シャワーを浴びた順で、風呂場が温まっていないことに気付かれたかな。
最初にベローズさんに「死体」と言われた時から、温めてはいけないのではないかと考えていた。
最初に目が覚めた時……もうほぼ一年前に温かいシャワーを浴びたきりだ。
冬は辛かったけど。
体を保温したり温かいものを飲んだり、そう言うことはできる。
なので温かいシャワーも大丈夫なのではと頭では考えているのだが、実際に行動には移せない。
言われただけで、普段出来ていたことが出来なった。
それ以上は指摘されず、弁解もせず。
でもそれが苦痛になるようなことはなく。
次の日備えて眠った。
―――――……
「ああ、ここだ」
街の人たちに尋ねながら、周囲よりも一際大きい家の前に来た。
敷地も家も庭も、全てが大きい。
ギラギラ、と言うほど装飾はされていないが、人目を引く程度には豪勢だ。
街路路に面した門に門兵がいて、声をかけると中へ通してくれた。
玄関までも歩く。
建物の扉の手前に、小ちゃくて丸い人がいる。
「ヨウコソお越しくださいまシタ!」
髪の毛くるんくるん、ちょび髭もワンカール。
体全身でカーブを描いている見た目は、子ども人気そうだ。
着ている服は艶やかで、見ただけでいいものだと言うことがよくわかる。
おそらくはこの人が、ドゥ・マルス様。
「こノ度は遥々オ越し頂き、アりがとうござイます! ササッ、お茶のご用意がありまスので、お上がリくだサイ!」
引っかかる喋り方をする人だ。
手元はちょこちょこ、足はパッタンパッタンと、身振りも忙しない。
歩きに関しては丸い体がどうにも動かしにくそう。
先頭を歩いて案内された先は、食堂らしき部屋。
お菓子と紅茶が用意されていて、歓迎する気満々なのが手にとるようにわかる。
長方形に伸びたテーブルは、短辺の席同士の顔がわかるかどうかと言ったレベルで長辺が長く、普段はどれだけの人数を読んでいるのだろうかと疑問を持つ。
三人が並んで席につき、冷たい紅茶を出される。
緊張からなのか、紅茶の香りがわからない。
マルス様が正面に座った。
長辺で向かい合っているから、顔はよく見える。
「改めまシテ、私が依頼主のシルクラス・ドゥ・マルスです。 この度は依頼を引き受けてくダさリ、感謝申し上ゲます!」
テーブルに両手をついて、深々と頭を下げた。
テンションはライラさんに似ているところがあるなあ。
「私はコウ・ゼ・フローレンタム。ですが任務中は「カエ」と名乗っておりますので、どうぞそちらでよろしく頼む」
「わカりました! カエ様でゴザいますネ!」
握手を交わす。
「ロタエ・ドゥ・スピニングと申します。魔術師副団長として、カエ様に同行させていただいております」
「お噂はかネがね! よロしくお願いいたしまス!」
握手を交わす。
「……ヒスイ、です」
「ヒスイ様ですネ! 慎ましイお方なノデすかナ!?」
ワッハッハ、と。
握手を交わす。
この人は、家名を名乗らなくても対等に扱ってくれるタイプ、なのだろうか。
ロアさんのこともあったから多少の警戒もありつつ名乗ったが、豪快笑いで流されて、前者二名と同様に握手を交わした。
ああ、それだけで「良い人かも」と思ってしまう私は単純だなあ。
「デは早速ですガ! ヤビクニの件をお引キ受けいたダいたと言ウことで!」
「はい。この後ギルドに寄ってから向かいます」
「そうですかそうですか! ご健闘をお祈りさせていただきます。して、一つお願いがあるのですが」
指を一本、天井に向ける。
意味慎重に無言の時間を設け、目を細めて、声を落とす。
「多少の傷は構いまセんが、なるベく早く体はそのマまでお願いシます」
「そのまま、とは、本体を切断せず、と?」
「その通りでゴざいまス」
「火は?」
「焦げハあまり好みませんネ」
縛りが増えた。
足場不安定、火属性魔法は非推奨、切断や刃物の使用もなし。
接触や近接も危険
うーん。骨が折れそう。
「聞くが、ヤビクニを買い取って、どうする?」
「食べるンですヨ!」
今日一の明るい表情で、白く輝かしい歯を見せつけられた。
ええ……食べるの……、クワガタグッピーを……?
カエ様もまさか食べるとは思っていなかったのか、口元がひくついている。
流石のロタエさんは表情ひとつも変えていない。
膝の上の手は反応してたのは見た。
「アれは美味しいんでスよお! なゼか賛同者がイないのですガ、そレはそれで独り占メできルのでね! よロしければ成功しタ暁ニはご一緒に如何でス?」
嘘偽りのなさそうな顔でお誘いをいただいたが、三人揃ってひとまず保留にさせて貰った。
私は絵を見た時から食べるのはないと考えていたが、仮にも貴族で依頼主の人に、問答無用で「NO」とは言えなかった。
こればかりはしょうがない。
「ヒスイから確認したいことはあるか?」
代表として話していたカエ様から、話を振られる。
マルス様の目を見れば、拒否も拒絶も嫌悪もなく、むしろ逆に好奇心を向けられているようにこちらを見ていた。
「では、一つだけ、よろしいですか?」
「一つと言わズ何個でもかまいませんよ!」
「ありがとうございます。お食べになると言うことは、食べられる程度に扱ってきても構いませんか」
「ソれが切ると言ウことでなけれバ構いません。ムしろ有難いですね! よリ新鮮な状態で調理してくだサるのなら、今までデ一番美味しくなるヤもしれませン!」
ワッハッハ。
最初にベローズさんに「死体」と言われた時から、温めてはいけないのではないかと考えていた。
最初に目が覚めた時……もうほぼ一年前に温かいシャワーを浴びたきりだ。
冬は辛かったけど。
体を保温したり温かいものを飲んだり、そう言うことはできる。
なので温かいシャワーも大丈夫なのではと頭では考えているのだが、実際に行動には移せない。
言われただけで、普段出来ていたことが出来なった。
それ以上は指摘されず、弁解もせず。
でもそれが苦痛になるようなことはなく。
次の日備えて眠った。
―――――……
「ああ、ここだ」
街の人たちに尋ねながら、周囲よりも一際大きい家の前に来た。
敷地も家も庭も、全てが大きい。
ギラギラ、と言うほど装飾はされていないが、人目を引く程度には豪勢だ。
街路路に面した門に門兵がいて、声をかけると中へ通してくれた。
玄関までも歩く。
建物の扉の手前に、小ちゃくて丸い人がいる。
「ヨウコソお越しくださいまシタ!」
髪の毛くるんくるん、ちょび髭もワンカール。
体全身でカーブを描いている見た目は、子ども人気そうだ。
着ている服は艶やかで、見ただけでいいものだと言うことがよくわかる。
おそらくはこの人が、ドゥ・マルス様。
「こノ度は遥々オ越し頂き、アりがとうござイます! ササッ、お茶のご用意がありまスので、お上がリくだサイ!」
引っかかる喋り方をする人だ。
手元はちょこちょこ、足はパッタンパッタンと、身振りも忙しない。
歩きに関しては丸い体がどうにも動かしにくそう。
先頭を歩いて案内された先は、食堂らしき部屋。
お菓子と紅茶が用意されていて、歓迎する気満々なのが手にとるようにわかる。
長方形に伸びたテーブルは、短辺の席同士の顔がわかるかどうかと言ったレベルで長辺が長く、普段はどれだけの人数を読んでいるのだろうかと疑問を持つ。
三人が並んで席につき、冷たい紅茶を出される。
緊張からなのか、紅茶の香りがわからない。
マルス様が正面に座った。
長辺で向かい合っているから、顔はよく見える。
「改めまシテ、私が依頼主のシルクラス・ドゥ・マルスです。 この度は依頼を引き受けてくダさリ、感謝申し上ゲます!」
テーブルに両手をついて、深々と頭を下げた。
テンションはライラさんに似ているところがあるなあ。
「私はコウ・ゼ・フローレンタム。ですが任務中は「カエ」と名乗っておりますので、どうぞそちらでよろしく頼む」
「わカりました! カエ様でゴザいますネ!」
握手を交わす。
「ロタエ・ドゥ・スピニングと申します。魔術師副団長として、カエ様に同行させていただいております」
「お噂はかネがね! よロしくお願いいたしまス!」
握手を交わす。
「……ヒスイ、です」
「ヒスイ様ですネ! 慎ましイお方なノデすかナ!?」
ワッハッハ、と。
握手を交わす。
この人は、家名を名乗らなくても対等に扱ってくれるタイプ、なのだろうか。
ロアさんのこともあったから多少の警戒もありつつ名乗ったが、豪快笑いで流されて、前者二名と同様に握手を交わした。
ああ、それだけで「良い人かも」と思ってしまう私は単純だなあ。
「デは早速ですガ! ヤビクニの件をお引キ受けいたダいたと言ウことで!」
「はい。この後ギルドに寄ってから向かいます」
「そうですかそうですか! ご健闘をお祈りさせていただきます。して、一つお願いがあるのですが」
指を一本、天井に向ける。
意味慎重に無言の時間を設け、目を細めて、声を落とす。
「多少の傷は構いまセんが、なるベく早く体はそのマまでお願いシます」
「そのまま、とは、本体を切断せず、と?」
「その通りでゴざいまス」
「火は?」
「焦げハあまり好みませんネ」
縛りが増えた。
足場不安定、火属性魔法は非推奨、切断や刃物の使用もなし。
接触や近接も危険
うーん。骨が折れそう。
「聞くが、ヤビクニを買い取って、どうする?」
「食べるンですヨ!」
今日一の明るい表情で、白く輝かしい歯を見せつけられた。
ええ……食べるの……、クワガタグッピーを……?
カエ様もまさか食べるとは思っていなかったのか、口元がひくついている。
流石のロタエさんは表情ひとつも変えていない。
膝の上の手は反応してたのは見た。
「アれは美味しいんでスよお! なゼか賛同者がイないのですガ、そレはそれで独り占メできルのでね! よロしければ成功しタ暁ニはご一緒に如何でス?」
嘘偽りのなさそうな顔でお誘いをいただいたが、三人揃ってひとまず保留にさせて貰った。
私は絵を見た時から食べるのはないと考えていたが、仮にも貴族で依頼主の人に、問答無用で「NO」とは言えなかった。
こればかりはしょうがない。
「ヒスイから確認したいことはあるか?」
代表として話していたカエ様から、話を振られる。
マルス様の目を見れば、拒否も拒絶も嫌悪もなく、むしろ逆に好奇心を向けられているようにこちらを見ていた。
「では、一つだけ、よろしいですか?」
「一つと言わズ何個でもかまいませんよ!」
「ありがとうございます。お食べになると言うことは、食べられる程度に扱ってきても構いませんか」
「ソれが切ると言ウことでなけれバ構いません。ムしろ有難いですね! よリ新鮮な状態で調理してくだサるのなら、今までデ一番美味しくなるヤもしれませン!」
ワッハッハ。



