二本ほしい」
「あいよ」
「カエ様、お金……」
「あ、それは大丈夫だ」
店主さんから串焼きを貰い、お金を渡す。
いたるところに備え付けられているベンチの空きを見つけ、さっそくいただきます。
「あー……美味しい」
「うん。タレが濃いめでいいな」
「お肉も柔らかい。何の肉だろう」
前歯で嚙み切れるほどの柔らかさ。
噛んだら中から肉汁が溢れてきて口の端から垂れそうになる。
タレはニンニクや玉ねぎのようなものを使っているのか、シャキシャキな歯ごたえも感じる。
甘みもある。果物も使ってるのかな。
お昼前からガッツリ食べてる。
私も元気になったな。
「さっきの話だが、金は任務の報酬から払ってる。俺たちで稼いだんだから気にせず使おう」
ああ、なるほど。ラースとヤビクニの分。
上級任務だからそれなりの額になっていることだろう。
手続きはお願いしていたし、金額は最後に山分けにするという話だったから、すっかり忘れていた。
「たくさん遊べますね」
「そうだな。あれ行かないか?」
食べながら指さすのは的あて。
合計点で景品の豪華さが変わるよう。
腹ごしらえもしたし、今度は遊ぶ番ということか。
「いいですね。カエ様はああいうのは得意なんですか?」
「結構得意だ。……それと、今はその名はやめよう」
「……では何と?」
「コウでいいだろう」
本名じゃないですか。
「いいんですか? 身分、バレますよ?」
「コウなんて珍しくないしな」
「じゃあコウ様で」
「様を付けたらそれなりの身分だってバレるだろ」
「でも付けないわけには」
「シオンには付けてないんだろ?」
「シオンはまあ、同級生ですし、成り行きで……」
「成り行きなら今もそう言える」
さて。自分で言うのもあれだが、どちらも引かないぞ。
呼び捨て……呼び捨てかあ。
王子様をー、なんて言い訳は通用しないこともわかっている。
ただ呼ぶ場所は学校ではないのだから、なんだったら「不敬」って言わる。
でもこの人、引きそうにないものなあ。
変なところで頑固だ。
うんうん唸って、唸って唸って唸っても、目の前にいる強気な顔をした人は一切引く気はなさそうだ。
「……んーーー、わかりました」
「よし、なら今か」
「あれで勝負しましょう」
「ん?」
こういう時はゲームに限る。
勝敗を付けて、勝った方の言うことを聞く。
至極シンプルで分かりやすい。
今はお祭りで、こういうゲームはいろいろある。
口の端を上げて、楽しそうにニヤリと笑う。
こういう勝負事は好きだと思った。
「ヒスイからそんな提案をされるとは思わなかった」
「一本取ったということで私の勝ちですか?」
「それは認められないな。なぜなら開始の合図をしていないから」
食べ終わった串を簡易ごみ箱に捨て、意気揚々と的あての出店に足を進める。
病み上がりのわりに体が軽く、結構楽しんでいることを自覚する。
カエ様も楽しんでくれているのは言動ですぐにわかる。
私より歩くの早いし。
「得点が多いほうの勝ちな」
「わかりました」
「ちなみにヒスイは得意なのか?」
「どうでしょう。試験では的あてはなかなかいい成績でしたけど」
「そうだったな。心して挑もう」
玉を構える。
店主の開始の合図まで、あと何秒。



