夜が怖かった。

暗闇に溶けるように、ただ静かに息をひそめる夜。

眠れぬまま、寂しさだけがそっと寄り添い、心を締めつける。

でも、彼女と出会ってから、その夜が少しずつ変わり始めた。

彼女と話している時間だけは、孤独が和らぐ気がする。

まるで、寒さに凍えた指先が、誰かの手の温もりに包まれるように。

だけど、戸惑いがあった。

もし、救われてしまったら──

今まで抱えてきた孤独は、意味のないものになってしまうのだろうか?

痛みさえも、自分を形作る一部だと信じていたのに。

そんな迷いに沈む僕に、彼女は静かに微笑んで言った。

「怖くはないよ。夜が『またね』って言っても、僕らきっと灯火のもと、導かれて逢えるよ。」

その言葉は、そっと胸の奥にしみ込んでいく。

夜が怖くても──

また彼女に会えるなら、大丈夫かもしれない。