「生徒会長の園田結楽です。みなさん、着々と準備が進んでいるようで何よりです」
ステージの上に立ち、かつて紡の見た景色と同じ景色を見ながら、私は爽やかな声で話す。
「私たち生徒会役員も、みなさんと協力し、準備を整えていきます。良い文化祭となるよう、全力でサポートしますので、よろしくお願いします」
生徒会長のイメージも、紡から私へと変化した。
そんな、秋のとある日。
学校では、文化祭の準備が進められ、校舎が明るいムードに包まれていた。
私は生徒会長の仕事として、一週間に一度、全校生徒に各ブースの準備の進行具合や生徒会の活動を報告している。
紡がいないからといって時は止まってくれるはずもなく、また充実した日々が戻ってくるのは、そう遅くはなかった。
「結楽ちゃん、これ担当の先生に見せてきてくれない?」
「一年一組の学級委員です。生徒会長、出し物のチェックをお願いします」
などなど、みんなに頼られることも変わらずあるが、
「先生、受付用のパイプイスの準備をお願いできますか」
「じゃあみんな、パンフレットに載せる出し物の紹介を書いてほしいって、各クラスに言ってきてもらえるかな?」
と、私から誰かに頼ることも並行して増えた。
紡といたときのように、今の私は、頼られることを苦と思わないし、自分からみんなに頼ることができる。
その環境は、当たり前のようだけれど、大切にしなければならないと感じた。
それにはやはり、上地くんが影響していて。
「俺も手伝う」
などと、上地くんが素っ気なく言ってくれることが、私にとってとても嬉しかった。
ほとんど「水」が見えなくなった今でも、上地くんは私と一緒に下校してくれていて、学校でもたくさん話すようになった。
そのせいか、私の後輩が
「結楽先輩って、彼氏できたんですか?」
と訊いてくることがある。
彼氏じゃなくて友達だよ、と言っても、後輩の子はなんだかみんな怪しそうに見てくるのだ。
少なくとも私は、上地くんを恋愛対象として見たことがない。
というか、今まで全く恋愛に興味がなかったため、そういった考えにさえも及ばなかった。
ただ、ああいう人とお付き合いしたら楽しいんだろうなとは思う。
しかし、きっとまだ上地くんは、亡くなってしまった彼女さんを引きずっている。その彼女さんだってそうだろう。
そんな二人に、私が突然入り込むわけにはいかない。
今はまだ、そう考えてしまう。
それでも私は叶うことなら、せめて高校生のうちは、上地くんとこのままでいたい。
もっと仲良くなって、今はもういない、お互いの大切な人の話をしてみたい。
そう思うだけで、今の私の心はルンルンと弾む。
だから、私はまだ、そういうのはいいかな。
「お疲れ。帰るかー」
そう言ってくれる上地くんが、私にとってかけがえのない存在だ。
ステージの上に立ち、かつて紡の見た景色と同じ景色を見ながら、私は爽やかな声で話す。
「私たち生徒会役員も、みなさんと協力し、準備を整えていきます。良い文化祭となるよう、全力でサポートしますので、よろしくお願いします」
生徒会長のイメージも、紡から私へと変化した。
そんな、秋のとある日。
学校では、文化祭の準備が進められ、校舎が明るいムードに包まれていた。
私は生徒会長の仕事として、一週間に一度、全校生徒に各ブースの準備の進行具合や生徒会の活動を報告している。
紡がいないからといって時は止まってくれるはずもなく、また充実した日々が戻ってくるのは、そう遅くはなかった。
「結楽ちゃん、これ担当の先生に見せてきてくれない?」
「一年一組の学級委員です。生徒会長、出し物のチェックをお願いします」
などなど、みんなに頼られることも変わらずあるが、
「先生、受付用のパイプイスの準備をお願いできますか」
「じゃあみんな、パンフレットに載せる出し物の紹介を書いてほしいって、各クラスに言ってきてもらえるかな?」
と、私から誰かに頼ることも並行して増えた。
紡といたときのように、今の私は、頼られることを苦と思わないし、自分からみんなに頼ることができる。
その環境は、当たり前のようだけれど、大切にしなければならないと感じた。
それにはやはり、上地くんが影響していて。
「俺も手伝う」
などと、上地くんが素っ気なく言ってくれることが、私にとってとても嬉しかった。
ほとんど「水」が見えなくなった今でも、上地くんは私と一緒に下校してくれていて、学校でもたくさん話すようになった。
そのせいか、私の後輩が
「結楽先輩って、彼氏できたんですか?」
と訊いてくることがある。
彼氏じゃなくて友達だよ、と言っても、後輩の子はなんだかみんな怪しそうに見てくるのだ。
少なくとも私は、上地くんを恋愛対象として見たことがない。
というか、今まで全く恋愛に興味がなかったため、そういった考えにさえも及ばなかった。
ただ、ああいう人とお付き合いしたら楽しいんだろうなとは思う。
しかし、きっとまだ上地くんは、亡くなってしまった彼女さんを引きずっている。その彼女さんだってそうだろう。
そんな二人に、私が突然入り込むわけにはいかない。
今はまだ、そう考えてしまう。
それでも私は叶うことなら、せめて高校生のうちは、上地くんとこのままでいたい。
もっと仲良くなって、今はもういない、お互いの大切な人の話をしてみたい。
そう思うだけで、今の私の心はルンルンと弾む。
だから、私はまだ、そういうのはいいかな。
「お疲れ。帰るかー」
そう言ってくれる上地くんが、私にとってかけがえのない存在だ。



