夕暮れの街を、ふたり並んで歩いた。

制服の袖がふわりと揺れるたび、すぐ隣にいるはずの楓真の気配が、どこまでもやさしく感じられた。

「音楽って、いいよね。」

ふとした瞬間に、楓真はそんなことを言う。

「どうして?」と問いかけると、彼は少し考えるように目を細めてから、微笑んだ。

「消えないから。」

その言葉と一緒に、風がそっと吹き抜ける。

イヤホンを片方ずつ分け合いながら、流れるメロディに耳を澄ませた。

音楽があれば、ふたりはいつでもどこにいても繋がっていられるような気がした。

学校帰りの寄り道、誰もいない公園のブランコに座って歌ったあの日。

夕焼けの色が、ふたりの影を長く伸ばしていったあの日。

そんな何気ない時間のすべてが、今でも胸の奥に残っている。

けれど、あの幸せな日々は、ある日突然終わりを迎えた。

楓真は、消えてしまった。

理由も、言葉も、なにも残さずに。

まるで、流れていた音楽が、不意に止まってしまったみたいに。