ある日、彼女と会えなくなった。

約束の場所に行っても、そこには誰もいない。

冷えた風がそっと頬を撫でる。

静まり返った夜の街で、彼はひとり空を見上げた。

──やっぱり、僕は何も変われなかったのかな?

そんな思いが胸を締めつける。

けれど、ふと気づいた。

彼女が笑うたびに色づいていた世界は、 今もなお、ちゃんと色を持っている。

彼女に救われた日々は、 決して消えてしまったわけじゃない。

彼の心の中に、彼女の言葉が今も残っている。

──「漂うままに明日が来たら、ここで待ち合わせをしよう。」

静かに目を閉じ、息を吸う。

次に目を開いたとき、彼はそっと微笑んだ。

夜空に、蒼が咲いた気がした。