消えない音の行方

夜の街をひとり歩く。

静寂の中、遠くの信号がまたたき、ビルの灯りが滲んでいた。

胸の奥で、何かがずっと疼いている。

楓真がいなくなってから、ずっと蓋をしてきた感情。

それが、今になってあふれ出す。

頬を伝う涙に気づいたとき、初めて、ちゃんと彼を思い出せた気がした。

それは悲しみだけじゃない。

確かにそこにあった温もり、笑顔、優しく響いた声――

そのすべてが、音羽の中に生きていた。

忘れない限り、消えない限り、楓真はきっとここにいる。

だからこそ、願う。

「あなたの音が、色褪せないでいてほしい」

夜の静けさに溶けるように、そっと歌を口ずさむ。

楓真と一緒に聴いた、あの曲。

音が紡がれるたびに、彼が残してくれたものが胸の中に広がっていく。

夜の奥、どこまでも続く空へと、その旋律が静かに溶けていった。