アルバイト歴が四年なので勤務歴でいうと彼よりも経験は上なのだが、テルヒコとしては妹のような後輩気分で接していた。

 しかし、この時は間合いが悪かった。

 にんまりと笑って見下ろすテルヒコの表情に、マナミちゃんは、少し慌てたように小声で素早く言った。

「テ、テルヒコさん、笑ってる場合じゃないんですよ」
「え? そうなの?」

 だから、と言って、マナミちゃんはテルヒコを引き寄せ、ある方向を指差して早口で伝える。

 そこの生活雑貨のシーツコーナーに座っていたのは、細身の中年男だ。
 マナミちゃんに『中年』と説明されてテルヒコがピンとこなかったのは、内線で聞いていたクレーマーが、まさかお爺さんだとは思わなかったからである。白髪が目立った彼は細い小麦色の顔に、厳しい皺を刻み、一見すると店長よりもだいぶ年上そうに見える。

「あのですね、こちらで購入したシーツが原因で、奥さんと喧嘩になってその責任を取れって言うんですよ」