帰り道、私服の上地くんと制服の私は、紡の話をしていた。
ふと上地くんが口を開き、ポケットを漁り始めた。
「園田がやばかった日さ、俺何やってたか分かる?」
「え、私がやばかった日…?」
やばかった日、というワードが引っ掛かりつつも、きっと上地くんと一緒に帰らなかった日のことだろうと思い、考えてみた。
うーん、と私が唸っていると、上地くんは、これ、と、一枚の紙を手渡してきた。
「山端の手紙。貰いに行ってた」
紡の、手紙。どんなことが書いてあるのだろう。
私はその紙を、そっと丁寧に開いた。
すると、久しぶりに見た紡の字が、たくさん並べられていた。
『園田結楽へ
僕が死んだ理由を探さないでください。
いつこれを読んでいるかわからないけれど、絶対に探さないでください。
結楽なら徹底的に調べそうだから言っておく。探さないで。
突然のことでごめんなさい。信じられないと思うけど、僕は死んだ。
自ら選んだ死だ。
だから、結楽が自分のことを責める必要なんてないし、他の人たちを責める必要もない。
それをわかってほしい。結楽ならわかるだろうけど。
僕が一番心配してるのは、結楽が僕のせいでやる気をなくしてしまうことかな。
今年度、僕は生徒会長になって、結楽は副会長になった。
だから、僕がいなくなったら、会長になるのは結楽だと思ってる。勝手にね?なってほしいし。
結楽がリーダーとなって、後輩たちを引っ張って、先輩たちを送り出さないといけない。その使命がある。
勉強もそうだ。ずっと結楽は僕と競ってきたから、一気にやる気をなくしてしまう気がしてならない。
少し、ここで僕の話をしてもいい?
中学一年生の、初めての期末テスト。
全部結楽に、見事に抜かされたんだ。点数も順位も。
正直、僕はそんな抜かされるなんてこと考えていなかった。だから本当に、悔しくてたまらなかった。
塾でも小学校でも、必ずテストではその範囲内で頂点に立っていたから、初めて負けた。
今でも思い出すと悔しいや。
でもそれがあったから、結楽と一位争いをするためにたくさん勉強することができたよ。
一位を獲られたときの悔しさよりも大きい、結楽と勉強する楽しさができた。
結楽だってそうだと思う。
叶うことなら、ずっとそうしてたいよ。僕だって。でももう、決めたことだから。
だけど、ライバルがいなくなったなんて思うなよ!僕はずっと結楽と競ってる!
俺だったら、夏休み明けのテストで四百九十八点取ってるよ。
さあ、どうでしょう?結楽、これより下だったらだめだよ?バチ当てるよ?

ありがとう。改めて言いたい。
いち位を獲るのは僕っていうの、忘れないでね。
しっとするなら勉強しろ!!
てんで見てるから。
るい線崩壊しないでね!!
ライバル兼大親友、結楽。これくらいのことしかできないけど、これからもよろしく。
山端紡より』