城から。
本来ギルドの任務は、困った村民、ギルドが必要と判断したものが提示される。
城から出すということは文字通り国家レベルの問題であるはずだ。
なにせ、問題をまず最初に認識するのは街や村なのだから。
国が死よりも先に動くというのは、順番的におかしい。
「なぜ街が動く前に城が把握し、行動に移しているのか。単純に考えれば『城が関わっているから』ということになる」
「城、というのは、私に話すのですから、研究所ですか?」
「そこはまだわからん」
研究所が関わっている可能性も捨てきれはしない。
だからこそ、私にも話すのだろう。
研究所が関わる。
研究所が動いている。何が、とは言えないが、『警戒が必要』ということ。
「スパデューダの人的被害というのも、怪我とか生易しいものではない。これ以上大きな被害が出る前に把握しておきたかった。そしてこうやって城から離れた方が、盗み聞きされる心配もないからな」
スグサさんからギルドの話をされたときは、渡りに船だと思ったらしい。
城から離れ、状況を把握し、私に話もできる。
学校では『同行者』がいるし、正直なところ、誰かもわかっていないのだから迂闊に話はできない。
その割には言おうとしてなかったけど。
そこは殿下の優しさということにして、追求しないでおこう。
「家を残さないでいいというのも引っかかったんだが、それは村民の総意だというしな。腑には落ちないが任務は任務だ。今は粛々とこなしていくことには変わりない。ただ、注意はしてくれよ」
「わかりました。カエ様」
「ギルドじゃないから変えなくてもいいんだけどな……」
任務中は『カエ様』と呼ぶことに決めている。
いざギルドで『殿下』と口走ってしまわないように、しっかり区別しておかないといけない。
村の中心で、前日の≪水面の華≫を使った時に丁度出来上がった穴に今回作った氷を入れていく。
今回は小さいものが多いので、このまま焼却処理をする。
骨を討伐報告として挙げるため、燃やし終えたら回収だ。
―――――……
ギルド。
焼却処理をして病原菌を巻き散らす心配がなくなったラースの骨を、討伐の証拠として提出する。
貴重な素材ならば買取されるが、今回はよくて無料処分だ。
軽く千を超えた個体の骨を入れた袋を、丸ごと受付のオールバック・モノクルお爺さんに渡す。
「お疲れさまでした。想定よりもだいぶ多い数がいたようですね」
眉を顰める。
一目でそう判断するほど、やはり異常なのだろう。
「一応確認だが、この地域はラースが増殖しやすい地域、というわけではないか?」
「ありません。ピューリクリムのもその他の村や街でも」
「そうか。それは不幸中の幸いだ」
ピューリクリム以外に被害はないということを確認し、今回の任務は終了。
完了の証を貰い、次の任務先へ向かう。
もう日は傾いているが、次の街に移動して休み、次の任務に挑む予定。
移動は転移魔法を使う。
目的が任務であるならば、ギルド間の転移をギルドが手伝ってくれる。
有料で。
「次の任務は海の街でございますね。ここにはギルドがありますので、直接目的地に転移が可能です」
「よろしく頼む」
今回受け取れる代金から、転移魔法分を天引きしてもらった。
残りの代金をロタエさんが代表として受け取る。
そして最初に転移してきた部屋で、円の中に入り、石を貰う。
「お気をつけて」
紳士の恭しい挨拶を見届けて、光に包まれた。
最初よりも冷静に状況を把握し、景色が切り替わるのがわかる。
今までレンガ調の家が、今度は真っ白な壁になる。
埋め込まれているのは海らしく貝殻だ。
「いらっしゃい」
黒髪と白髪が半々ぐらい混ざった髪を、頭の上で頭と同じぐらいにお団子にして、こんがりと日に焼けた肌をしている健康的お婆さんがお出迎え。
片手つついている杖……らしきものは杭だった。
「隣の部屋で待ってておくれ。今作業中なんだ」
さっさと軽い足取りで歩いている。
うん。杖じゃないな、あれ。
お婆さんに続いて部屋を出ると、海の家を思わせる造り。
サーフボードのような板が飾られている。
貝殻の装飾。色鮮やかな花。背の高い木。
窓は開け放たれていて、潮の匂いがする風が吹き込んでくる。
夕暮れの傾いた日が眩しいぐらい入り込んでいる。
西日の射す場所に、三人掛けソファーが机を挟んで向かい合わせになっていたので、三人並んで座る。
コンコンコン。
「待たせてすまなかったね。ちょっと日除けを片付けてる途中だったんだよ」
今度は杭は持たずに、両の足で登場したお婆さん。
その手には今度は折りたたまれた紙が握られている。
挨拶もそこそこに正面に座り、紙の内容を読み上げる。
「この任務を受けた人には全員、依頼主からの伝言があるんでね。まずはそれを聞いてくだされ」
今回任務を引き受けてくれて有難く思う。
直接お伝えしたいので、是非とも我が館にお越しいただきたい。
宿泊についてもご相談に乗りますので、遠慮なく仰ってください。
「だとさ」
「随分な歓迎だ。依頼主はどのような人物なんだ?」
「この土地の領主、ドゥ・マルス様だよ。カエ様なら名前ぐらいは聞いたことあるんじゃないかい?」
本来ギルドの任務は、困った村民、ギルドが必要と判断したものが提示される。
城から出すということは文字通り国家レベルの問題であるはずだ。
なにせ、問題をまず最初に認識するのは街や村なのだから。
国が死よりも先に動くというのは、順番的におかしい。
「なぜ街が動く前に城が把握し、行動に移しているのか。単純に考えれば『城が関わっているから』ということになる」
「城、というのは、私に話すのですから、研究所ですか?」
「そこはまだわからん」
研究所が関わっている可能性も捨てきれはしない。
だからこそ、私にも話すのだろう。
研究所が関わる。
研究所が動いている。何が、とは言えないが、『警戒が必要』ということ。
「スパデューダの人的被害というのも、怪我とか生易しいものではない。これ以上大きな被害が出る前に把握しておきたかった。そしてこうやって城から離れた方が、盗み聞きされる心配もないからな」
スグサさんからギルドの話をされたときは、渡りに船だと思ったらしい。
城から離れ、状況を把握し、私に話もできる。
学校では『同行者』がいるし、正直なところ、誰かもわかっていないのだから迂闊に話はできない。
その割には言おうとしてなかったけど。
そこは殿下の優しさということにして、追求しないでおこう。
「家を残さないでいいというのも引っかかったんだが、それは村民の総意だというしな。腑には落ちないが任務は任務だ。今は粛々とこなしていくことには変わりない。ただ、注意はしてくれよ」
「わかりました。カエ様」
「ギルドじゃないから変えなくてもいいんだけどな……」
任務中は『カエ様』と呼ぶことに決めている。
いざギルドで『殿下』と口走ってしまわないように、しっかり区別しておかないといけない。
村の中心で、前日の≪水面の華≫を使った時に丁度出来上がった穴に今回作った氷を入れていく。
今回は小さいものが多いので、このまま焼却処理をする。
骨を討伐報告として挙げるため、燃やし終えたら回収だ。
―――――……
ギルド。
焼却処理をして病原菌を巻き散らす心配がなくなったラースの骨を、討伐の証拠として提出する。
貴重な素材ならば買取されるが、今回はよくて無料処分だ。
軽く千を超えた個体の骨を入れた袋を、丸ごと受付のオールバック・モノクルお爺さんに渡す。
「お疲れさまでした。想定よりもだいぶ多い数がいたようですね」
眉を顰める。
一目でそう判断するほど、やはり異常なのだろう。
「一応確認だが、この地域はラースが増殖しやすい地域、というわけではないか?」
「ありません。ピューリクリムのもその他の村や街でも」
「そうか。それは不幸中の幸いだ」
ピューリクリム以外に被害はないということを確認し、今回の任務は終了。
完了の証を貰い、次の任務先へ向かう。
もう日は傾いているが、次の街に移動して休み、次の任務に挑む予定。
移動は転移魔法を使う。
目的が任務であるならば、ギルド間の転移をギルドが手伝ってくれる。
有料で。
「次の任務は海の街でございますね。ここにはギルドがありますので、直接目的地に転移が可能です」
「よろしく頼む」
今回受け取れる代金から、転移魔法分を天引きしてもらった。
残りの代金をロタエさんが代表として受け取る。
そして最初に転移してきた部屋で、円の中に入り、石を貰う。
「お気をつけて」
紳士の恭しい挨拶を見届けて、光に包まれた。
最初よりも冷静に状況を把握し、景色が切り替わるのがわかる。
今までレンガ調の家が、今度は真っ白な壁になる。
埋め込まれているのは海らしく貝殻だ。
「いらっしゃい」
黒髪と白髪が半々ぐらい混ざった髪を、頭の上で頭と同じぐらいにお団子にして、こんがりと日に焼けた肌をしている健康的お婆さんがお出迎え。
片手つついている杖……らしきものは杭だった。
「隣の部屋で待ってておくれ。今作業中なんだ」
さっさと軽い足取りで歩いている。
うん。杖じゃないな、あれ。
お婆さんに続いて部屋を出ると、海の家を思わせる造り。
サーフボードのような板が飾られている。
貝殻の装飾。色鮮やかな花。背の高い木。
窓は開け放たれていて、潮の匂いがする風が吹き込んでくる。
夕暮れの傾いた日が眩しいぐらい入り込んでいる。
西日の射す場所に、三人掛けソファーが机を挟んで向かい合わせになっていたので、三人並んで座る。
コンコンコン。
「待たせてすまなかったね。ちょっと日除けを片付けてる途中だったんだよ」
今度は杭は持たずに、両の足で登場したお婆さん。
その手には今度は折りたたまれた紙が握られている。
挨拶もそこそこに正面に座り、紙の内容を読み上げる。
「この任務を受けた人には全員、依頼主からの伝言があるんでね。まずはそれを聞いてくだされ」
今回任務を引き受けてくれて有難く思う。
直接お伝えしたいので、是非とも我が館にお越しいただきたい。
宿泊についてもご相談に乗りますので、遠慮なく仰ってください。
「だとさ」
「随分な歓迎だ。依頼主はどのような人物なんだ?」
「この土地の領主、ドゥ・マルス様だよ。カエ様なら名前ぐらいは聞いたことあるんじゃないかい?」



