消えない音の行方

夜の街を走るバスの窓に、滲んだ光が流れていく。

オレンジ色の街灯、ネオンのきらめき、遠くに揺れる車のライト――すべてがゆっくりと溶けて、儚く消えていくようだった。

音羽は、ぼんやりと窓の外を眺めながら、ふと小さな声で歌を口ずさむ。

それは、あの頃「あなた」と一緒に聞いた曲。

何度も聴いて、何度も笑って、何度も口ずさんだ――あの日々の記憶が、音楽に紛れ込むように胸を締めつけた。

窓ガラスに映る自分の姿が揺れる。その隣には、もう誰もいない。

「楓真……」

名前を呼んでも、返事はない。

今、どこにいるの?

どうしていなくなってしまったの?

問いかけるたびに、静寂だけが降り積もる。

流れる景色とともに、音羽の想いもどこか遠くへ消えてしまいそうだった。