店長を見送ったあと、ワタベ副店長とニシノも出てしまうと、テルヒコは見回りがてらぷらぷらと店内を歩いた。

 朝食は食べていたが、美味しい匂いに「ぐう」と腹が鳴った。恥ずかしげもなく「おや」といって自身の真っ平な腹を見下ろしたテルヒコに苦笑し、派遣バイトのおばさんが試食のハンバーグをやった。

 開店して一時間ばかりしか経っていない店内には、客の姿があまりなかった。

 テルヒコは、楽しげに笑いあいながらゆっくりと仕事をするパートや、アルバイト生の姿が見られるこの時間が一番好きだ。

 彼はいつも通り、レジのアルバイト生と、今ハマっているゲームの話をした。
 そのあと鮮魚コーナーで魚を観賞しつつ、くねくねと触覚を伸ばして外の様子を窺うアサリをつっつき、そこから小さな水柱が出るのを眺めた。

 一つ一つの商品棚をチェックしながら、商品を補充するそれぞれのアルバイト生とのお喋りを楽しみ、帰りに購入するお菓子をぼんやりと考える。