【短編】おかしな男は今日も絶好調~それに喧嘩を売ったクレーマーと、店長の悲劇~

「そりゃそうですよ。じゃないと、いっぱいいっぱいになって、大変でしょう? 僕はね、POPが作れないから先輩に頼むし、ゲームの知識に詳しくないから学生の子たちに教えてもらうし、料理ができないから帰りは惣菜でお世話になって、知らない単語はスマホにお世話になってるよ。だって漢字で書かないと店長怒るもの」

 タケダがふっと口角を引き上げる。

「アホらし。弱音を吐くってのは、男の美学に反しないのかい」

 初めて彼の笑顔を見たなと、テルヒコは思った。彼の『アホらし』は嫌味がなく、誉め言葉のようだと感じた。

「美学ってなんです? 愚痴も弱音もだめってこと? そんなの、僕には無理ですねぇ。だって僕は助けてもらいたいし、話しも聞いてほしいから」
「お前さん、自分勝手なやつだなあ」

 タケダは喉に引っ掛かるような笑い声を上げた。そして、

「そっか、言われてみりゃあ、簡単なことだったな」

 と笑いながら目尻に涙を浮かべた。

「悪いのは全部俺自身なんだ。仕事を辞めたことで家にいずらくて、普段からよくあった妻の意見や反応一つにピリピリして、勝手に傷ついてた」