「そう言えばこれを渡そうと思って」
涼臣は俺を椅子に座らせ、冷蔵庫の前に行き何かを持ってこちらに帰ってきた。渡されたものは、四角い小さなピンク色の包みだった。
「可愛い包み! 涼臣が用意したの?」
「うん、明良に比べたら下手くそだけど......」
見上げると少し落ち込んだ様子でいる。犬の耳が生えていたらシュンと下がっていただろうな。
「開けていい?」
涼臣が頷き、俺は包みをできるだけ破かないように丁寧に開けた。
「うわぁ! これ、涼臣が作ったの?」
中に入っていたのは、形が不揃いのカップケーキが入っていた。丸くならずに爆発していたり、カップからはみ出てたり。チョコペンらしきもので絵が描かれているものもあった。
「これは......タヌキ?」
「いや、ネコだから」
すかさずツッコミが入り、「え?」と見直したがネコには見えない。やっぱりタヌキだ。
「お菓子作りと料理は味がポイントでしょ? もしかして明良は顔が好きっていうタイプだったりするの?」
「あー、人によるかな。いただきます」
カップケーキを口にほおばると、普通にプレーンの味で何かが悪いわけでもない。ちゃんと食べれる。
「涼臣、美味しい! そういやなんでカップケーキ作ろうと思ったの?」
純粋な疑問を涼臣に聞いてみる。すると涼臣は「あー......」と視線を背けた。
どうしても言いたくないのだろうか。だとしても、俺は知りたい。
「ねぇ、教えてよ。ね?」
俺は上目遣いで目を輝かせてみせた。うぐっと何かに打たれたような低い声を出した涼臣。
観念したように向かいの椅子に座って話し出した。
「ずっと考えてたんだ。これから先も隣にいてくれたらって。言葉で伝えるのは簡単だし、ペアリングやアクセサリーで残すのもいいかなと思ったんだけど、明良が嫌がってつけてくれなかったら困るし」
前から俺とのことを考えてくれてたなんて。その言葉だけでも嬉しい。
その上に、同じものを付けたいと思っていたのに俺の気持ちを考えて、優先してくれたんだ。愛されてるなと心から感じた瞬間だった。
「どうしようって思ってたら、明良から貰ったものと同じお菓子から贈ろうと思って、『あなたは特別な人』って意味のあるカップケーキを莉子に教えてもらいながら作ってみた。その時は、佐柳も一緒に作ってたよ。あいつ器用だから俺よりうまく作ってて」
カップケーキにそんな意味があるなんて初めて知った。まるで、本数で意味が変わるバラの花言葉みたいだ。
俺はバラよりも、頑張って作ってくれたカップケーキのほうが断然嬉しい。
「ありがとう、めっちゃ嬉しい。俺が渡すのもなんだけど、一緒に食べない?」
俺はタヌ......ネコの描かれたカップケーキを持って差し出した。涼臣が受け取ってくっれるのを待っているが一向に受けっとってくれる気配がない。
「ねぇ食べない?」
「......食べる」
涼臣は俺の手首を掴んで、手に持っていたカップケーキを食べた。
「あ、普通に美味しい」
なにもなかったかのように続ける涼臣の心の中が知りたい。俺は、心臓バクバクだっていうのに。
「どうした?」
「涼臣がカッコよすぎて困るなと思っただけ」
いつも困らせてくるお返しに誉め言葉を言ってみると、顔から耳にかけて赤くなっている涼臣の顔が。いつも余裕の表情をしているのに意外だった。
「ちょ、今は見ないで」
手で隠していても赤くなっていることは隠しきれていない。かわいい。
「あっれー? 照れちゃった? うひひ......うわぁ!」
「俺を煽った罰だから覚悟してろよ」
涼臣は俺を軽々と抱え上げられ、椅子から机に座らされ押し倒される。
危機を感じた俺はごまかすように言葉をかける。
「りょ、涼臣。わ、悪かった。な、落ち着こう」
「今更止められるかって。大人しくしてな」
涼臣の長い指が、大きい手が頬を撫でてくる。そしてゆっくりキスが交わされて幸せいパイになっていく。優しいキスからは俺のことが大切だって伝わってくる。
(んっ......。俺も涼臣が大切だよ)
涼臣に同じ気持ちだと瞳で、力で、唇で分かりやすく伝える。わからなかったらもう知らん、ってね。
涼臣は俺を椅子に座らせ、冷蔵庫の前に行き何かを持ってこちらに帰ってきた。渡されたものは、四角い小さなピンク色の包みだった。
「可愛い包み! 涼臣が用意したの?」
「うん、明良に比べたら下手くそだけど......」
見上げると少し落ち込んだ様子でいる。犬の耳が生えていたらシュンと下がっていただろうな。
「開けていい?」
涼臣が頷き、俺は包みをできるだけ破かないように丁寧に開けた。
「うわぁ! これ、涼臣が作ったの?」
中に入っていたのは、形が不揃いのカップケーキが入っていた。丸くならずに爆発していたり、カップからはみ出てたり。チョコペンらしきもので絵が描かれているものもあった。
「これは......タヌキ?」
「いや、ネコだから」
すかさずツッコミが入り、「え?」と見直したがネコには見えない。やっぱりタヌキだ。
「お菓子作りと料理は味がポイントでしょ? もしかして明良は顔が好きっていうタイプだったりするの?」
「あー、人によるかな。いただきます」
カップケーキを口にほおばると、普通にプレーンの味で何かが悪いわけでもない。ちゃんと食べれる。
「涼臣、美味しい! そういやなんでカップケーキ作ろうと思ったの?」
純粋な疑問を涼臣に聞いてみる。すると涼臣は「あー......」と視線を背けた。
どうしても言いたくないのだろうか。だとしても、俺は知りたい。
「ねぇ、教えてよ。ね?」
俺は上目遣いで目を輝かせてみせた。うぐっと何かに打たれたような低い声を出した涼臣。
観念したように向かいの椅子に座って話し出した。
「ずっと考えてたんだ。これから先も隣にいてくれたらって。言葉で伝えるのは簡単だし、ペアリングやアクセサリーで残すのもいいかなと思ったんだけど、明良が嫌がってつけてくれなかったら困るし」
前から俺とのことを考えてくれてたなんて。その言葉だけでも嬉しい。
その上に、同じものを付けたいと思っていたのに俺の気持ちを考えて、優先してくれたんだ。愛されてるなと心から感じた瞬間だった。
「どうしようって思ってたら、明良から貰ったものと同じお菓子から贈ろうと思って、『あなたは特別な人』って意味のあるカップケーキを莉子に教えてもらいながら作ってみた。その時は、佐柳も一緒に作ってたよ。あいつ器用だから俺よりうまく作ってて」
カップケーキにそんな意味があるなんて初めて知った。まるで、本数で意味が変わるバラの花言葉みたいだ。
俺はバラよりも、頑張って作ってくれたカップケーキのほうが断然嬉しい。
「ありがとう、めっちゃ嬉しい。俺が渡すのもなんだけど、一緒に食べない?」
俺はタヌ......ネコの描かれたカップケーキを持って差し出した。涼臣が受け取ってくっれるのを待っているが一向に受けっとってくれる気配がない。
「ねぇ食べない?」
「......食べる」
涼臣は俺の手首を掴んで、手に持っていたカップケーキを食べた。
「あ、普通に美味しい」
なにもなかったかのように続ける涼臣の心の中が知りたい。俺は、心臓バクバクだっていうのに。
「どうした?」
「涼臣がカッコよすぎて困るなと思っただけ」
いつも困らせてくるお返しに誉め言葉を言ってみると、顔から耳にかけて赤くなっている涼臣の顔が。いつも余裕の表情をしているのに意外だった。
「ちょ、今は見ないで」
手で隠していても赤くなっていることは隠しきれていない。かわいい。
「あっれー? 照れちゃった? うひひ......うわぁ!」
「俺を煽った罰だから覚悟してろよ」
涼臣は俺を軽々と抱え上げられ、椅子から机に座らされ押し倒される。
危機を感じた俺はごまかすように言葉をかける。
「りょ、涼臣。わ、悪かった。な、落ち着こう」
「今更止められるかって。大人しくしてな」
涼臣の長い指が、大きい手が頬を撫でてくる。そしてゆっくりキスが交わされて幸せいパイになっていく。優しいキスからは俺のことが大切だって伝わってくる。
(んっ......。俺も涼臣が大切だよ)
涼臣に同じ気持ちだと瞳で、力で、唇で分かりやすく伝える。わからなかったらもう知らん、ってね。

